10年後その「屋根」は大丈夫!?新築一戸建ての屋根素材の選び方とは

新築の計画では、間取り、収納、キッチン、床材、外壁の色など、検討すべき項目が非常に多くなります。
屋根についても当然説明はあるのですが、「外から見えにくい」「どれも似て見える」「標準仕様で十分だろう」と感じ、それほど深く検討することがないまま決まってしまうケースは少なくありません。
実際、新築の打ち合わせは決めることが多すぎます。屋根の説明にたどり着く頃には、疲れていて言われるがままとなってしまう方も多いのが現実です。

マイホームの打ち合わせ

しかし、屋根は住まいの中で最も過酷な環境にさらされる部位です。雨、風、紫外線、寒暖差を毎日受け止め続けます。新築時にはわからなくても、どのような屋根・設計を選ぶかで、10年後・20年後のメンテナンス費用は大きく変わります。

当社が対応している奈良三重大阪和歌山滋賀エリアで実際に多いのが、

  • 築10年を超えた頃に「屋根塗装が必要です」と言われる
  • 思ったより色あせやコケが目立つ
  • 棟板金の浮きやビス抜けを指摘される

といったケースです。

「せっかく新築を建てるなら、将来のメンテナンスの費用をできるだけ抑えたい」
「10年後に屋根のことで悩みたくない」

ですよね。
そのためには、屋根材の種類だけでなく、設計段階の考え方(弱点を増やさない、負荷を集中させない)を含めて検討する必要があります。

今回のコラムでは、屋根職人の現場目線から、次の4点をわかりやすく解説していきます。

  • 10年後にお金がかかりやすい屋根の特徴
  • 屋根素材の選び方
  • 屋根の下地(防水シート)について
  • 新築打ち合わせで確認すべき質問

まず前提として、なぜ多くの家で屋根のメンテナンスが必要になるのでしょうか。「屋根材」そのものの問題と併せて、負担が集中しやすい条件を抱えていることが多いです。屋根の劣化は、立地・形状・使われ方によって進み方が大きく変わります。

現在、日本の新築住宅で最も普及している「スレート屋根(カラーベストなど)」を例に挙げます。スレート屋根は安価でデザインも豊富なため、標準仕様になりやすいのですが、将来のメンテナンスを考えるなら、この素材の特性をよく理解しておく必要があります。

スレート屋根
スレート材

スレート材自体はセメントを薄く伸ばしたもので、防水性は塗装の膜(塗膜)によって保たれています。この塗膜は、紫外線や雨風にさらされ続けることで徐々に劣化し、10年前後で防水性能が低下してきます。そのまま放置すると、屋根材自体が水を吸って反り上がったり、ひび割れたりして、最終的には雨漏りの原因となります。

スレート屋根の経年劣化
スレート屋根の経年劣化

それを防ぐために、約10年〜15年おきに「再塗装」をして防水性能を蘇らせる必要があるのです。この塗装工事には、屋根の周囲に組む「足場代」が必ずかかるため、まとまった費用(数十万円~百万円超)が必要になります。

実際の例を見ていただくと、同じ年代に建てられた住宅地で、瓦屋根とスレート屋根を比較すると、瓦屋根はさほど目立った汚れが無い状態、スレート屋根の方は汚れがよく目立っているのがお分かりになるかと思います。

瓦屋根とスレート屋根を比較
瓦屋根に比べるとスレート屋根の汚れが目立つ

「塗装しなくてもよい」状態を目指すには、「素材そのものに防水性があり、紫外線で劣化しにくいない(色あせしにくい)」屋根材を選ぶ必要があります。
新築を建てる段階で、スレート屋根を選択する場合は、高耐久タイプを選び、かつ将来的な塗装費用を織り込んでおく、ということが必要になってきます。
何も考えずに「標準仕様だから」ということだけで選ぶと、10年後に「こんなはずでは・・・」とがっかりすることになり兼ねません。

屋根の劣化は、素材だけで決まりません。実際には、立地・環境などによって劣化の進み方が大きく変わります。

田畑が広がる地域、小高い丘の上、角地、川沿いなどは、日常的に風の影響を強く受けやすい立地です。こうした立地では、台風のときだけでなく、日常の風圧の積み重ねで、棟やケラバなどの端部が少しずつ緩んでいきます。

風の強い立地では屋根のつなぎ目の劣化が進みやすい
風の影響を受ける立地は屋根の劣化も進みやすい

屋根で最初にトラブルが出るのは、屋根材の面が広く劣化するよりも、「棟板金のビスが浮く」「板金が少しバタつく」「シーリングが切れる」など、棟板金・ケラバ板金など端部であることが多いです。
この“じわじわ”が10年の節目で表に出て、点検で指摘されるケースがよくあります。

屋根面より先に端部が傷みやすい
屋根面より先に端部が傷みやすい

北面、隣家が近い、樹木が近い、周囲に田畑が多い、谷筋で湿気が溜まりやすいといった条件が重なると、屋根表面に湿気が残りやすくなります。この湿気が、コケや藻を育てる温床となってしまうのです。
雨漏りがなくても「そろそろ塗装かな」と思うきっかけになるのは、この見た目の問題が大きいです。また見た目の汚れは“ただの汚れ”ではなく、劣化の進行条件になりやすいということです。
コケ・藻・黒ずみが増えると、表面に湿気が残りやすくなり、さらに汚れが育つ・・・という循環が起こります。

コケや藻が生えたスレート屋根
コケや藻が生えたスレート屋根

つまり10年あたりで費用が必要となってしまう屋根は、機能的な限界より先に、景観劣化がメンテナンスの引き金になりやすい環境にあることが多いのです。

屋根の「素材」だけでなく、実は「形」もメンテナンス費用や雨漏りリスクに大きく関わります。
最近のデザイン重視の住宅で増えている「シンプルすぎる屋根」と、昔ながらの「複雑すぎる屋根」それぞれの懸念点を解説します。

段違い屋根、差し掛け屋根(下屋)が多い設計、谷が何本もある設計などは、見た目が格好よく、間取りにも自由が出ます。一方で、屋根では継ぎ目や取り合い(接合部)が増えることを意味します。

複雑な屋根形状は劣化のリスクが高まりやすい
複雑な屋根形状は劣化のリスクが高まりやすい

屋根は広い面よりも、端部(棟・ケラバ・軒先)や取り合い(谷、壁際、天窓など)が先に傷みます。
複雑な屋根は、この弱点が増えやすいということに繋がります。雨は必ず弱点に集まり、風は端部からめくろうとします。すると、棟板金の固定部が緩みやすい、谷周辺に水が溜まりやすい、壁際から吹き込みやすい、といった症状が出やすくなります。

ここで重要なのは、複雑な設計=必ず雨漏り、という話ではありません。
きちんと板金工事など納まっていれば問題は起きにくいです。ただ、弱点が増えるほど、施工の精度に依存しやすく、また将来の点検・補修ポイントも増えます。その結果、10年後に「見つかった不具合をまとめて直す」流れになりやすいのです。

最近増えているのが、軒がほとんどない家、軒ゼロに近いデザイン、片流れの大屋根など「すっきり見える」設計です。谷が少なく、段差も少ないので、弱点が減るという意味ではメリットがあります。
ただし、シンプルすぎる設計には、別の形で負担が集中することがあります。典型は軒がない家です。

軒のない住宅
軒がない家

軒は「雨を外壁に当てない」ための庇(ひさし)の役割も持っています。軒がないと、雨はそのまま外壁に当たり、横風を伴う雨ではサッシ周りや壁際の取り合いに負担が集中します。屋根材がどうこうというより、外壁側の劣化や水の回り込みが早くなり、結果として「屋根周りの補修が必要になる」ことがあります。

軒ありと軒ゼロ住宅の比較

片流れ屋根も、形としては合理的ですが、雨水が一方向に全て集まります。
そのため雨樋・排水計画が弱いと、大雨のときにオーバーフローしやすく、外壁の汚れや水跡、端部の劣化が出やすい。つまり、シンプルな形状は「弱点が少ない」反面、少ないポイントに負荷が集中するのが特徴です。

国土交通省の研究機関によるデータでは「軒(のき)が短い家ほど、外壁が雨で濡れやすい」というシュミレーション例も報告されています。
軒が短いと、屋根で受け止めた雨水が直接外壁を直撃し、広い範囲を濡らし続けてしまいます。

底層建物劇面の雨がかりシュミレーション例
底層建物劇面の雨がかりシュミレーション例

もちろん、家は防水処理されていますが、新築時の施工が完璧とは限らず、また完璧であったとしても、毎日の小さな揺れや地震、経年劣化によって、いつか必ずひび割れや隙間が生じます。特に、異なる素材をつなぎ合わせている「窓のサッシ周り」は、雨漏りが起きやすい最大の弱点です。

雨漏りを防ぐための最も根本的で確実な対策。それは、防水性能を過信するのではなく、そもそも大切な家を、長時間大量の雨にさらさないことです。そのためには、傘の役目を果たす「十分な軒の出」が重要となります。

大切なのは、屋根の形状がシンプルか複雑か、ということだけではなく、雨を受ける場所・集まる場所・逃がす場所を、無理なく設計できているか、その設計に従って正しい施工がされているかという点です。

最近の軒ゼロ住宅を街中で見かける度に、職人の私は「大丈夫かな・・・」「しっかり板金工事ができているのかな・・・」と余計な心配をしてしまうのです。

屋根の形状に関してはこちらのコラム記事も参考にしてみてください。

新築の打ち合わせ中は、どうしてもデザインや色の話が中心になります。「10年後にどれくらいメンテナンスが必要か」まで頭が回りにくいのは自然です。
ですが、住まいは長く住む資産です。屋根材によって、10年目に塗装が必要になりやすいものもあれば、点検中心で済みやすいものもあります。どの屋根材においても、何十年もノーメンテナンスで済むというようなものはありません。メンテナンスの頻度やコストの差がどれだけ生じるのか、ということです。
ここでは、主要な3つの屋根材について、10年後のメンテナンスを踏まえて解説します。

スレート屋根
スレート屋根

第一章でも登場した「スレート」ですが、現在でも多くのハウスメーカーで標準仕様として採用されている、最もポピュラーな屋根材です。ここでまず、そもそも「スレート」がなぜ標準仕様で多く採用されているのか?という点について解説します。

  • 圧倒的な安さ(材料費+人件費)
    まず、瓦やハイスペックな金属屋根に比べ、材料自体の単価が安いです。また、施工がシンプルでマニュアル化しやすいため、高度な技術を持つ「職人」でなくても短期間で施工することができます。
  • 本体価格を安く見せられる
    チラシやカタログに載せる「坪単価」や「標準価格」を抑えるために、最も安い材料を基準にします。瓦やガルバリウムを標準にすると、価格が高く見えてしまうため、新築時の価格を抑えることで一般的に受け入れられやすいという点が大きいです。

スレート屋根が多く普及しているのは、このような背景が大きいです。家は一生で一番高い買い物になるので、少しでも抑えることができる部分は抑えたい、と考えられるのでしょう。

  • 素材は水を吸う性質がある
  • そのため塗膜が劣化すると、吸水・汚れ・コケが進行しやすい
  • メリット
    初期費用が安く、色やデザインのバリエーションが豊富
    施工業者が多く、供給が安定している
  • デメリット
    10〜15年周期での「定期的な塗装」が前提の素材
    放置すると割れや反りが発生しやすい
スレート屋根の10年目の注意点

スレートはセメントを薄く固めた板であり、素材自体に防水性はありません。表面の「塗膜(とまく)」が雨水を弾くことで、屋根としての機能を維持しています。しかし、10年も経つと紫外線によってこの塗膜が分解され、防水機能が失われます。
塗装は見た目の美観の目的もありますが、最も重要なのはスレートそのものの寿命を延ばすため、ということです。

スレートという素材を選んだ時点で、この「10年目の屋根塗装」というメンテナンスは、家の寿命を維持するための必須経費として組み込んでおく必要があるでしょう。

ガルバリウム鋼板屋根
ガルバリウム鋼板

金属屋根は、近年の新築で採用が増えてきています。軽量で、耐震面で有利になりやすく、製品グレードも多様です。耐食性の高いSGL鋼板なども普及しました。
ただし、金属屋根の本質は、屋根材の性能より施工(納まり)・職人の技術が寿命を左右しやすい、ということです。

  • 屋根材としての耐久性が高い(割れにくい)
  • ただし、継ぎ目・ビス・棟などの役物が要となる
  • 設計や施工によっては結露・遮音・断熱を考慮する必要がある
  • メリット
    圧倒的な軽さ(瓦の約1/8の重量)で地震時の建物の揺れを最小限に抑えられる
    素材の進化で、近年主流の次世代ガルバリウム(SGL)は、従来のガルバリウム鋼板の3倍以上の耐食性を誇る
  • デメリット
    職人の技術格差が出やすく、板金の折り曲げやビスの打ち方一つで、将来のサビや雨漏りリスクが大きく変わる
    断熱材一体型を選ばないと、夏場の暑さや雨音が気になる。
金属屋根の10年目の注意点

金属屋根で注意が必要なのは、小さな傷や切断面からの「点サビ」です。飛来物などによる傷や塗膜の破断などがあると、その部分から局所的に腐食が進行することがあります。
また、ビスや役物(つなぎ目)の緩みなどが無いかも重要な点検ポイントです。
高耐久の金属屋根は長持ちするから10年、20年何もしなくていい、ということではありません。素材が持つ寿命を維持するためには、10年ごとの「点検」や「補修すべき箇所があればメンテナンス」が不可欠です。 傷やサビの補修は必ず行うようにしてください。
また、金属屋根もいずれ塗装のメンテナンスが必要となります。15~20年目には屋根の状態を屋根業者に点検してもらい、検討するようにしましょう。

瓦屋根
瓦屋根

瓦は昔から使われている伝統的な屋根素材です。但し、一口に「瓦」と言っても、その素材や製法によって性質は大きく異なります。主な瓦の種類をご紹介します。

  • 陶器瓦(釉薬瓦・いぶし瓦など)
    粘土を高温で焼き締めた、日本の伝統的な屋根材です。特に表面に「釉薬(うわぐすり)」をかけて焼いた釉薬瓦は、お茶碗と同じく水や紫外線に強く、半永久的に色あせません。そのため、瓦自体の塗装メンテナンスは不要です。
日本瓦
陶器瓦
  • セメント瓦
    一見すると陶器瓦に似ていますが、これらはセメントを主原料として塗装で着色したものです。1970~80年代で多く生産されていましたが、現在はほぼ生産されていません。陶器瓦とは根本的に異なり、防水性能を塗装に頼っているため、塗装メンテナンスが必須となります。
セメント瓦
セメント瓦
  • 軽量防災瓦
    陶器瓦のデメリットである「重さ」を克服するために開発されたのが、最新の軽量瓦です。素材の配合や形状の工夫により、従来の和瓦に比べて重量を約10〜30%ほど軽量化し、建物への負担を軽減しています。さらに、瓦同士をかみ合わせて一枚ずつ釘やビスで固定する独自の構造により、巨大地震や大型台風でもズレたり飛散したりしにくい、高い防災性能も備えています。
防災瓦
軽量防災瓦
  • 樹脂繊維 軽量セメント瓦(商品名「ルーガ」/ケイミュー株式会社)
    スレート屋根でお馴染みのケイミュー数式会社が開発した新しい瓦屋根「ルーガ」は、セメントをベースに特殊な樹脂繊維と気泡を混ぜ込むことで、見た目は重厚な瓦そのものでありながら、陶器瓦の約1/2の軽さというのが最大の特徴です。表面に紫外線に非常に強い特殊なコーティングが施されており、色あせにも強く、素材に粘りがあるため、ハンマーで叩いても割れにくいという性能を兼ね備えています。
樹脂繊維混入 軽量セメント瓦
ROOGA(ルーガ)
樹脂繊維 軽量セメント瓦
ROOGA/ケイミュー(株)
  • メリット
    陶器瓦の場合、表面のガラス質(釉薬)は紫外線で劣化しないため、30年経っても色あせない
    屋根材と下地の間に空気層ができるため、断熱・遮音性に優れている
  • デメリット
    建物全体を瓦の重さに耐えられる強固な構造にする必要がある
    陶器瓦は硬い反面、強い衝撃で割れることもある
    他の素材に比べ、材料・工事費ともに高価になる
瓦屋根の10年目の注意点

陶器瓦や高耐久瓦は、釉薬によって色がつけられているため、塗膜のように劣化して再塗装が必要になるという屋根材ではありません。屋根材そのものの耐久性という意味では、10年という期間はまだ序盤に過ぎません。
しかし、強い風で飛来物などの衝撃を受けて割れたり、ズレ・はがれが発生することもあるので、必ず点検は必要です。
また、どの屋根材であっても同じことですが、周辺部材や固定部分の劣化は、屋根材の劣化とは関係なく進行が早いです。点検による部分的なメンテナンスは忘れないようにしてください。

屋根材 10年目の現実 維持管理
スレート 塗装の可能性が大 短期分散型
(初期コスト重視)
金属屋根 点検中心・塗装はまだ先 中期安定型
(初期コスト・メンテナンスも含めてバランスが良い)
塗装不要・周辺部材管理 長期安定型
(瓦へのこだわりとメンテナンス重視)

年数はあくまでも目安であって、最も重要なのは年数よりも「屋根の状態」です。20年経っても良好な屋根もあれば、10年、15年で傷んでいる屋根もあります。
どの屋根材にも共通して言えることは、大きな工事になる前に、まずは固定部と納まりの部分など、定期的な点検(5~10年ごと)は必ず行うようにしましょう。

ルーフィングとは、屋根材のすぐ下に敷かれる防水シートのことです。
多くの方は「どの屋根材にするか」に心血を注ぎますが、私たちプロの屋根職人は「どのルーフィングを敷くか」でその家の寿命を判断します。

ルーフィング(防水シート)
ルーフィング(防水シート)

どれほど高級な瓦や最新の金属屋根を選んでも、雨水はわずかな隙間(重なり目や結露)から必ず屋根材の下へと侵入します。
この侵入した水を、野地板(屋根の下地木材)に触れさせることなくスムーズに軒先へ流し落とすのがルーフィングの役割です。もしこのシートが破れたり、経年劣化でカサカサに乾いてしまえば、そこから即座に雨漏りが始まります。
屋根材の隙間から万が一水が入ったとしても、最終的に水を止めるのはルーフィングなのです。

まず前提として、瓦・スレート・金属屋根いずれも、基本構造は「重ね合わせ」です。
一枚の巨大な防水パネルではなく、小さな部材を何枚も重ねて雨を受け流す仕組みになっています。
この「重ね構造」こそが、屋根の基本思想です。

しかし重ねている以上、そこには必ず「継ぎ目」「端部」「固定部(釘・ビス)」「役物との取り合い」が存在します。
そして現実の屋根は、常に「台風や突風によるあおり」「夏場の屋根面温度70℃以上の熱膨張」「冬場の収縮」「紫外線劣化」「地震による微細な揺れ」といった負荷を受け続けています。

その結果、何が起きるかというと、

  • わずかな浮き
  • 釘やビスの緩み
  • 微細なひび割れ
  • コーキングの切れ
  • 棟部の隙間拡大
屋根に起こる目に見えにくい変化

といった目に見えにくい変化が少しずつ蓄積していきます。
まり、屋根材は水を「止める」のではなく、「流す」ための部材なのです。

雨は常に上から下へ流れるため、多少の隙間があっても重なり構造によって下へ逃がす設計になっています。
しかし強風を伴う横殴りの雨や、毛細管現象、釘穴からの浸水などが起きると、雨水は屋根材の下に入り込むことがあります。

ここで初めて本当の防水層が働きます。それがルーフィングです。
ルーフィングは野地板全面を一体で覆うシート構造で、屋根材のような大きな継ぎ目はありません。
仮に屋根材の下に水が入り込んでも、最終的にこの防水シートが受け止め、軒先へと排水します。
したがって、屋根材に多少のズレがあっても、一部に割れがあっても、ビス周辺から少量の水が入っても、ルーフィングが健全であれば、室内まで水は到達しません。

ルーフィングは家を守る最後の砦
ルーフィングは家を守る最後の砦

屋根材が新品でも、下にあるルーフィングが硬化・破断・劣化していれば、入り込んだ水はそのまま野地板に到達し、雨漏りへとつながります。
実際の現場では、「屋根材はまだきれいなのに雨漏りしている」というケースが少なくありません。
屋根をめくって初めて、ルーフィングの破れや固定部の劣化が原因だったと分かるのです。

ルーフィングにはいくつかのグレードがあります。新築時に「標準仕様」で入っているものは、往々にして最低ランクであることが多いため注意が必要です。
以下に当社で実際に採用しているおすすめのルーフィングをご紹介します。

製品名 種類 耐久年数(目安)
PカラーEX+(プラス) 改質アスファルト系 約20年
ニューライナールーフィング 改質アスファルト系(高耐久) 約30年
ルーフ ラミテクト®︎ EX 透湿防水ルーフィング 約30年
マスタールーフィング 高耐久改質アスファルト 30年以上

PカラーEX+は、いわゆる「標準940(一般的に新築標準に採用されている)」よりも一段上の改質アスファルト系ルーフィングです。
一般的な940はコスト優先の仕様であり、10〜15年程度を目安に性能低下が見られるケースがあります。一方、PカラーEX+はアスファルトを改質(ゴム・樹脂成分を配合)しており、柔軟性と耐久性が向上しています。

PカラーEX+(プラス)
[画像]田島ルーフィングHP

ニューライナーは、改質アスファルト系の中でも実績が豊富なタイプで、コストと耐久性のバランス型です。「最低限ではなく、ちゃんとした仕様にしておきたい」という新築では十分選択肢に入ります。
特に、スレートやガルバリウム屋根で15〜20年スパンのメンテナンス計画を想定している場合には、現実的なグレードです。

ニューライナールーフィング
[画像]田島ルーフィングHP

この製品の最大の特徴は「透湿性能」です。
通常のルーフィングは防水性能は高いものの、湿気は逃がしません。そのため、屋根内部に結露が発生すると逃げ場がなくなるケースがあります。
ラミテクトEXは、「外からの水は防ぐ」「内部の湿気は外へ逃がす」という呼吸する防水層に近い性質を持ちます。
このルーフィングが真価を発揮するのは、高気密・高断熱住宅ですが、注意点として、施工側が透湿設計を理解していることです。通気層の確保、軒先・棟の換気計画が不十分だと、透湿型のメリットは十分発揮されません。設計と施工がセットで成立する上級仕様と考えるべき製品です。

ルーフ ラミテクト®︎ EX
[画像]セーレン株式会社HP

マスタールーフィングは、高耐久グレードの代表格であり、「屋根材の寿命と下地の寿命を揃える」思想に合致する製品です。
瓦や高耐久金属屋根を採用する住宅では、「屋根材は40年持つのに、下地が20年では意味がない」という矛盾が起こりやすくなります。そのため、「瓦屋根」「高耐久金属屋根」「長期優良住宅」では、ルーフィングも同等レベルのものを使用することが重要になります。

マスタールーフィング
[画像]田島ルーフィングHP

屋根材は交換できますが、下地であるルーフィングは簡単には交換できません。だからこそ新築時に、屋根材とルーフィングのグレードをセットで考えることが重要です。

ハウスメーカーや工務店が提示する「標準仕様」は、建築コストを抑えるためのメーカー側の最適解であって、あなたにとっての最適解とは限りません。
将来の雨漏りリスクや莫大なメンテナンス費用を防ぐため、設計士や営業担当者に必ず確認していただきたい「4つの質問」をまとめました。

「新築打ち合わせ」で確認すべき質問

前章でも述べましたが、まず最重要なのがルーフィングです。
屋根材は説明されますが、ルーフィングまで説明されることは恐らく多くないでしょう。

確認すべきポイントは

  • 製品名は何か?(標準940なのか、改質アスファルトなのか、透湿タイプなのか)
  • 期待耐久年数は?(15年なのか、20〜30年なのか)
  • 屋根材の耐久年数とバランスは取れているか?(屋根材30年仕様なのに、下地が15年仕様になっていないか)

多くの場合、「標準仕様です」「一般的な仕様です」と説明があるかと思いますが、「この屋根材の寿命と耐久年数は合っていますか?」と確認してみてください。
この一言で、施工側の設計思想が分かると思います。屋根材と下地をセットでしっかり考えられて設計しれくれているかどうか、必ず確認するようにしましょう。

屋根材を選ぶ際、多くの場合は「見た目」「価格」「今の性能」が中心に説明されます。
しかし本当に大切なのは、10年後にその屋根がどうなっている可能性があるかという点です。

  • 再塗装は必要か?その目安は何年後ぐらいか?
  • 10年目に想定されるメンテナンスは?
  • メンテナンスの目安費用はいくらくらいか?

この質問に明確に答えられる会社は、将来まで見据えた提案をしている可能性が高いと言えます。
長期的なメンテナンス計画を前提に考えることで、屋根材やルーフィングの選択肢は自分の好みと併せて絞られてくるでしょう。
見た目や初期費用だけで決めるのではなく、10年後・20年後まで含めた総コストと安心感を基準に選ぶことが、後悔しない屋根選びにつながります。

軒の出とは、屋根が外壁よりどれだけ外に張り出しているかという寸法です。
軒の出は、屋根材よりも長期耐久に影響する設計要素になります。しかし、新築打ち合わせでは「デザイン要素」として扱われることが多いのが現実です。

軒の出の比較
軒の出の比較

軒があることで、「外壁に直接雨が当たりにくい」「屋根端部の負担が減る」といった住宅への負担を軽減できます。
逆に軒ゼロや極端に短い設計は、「雨が壁を直撃する」「シーリングの劣化が早まる」といったメンテナンスの周期が早まる可能性が高まる、と考えられます。

屋根職人が実際の現場で感じることは、軒ゼロや極端に短い設計の住宅は

  • 外壁の汚れやコケが早い
  • 屋根端部の役物が傷みやすい
  • サッシ周りのシーリング劣化が早い

雨漏りしやすい、というのが正直な印象です。
ですので、新築打ち合わせではぜひ、「軒の出は何センチですか?」と確認してみてください。

その質問にきちんと答えられる会社は、デザインと併せて屋根のメンテナンスも考慮した設計思想を持っているでしょう。もし明確に答えられない場合、屋根の将来設計まで深く考えられていない可能性があります。

10年後に後悔しない「屋根」づくりのために

新築時の屋根材選びでは、どうしても「色」や「デザイン」「初期費用」ばかりが話題になりがちです。「10年後にどのような劣化が起きるか」という現実的なリスクについては、施工側から積極的に説明されないケースも少なくありません。
屋根は雨・風・紫外線・寒暖差を毎日受け止め続ける消耗部位であり、10年後・20年後の家計に直結します。だからこそ、打ち合わせ段階で意識したいのは「どの屋根材が格好いいか」だけではなく、どんな設計にするかで将来のメンテナンス費用が大きく変わります。

「最近の屋根は長持ちしますから大丈夫ですよ」といった曖昧な説明ではなく、具体的な劣化の可能性と将来のコストを明確に提示できる会社は、家づくりを「建てて終わり」にせず、お客様の将来まで見据えた誠実な提案をしてくれていると言えるでしょう。

数十年スパンでの維持費(ライフサイクルコスト)を検討しておくことで、単なるデザインの好みだけでなく、「初期費用を抑えるか」「将来の手間を減らすか」といったご自身のライフスタイルに合った屋根材とルーフィングの選択肢が、必然的に絞られてくるはずです。

デザインや初期費用だけでなく、見えない「本質」を見極め、長く安心して暮らせるマイホームを実現してください。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

親子三代続く板金職人による高品質な工事をリーズナブルな価格で

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