金属屋根の縦葺き・横葺きの違いを徹底解説

近年、住宅の屋根リフォームで人気の金属屋根には、大きく分けて「縦葺き」と「横葺き」という2種類の葺き方があります​。これは文字通り、屋根材を縦方向に並べるか横方向に並べるかの違いで、見た目のデザインも縦葺きなら縦縞模様、横葺きなら横縞模様になるのが特徴です​。しかし、両者の違いは単なる見た目だけではありません。それぞれ性能面や施工方法に特徴があり、メリット・デメリットも異なります。

屋根葺き替え工法

本記事では、金属屋根の縦葺き・横葺きについて詳しく解説します。屋根リフォーム時の適用項目や、代表的な横葺き製品である「スーパーガルテクト」と「横暖ルーフ」の比較も交え、どんな家にどの屋根が合うのか考えてみましょう。

縦葺き屋根は、屋根の傾斜(棟から軒先)に沿って屋根材を縦方向に葺いていく工法です​。写真は白い金属屋根に黒い縦ラインが通った立平葺きの施工例で、シンプルでシャープな外観が特徴です。縦葺きでは長尺の金属板を棟から軒先まで一直線に配置するため、見た目は縦方向になります​。

縦葺きにはいくつかの施工方法があります。代表的なのが瓦棒葺き立平葺きです​。瓦棒葺きは接合部に木製の心木(しんぎ)を挟んで固定する方法で、昔から使われてきました。ただし木を使用する関係で、水を含むと心木が腐食する恐れがある点がデメリットです​。

一方、立平葺き(たてひらぶき)は心木を使わずに金属板同士を折り曲げて継ぎ目(ハゼ)を立ち上げて固定する方法で、防水性が高く瓦棒葺きの欠点を改良した工法です​。現在の縦葺き金属屋根の多くは立平葺きで施工されており、ガルバリウム鋼板製の立平葺きは軽量かつ耐久性に優れ、耐震性の面でも注目されています。

使用される素材は主にガルバリウム鋼板(アルミ亜鉛合金メッキ鋼板)で、トタンに比べ錆びにくく長持ちする金属材料です​。ガルバリウム鋼板の縦葺き屋根は耐久年数が長く、定期的な塗装メンテナンスをすれば30年以上使用できます。また、金属屋根材自体が軽量なため建物への荷重負担が小さく耐震性が高いのも特徴です。瓦屋根の約1/10程度の重量しかないため、地震の揺れを大幅に軽減できます。

足場設置のコストに対する理解とその価値

雨漏りしにくい:縦葺きは雨水の流れる方向に継ぎ目(段差)ができないため、屋根に水が溜まる箇所がありません​。雨は棟から軒先へ一直線に流れ落ち、スムーズに排水されるので雨漏りリスクが低いです​。そのため、勾配(傾斜)が緩い屋根でも施工可能なのが大きな利点です​。実際、縦葺きは0.5寸(約2.5°)程度の緩勾配から対応でき、フラットに近い屋根にも適用できます​。

施工が比較的早い:長い板金を並べて固定していくため、大きな面積を一気に葺くことができ、工期が短くなる傾向があります​。継ぎ目処理が少なく作業工程がシンプルなため、同じ屋根面積なら横葺きより早く仕上げられることが多いです​。

コストが抑えられる:縦葺きは素材も施工もシンプルで、横葺きより価格が抑えられることが多いです​。特に装飾性の少ない立平葺きは、ガルバリウム鋼板屋根の中でも比較的リーズナブルな部類です。限られた予算で耐久性の高い屋根にしたい場合、有力な選択肢になります。

シンプルでシャープなデザイン:縦方向のスッキリしたラインはモダンな印象を与え、和風・洋風を問わずシンプルな外観を好む方に適しています。スタイリッシュな縦ラインは現代的な建築デザインにもマッチし、外壁との組み合わせ次第で洗練された雰囲気になります。

複雑な屋根形状には不向き:長尺の屋根材を一直線に並べるため、入り組んだ形状の屋根では対応しづらい場合があります。例えば寄棟屋根や谷・隅棟の多い複雑な屋根では、板金の長さや角度を細かく調整する必要があり、場合によっては施工できないこともあります​。縦葺きは屋根形状がシンプルなほど施工しやすいと言えます。

デザインの種類が少ない:縦葺き屋根材は基本的にフラットな板状でカラーも単色系が中心です。横葺きに比べて意匠性にバリエーションが少なく、高級瓦やデザインシングルのような装飾的見た目は得意ではありません​。「無難で地味」と感じる方もいるかもしれません。

リフォームでのカバー工法がやや難しい場合も:既存屋根の上から重ね張りするカバー工法では、縦葺きより横葺き材が使われることが多いです。縦葺きも下地次第では可能ですが、スレート屋根への重ね葺きには横葺き材が適しているという指摘もあります。そのため、リフォーム時には横葺き材を検討するケースが少なくありません。

縦葺きは以下のような条件の住宅に適しています。

片流れ屋根
片流れ屋根
  • 屋根勾配が緩い家勾配が2.5寸未満の屋根では基本的に縦葺きしか施工できません​。陸屋根に近いような低勾配屋根や、雨の多い地域で勾配を緩く設計した屋根には縦葺きが向いています。雨水排水性が高いため、雨漏り対策上も有利です。
  • 切妻屋根や片流れ屋根など単純な形状の家:屋根の形がシンプルで平面が大きい場合、縦葺きの長所が活きます。大判の立平葺きパネルで効率よく葺けるため施工コストも抑えられます。無駄な継ぎ目がない一体的な仕上がりはシンプルな建物デザインによく合います。
  • コスト重視・性能重視のリフォーム:予算内でできるだけ耐久性や防水性を高めたい場合、縦葺きは有力候補です。華やかさよりも実利を優先するリフォームでは、縦葺きガルバリウム鋼板が費用対効果の高い選択となります。
  • 和風住宅から金属屋根に葺き替え:和瓦から軽い金属屋根に替えて耐震性を向上させたいとき、あえて装飾を抑えた縦葺きを選ぶ方もいます。縦葺きのすっきりしたラインは和モダンな雰囲気にもマッチし、重厚な和瓦からの変更でも違和感を抑えられます。

以上のように、縦葺き屋根はシンプルな形状や低勾配の屋根で威力を発揮します。防水性能とコストパフォーマンスに優れ、実用本位で頼れる屋根と言えるでしょう。

金属屋根(ガルバリウム鋼板)

横葺き屋根は、地面と平行(水平)に屋根材を葺いていく工法です​。細長い金属板が軒先と平行に何段にも重ねられています。横葺きでは1枚あたりの屋根材の幅は約30㎝で、横方向に重ね合わせて段状に葺くため、見た目は横方向のラインが強調されたデザインになります​。

横葺きにもいくつか種類がありますが、大きく平葺き段葺きに分けられます​。平葺きは横方向の継ぎ目に段差がなくフラットに仕上がるタイプ、段葺きは継ぎ目に段差をつけて陰影を強調するタイプです​。いずれも屋根材同士が上下に重なり合い、かみ合わせ式(嵌合式)で固定されるものが一般的です。使用素材の主流は縦葺き同様にガルバリウム鋼板ですが、裏に断熱材(ウレタンフォームなど)を貼り付けた複合板になっている製品も多く、断熱性を高めた横葺き屋根材が住宅リフォーム向けに開発されています​。

横葺き金属屋根はスレート(コロニアル)屋根のカバー工法によく採用されます。既存のスレートの上から防水シートを敷き、その上に横葺きのガルバリウム鋼板パネルを張ることで、撤去せずに屋根を一新できます。横葺き材は薄型で軽量なうえ、重ね張りしても段差が大きくならず施工しやすい利点があります。そのため、リフォームでは横葺き金属屋根材が数多く出回っており、デザインや性能の選択肢も豊富です。

デザイン性が高い:横葺き屋根材はカラーや模様のバリエーションが非常に豊富で、オシャレな屋根に仕上げやすいのが魅力です​。シンプルなフラット系から段付きで立体感のあるもの、木目調や石粒付きで瓦風に見せたものまで、多彩なデザインがあります。例えば「横葺きの方がオシャレな感じ」という声もあり​、外観イメージを重視するリフォームでは横葺きが選ばれる傾向があります。素材は同じガルバリウム鋼板でも、見た目の印象を変えられるのは横葺きの強みです​。

複雑な屋根形状にも対応:小ぶりなパネルを組み合わせる横葺きは、入り組んだ屋根でも細かく調整しながら施工が可能です​。一枚物の長尺板を使う縦葺きと違い、横葺きなら谷や隅棟が多い屋根にもフィットしやすいと言えます。実際、「横葺きの屋根は複雑な地形でも施工が可能」とされ​、寄棟・方形・入母屋などの複雑屋根では横葺き材が活躍します。リフォームでも増改築で形が複雑になった屋根に対応しやすいです。

断熱材一体型製品がある:横葺き金属屋根には、屋根材と断熱材が一体になった高断熱タイプの製品があります​。例えばアイジー工業の「スーパーガルテクト」やニチハの「横暖ルーフ」は裏面に硬質ウレタンフォーム断熱材が貼られており、従来の金属屋根の弱点だった断熱性を大幅に向上させています​。これにより、夏の遮熱・冬の保温効果が期待でき、室内の温度環境改善や光熱費削減にもつながります​。縦葺き屋根でも後から断熱材を敷くことはできますが、材料一体型で施工できる横葺き製品の手軽さは魅力です。

カバー工法に最適:横葺き屋根材は既存屋根への重ね葺き(カバー工法)に向いているものが多いです。先述したようにスレート屋根や古い金属屋根の上に下地シートを貼り、横葺きパネルを施工することで葺き替えが可能です。ニチハの横暖ルーフなどは「既存の屋根を囲い込む重ね葺き工法」を採用でき​、解体廃材を出さず住みながら短期間でリフォームできる点が評価されています​。

豊富な製品ラインナップ:横葺きは各メーカーから多彩な製品が出ています。例えば横暖ルーフシリーズには複数のグレードがあり​、予算や求める性能に応じて選べます。色も形も自由度が高いため、「和風の家に合う落ち着いた色合い」「洋風モダンな家に合わせたスタイリッシュなデザイン」など、住まいのスタイルにぴったりの屋根材を見つけやすいでしょう。

勾配が必要:横葺きは構造上、雨水の流れ方向(縦方向)に段差が生じます。そのため緩い傾斜の屋根だと水が滞留しやすく、雨漏りリスクが高まる欠点があります​。一般に横葺き材は2.5以上の勾配でないと推奨されず、緩勾配屋根には使えません​。実際、縦葺きが0.5寸以上で施工可能なのに対し、横葺きは2.5寸以上で施工が可能とされています​。したがって、勾配のゆるい屋根では選択肢にできないのがデメリットです。

雨仕舞いに注意が必要:上記と関連しますが、横葺きは段差部分での雨仕舞い(防水処理)が重要です。急勾配の屋根であれば問題ありませんが、やや勾配が緩めの場合、風雨が強いと重ね目から雨水が吹き込む恐れもあります。そのため、横葺き施工時はシーリング処理や防水テープの活用などで雨水侵入を防ぐ工夫が取られています。適切に施工すれば防水性は確保できますが、縦葺きより気を遣うポイントではあります。

縦葺きより工期が長いことも:横葺きは小さなパネルを枚数多く取り付ける必要があるため、同じ面積でも縦葺きより手間と時間がかかる場合があります​。一枚一枚重ね合わせて固定する工程が繰り返されるため、大きな屋根では作業量が増えます。ただし熟練した職人による施工や、製品によっては大判サイズの横葺き材もあるため、一概に長工期とは言えませんが、複雑な納まり部分で手間がかかる点は留意が必要です。

コストがやや高め:一般的に横葺きの金属屋根材は、断熱材付き高機能品が多いこともあり、縦葺きより材料費が高くなる傾向があります​。また施工手間も先述の通り多少増えることから、トータル費用では縦葺きより高くなるケースが見られます。ただし製品によって価格帯は様々で、断熱材なしの横葺き材であれば大きく変わらないこともあります。

横葺きは以下のような場合に適しています。

屋根の傾斜が急な家(勾配3寸以上)であれば横葺き材を安心して使用できます。雨水が素早く流れるため、横葺きのデザイン性を存分に活かせます。急勾配屋根はそもそもデザインが目立つ部分なので、カラフルな横葺き材でアクセントをつけるのも良いでしょう。

谷や下屋が多い、増築続きで形がいびつ、といった屋根でも横葺きなら対応可能です。細かな部分まで加工しやすいので、棟や隅部分の多い和風住宅のリフォームなどにも向いています。板金職人さんが腕を振るいやすい屋根とも言えます。

屋根も家の「顔」の一部ですから、美観を重視するなら横葺きの出番です。例えばモダンな洋風住宅にはスタイリッシュな横葺きガルバが似合いますし、和モダンには落ち着いたマットカラーの横葺き材がマッチします。カラーバリエーションも豊富なので、外壁や建物全体の調和を考えて色選びができます。

屋根断熱

冬寒く夏暑い屋根裏の環境を改善したい場合、断熱材一体型の横葺き屋根材が効果的です​。屋根そのものに断熱性を持たせることで、小屋裏の温度上昇を抑え冷暖房効率を高められます。特に既存が無断熱のスレート屋根だったお宅がカバー工法で横葺き断熱屋根に替えた場合、「夏場の2階が以前より涼しくなった」と体感されるケースもあります。

スレート屋根は塗装メンテナンスか葺き替えかの選択時期が来ますが、塗装2回目以降であれば重ね葺きリフォームがおすすめです​。その際、スーパーガルテクトなど横葺き材でのカバー工法は人気の選択肢となっています​。塗装を繰り返すより長期的にメンテナンスフリーになり、断熱・遮熱効果で光熱費削減も期待できるためです。まさに「塗装に比べお得」と言われる点ですね​。

以上、縦葺き・横葺きそれぞれの特徴とメリット・デメリット、適した住宅条件を見てきました。それでは次に、断熱性やコスト、メンテナンス性といった観点で両者を比較してみましょう。

金属屋根は一般に断熱性が低いと思われがちですが、これは昔ながらのトタン板一枚だけの屋根を想定した場合の話です。現代の金属屋根、とりわけ横葺き屋根材には断熱材と一体化した製品が多く、断熱性能が格段に向上しています​。例えば横葺きの横暖ルーフシリーズは硬質ウレタンフォーム断熱材を裏打ちしており、「高い断熱性を発揮」すると紹介されています​。同様にスーパーガルテクトも屋根材と断熱材を一体化させた構造で、高い遮熱・断熱性能を実現しています​。これら横葺き断熱金属屋根は夏の強い日差しを反射・遮断し、小屋裏空間の温度上昇を抑える効果があります。その結果、エアコンの負担軽減による光熱費削減効果も期待できるわけです​。

断熱性の不足による室内環境の悪化

一方、縦葺き屋根はシンプルな板金が主流で、素材自体に断熱性はほとんどありません。ただし縦葺きだからといって断熱できないわけではなく、施工時に断熱下地を組み込むことも可能です。例えば屋根下地に断熱ボードを敷いたり、天井裏にグラスウール断熱材を充填したりすることで対処できます。つまり、縦葺きか横葺きかというより製品仕様と施工方法の問題と言えます。ただ現状では、断熱材一体型=横葺き製品が多いため、「断熱性重視なら横葺き」という図式になりやすいです。

総じて、断熱性能では断熱材付き横葺き屋根が有利です。しかし縦葺きでも適切な断熱施工を施せば快適性は確保できます。逆に断熱材付き横葺きでも、野地板や天井裏の断熱が不十分だと本来の性能を発揮できないので、トータルで断熱層をどう構成するかが重要です。

初期コスト(工事費)を見ると、縦葺き屋根の方が横葺きより安く済むことが多いです​理由は、縦葺き屋根材自体がシンプルで安価なこと、施工工程が少なく職人の手間が減ることが挙げられます。例えば一般的なガルバリウム鋼板立平葺きは材料費・施工費ともにリーズナブルで、1㎡あたりの本体工事単価は5~6000円台という例もあります​。

一方、横葺き屋根材は高機能な断熱材付き商品が多く、材料費も高めです。先ほど例に挙げたスーパーガルテクトや横暖ルーフは1㎡あたり約6000~8000円程度が目安で​、製品グレードによってはそれ以上になるものもあります。また、横葺きは細かな部材(棟・ケラバ・谷などの役物)も多彩で、トータルコストがかさみやすい面があります。

ただし、長期的な視点で見たコストは少し違ってきます。まず、横葺き断熱屋根材は先行投資こそ高いものの、断熱効果で冷暖房費を節約できるメリットがあります​。また耐候性の高い製品が多く、メンテナンスサイクルが長い(塗り替え頻度が少ない)ため、ライフサイクルコストで見ると有利になる場合があります。例えばスーパーガルテクトは塗膜15年・赤錆20年・穴あき25年保証という手厚い保証が付き​、少なくともその期間は大きな出費なく屋根が維持できる計算です。一方、安価な縦葺きでも定期的な再塗装や補修が必要になれば、その都度費用が発生します。最初に安くても将来的に塗装工事を2回3回と行えば結局コストは嵩む可能性があります。

また、リフォーム工法によるコスト差も考慮が必要です。縦葺き・横葺きに限らず、既存屋根の撤去を伴う葺き替え工事は解体処分費がかかりますが、重ね葺き(カバー工法)なら撤去費を省けるためコスト圧縮できます。横葺き材はカバー工法向きなので、その利点を活かせば総費用を下げられます。一方、縦葺きでもカバー工法が不可能ではありませんが、既存屋根の状態や形状によっては難しいケースもあります​。

以上より、初期費用重視なら縦葺き有利、長期スパンや付帯効果まで考えると横葺きも魅力という図式になります。最適解は住宅ごとの状況によりますので、複数の業者から見積もりを取り、費用対効果を検討することが大切でしょう。

金属屋根全般に言えることですが、適切に施工されたガルバリウム鋼板屋根はメンテナンス負担が比較的少ないです。従来の瓦屋根のように定期的な部分交換(割れ瓦差し替え等)の手間もなく、スレート屋根のような塗装頻度(10年毎など)も長めです。塗膜性能が向上した現在では、15~20年程度は塗り替え不要との製品も珍しくありません​。

その上で縦葺きと横葺きを比較すると、縦葺きの方が構造が単純な分だけチェック箇所は少ないと言えます。縦葺きは長いはぜ締め構造で、仮に不具合が出るとしても接合部や固定金具周りなど限られた部分です。継ぎ目も棟と軒先以外はほぼ存在しないため、点検項目がシンプルです。ゴミや落ち葉も縦方向に流れて堆積しにくいので、詰まりによる雨漏りリスクも低減されます。

一方横葺きは段差部分に葉っぱや埃が溜まりやすい傾向があります。特に屋根勾配がギリギリの場合、重ね段にゴミが堆積すると排水が阻害される恐れもあるため、状況によっては定期的な清掃が望ましいです。ただ急勾配であれば雨と一緒に流れ落ちやすいので、大半のケースでは深刻な問題にはなりません。気になる場合は、年に一度程度、双眼鏡などで屋根表面を観察して異物が溜まっていないか確認すると安心です。

耐久部材の観点では、横葺き屋根材は各社とも長寿命を謳うものが多く、メンテナンス性は優秀です。先述したように保証期間の長さも折り紙付きで、例えば横葺き材の高耐久品(フッ素塗膜)には20年保証(塗膜変褪色保証)が設定されています。つまり質の良い横葺き材を選べば、長期的なメンテナンスコストは低減できるでしょう。縦葺き材でも同様に、高耐久のガルバ鋼板(SGL鋼板など)を使ったものを選べば寿命は延びますが、横葺き製品の方が選択肢が多い印象です。

いずれにせよ、縦葺き・横葺き問わず定期点検は不可欠です。屋根材自体に問題なくとも、板金の継ぎ目や取り合い部(壁との接点など)、塗装の劣化状況は定期的にプロにチェックしてもらうのが理想です。10年目、20年目など節目で点検し、必要に応じて塗装や継ぎ目などのシーリング補修を施せば、どちらの屋根も長寿命を全うするでしょう。

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最後に、横葺き金属屋根材の中でも特に人気の高い2大製品スーパーガルテクト」と「横暖ルーフ」について、その特徴と違いを解説します​。これらは屋根リフォーム業界でよく比較される製品で、それぞれ高性能なガルバリウム鋼板断熱一体型屋根材として知られています​。性能面では「ほとんど変わらない」と言われるほど似通った両者ですが​、細部の仕様やラインナップに違いがあります。自宅の屋根材選びに迷ったときの参考に、それぞれの強みを押さえておきましょう。

スーパーガルテクトは国内大手建材メーカーアイジー工業株式会社が2016年に発売した横葺き金属屋根材です​。

一番の特徴は、屋根材(鋼板)と断熱材(硬質ウレタンフォーム)を一体化させたサンドイッチ構造にあります​。これにより非常に軽量でありながら優れた遮熱・断熱性能を発揮し、発売以来リフォーム市場で大人気となっています。高性能が評価され、令和4年(2022年)には文部科学大臣表彰も受賞するなど、公的にも認められた製品です​。

スーパーガルテクトの素材面での強みは、表面に採用された「超高耐久ガルバ」です​。従来のガルバリウム鋼板を改良し、メッキ層を通常より約1.25倍厚くした独自鋼板(SGL鋼板)を使用しています​。その結果、防錆性能が飛躍的に向上し、メーカー保証も塗膜15年・赤錆20年・穴あき25年と非常に長く設定されています​。特に穴あき25年保証が付く屋根材は稀で、この高耐久性により海岸近くの塩害環境でも保証適用されるなど信頼性が高いです​。

スーパーガルテクトはまた遮熱性の高さも注目ポイントです。​独自の構造設計技術と特殊遮熱塗料コーティングによって優れた遮熱効果を発揮し、夏場の室内温度上昇を抑制します​。断熱材との相乗効果でオールシーズン快適な室内環境に寄与してくれるでしょう。

デザイン面では、表面仕上げに2タイプあります。標準仕様はポリエステル樹脂塗装で、落ち着いた艶消し系のカラーバリエーションがあります​。微細な多彩色塗装が施され、高級感のある石質調のような見た目が特徴です​。もう一つはフッ素樹脂塗装のスーパーガルテクトフッ素で、こちらはブラックとブラウンの2色展開ですが塗膜耐久性が更に高いプレミアム仕様です​。標準とフッ素で見た目の質感が少し異なり、標準はやや艶有り、多彩色で豪華、フッ素は艶消しでシンプルな模様といった違いがあります​。

施工性も良く考慮されており、大判で軽いパネルは1枚当たり約7kg程度と瓦の約1/8の重さです。カバー工法でも棟から軒まで一体的に施工でき、台風など災害にも強いよう設計されています​。実際、「災害に強い」「光熱費削減効果が期待できる」ことがメリットとして挙げられています​。

総じてスーパーガルテクトは、高耐久・高断熱で長期保証も付いたトップクラスの金属屋根材です。​予算が許すなら是非採用したい製品と言えるでしょう。

横暖ルーフ(よこだんルーフ)は、外壁材大手のニチハ株式会社が販売する高性能金属屋根材「センタールーフ」シリーズの主力商品です​

ニチハは元々サイディング(外壁)メーカーですが、屋根材メーカーをグループ化したことでこの横暖ルーフを展開しています​。横暖ルーフは登場以来全国で採用が進み、伝統的な和風建築から現代的洋風住宅まで幅広く対応できる意匠性を持つとされています​。新築・リフォーム問わず使える汎用性の高さも魅力です​。

横暖ルーフには現在6種類ものバリエーションがあります​。主な製品は、遮熱ポリエステル鋼板仕上げの「横暖ルーフS」、その6尺(約1820mm)サイズ版「横暖ルーフS 1820」​、高耐候フッ素鋼板仕上げの「横暖ルーフプレミアムS」​、さらに断熱性能を強化した「横暖ルーフαS」や「横暖ルーフαプレミアムS」などです​。それぞれ塗装や仕様の違いがありますが、基本構造は共通で、ガルバリウム鋼板(またはSGL鋼板)+断熱材一体型の横葺き屋根材です​。つまりスーパーガルテクト同様、裏に硬質ウレタンフォーム断熱材を一体成型しており、高い遮熱・断熱性能を持っています​。

横暖ルーフシリーズの強みの一つはバリエーションの豊富さです​。予算や重視する性能(耐久性をとるかコストを抑えるか等)に合わせて最適なタイプを選べます​。例えば、「とにかく長持ちさせたい」という場合は最高級の横暖ルーフαプレミアムS(フッ素樹脂遮熱鋼板)を選べば塗膜20年保証が付きます​。逆に「そこまで高機能でなくてもいいから予算重視」というなら横暖ルーフS(ポリエステル遮熱鋼板)でコストを抑える、といった選択が可能です​。

性能面では、横暖ルーフも超高耐久を謳っており、メーカーの長期保証があります。具体的な保証内容はグレードによりますが、プレミアムSで塗膜20年・赤錆20年・穴あき25年(製品によって異なる)といったラインナップです。遮熱鋼板+断熱材の相乗効果で、優れた遮熱性能と耐久性を同時に実現しているとされています​。

デザインに関して、横暖ルーフは和洋問わず合わせやすいシンプルな意匠です。表面は基本的にフラット系で、「窯変(ようへん)調」と呼ばれる和瓦風テクスチャのものも用意されています​。カラーバリエーションもブラック、ブラウン、グリーン、ギングロ(シルバー系)など複数あり、特にギングロ色は横暖ルーフαSのみの限定色となっています​。このように住宅のスタイルや好みに応じた色選びができる点も人気の理由です。

施工面では、横暖ルーフもカバー工法を前提にした設計で、既存屋根の上に直接施工できます​。

重ね葺き工事でも棟換気部材などオプションが揃っており、仕上がりも美しく納められます。また、6尺サイズの設定(横暖ルーフS 1820)は狭所での取り回しを良くするための配慮で、リフォーム現場で扱いやすいよう考えられています​。

両者とも国内トップクラスの横葺き金属屋根材ですので、最終的には好みや重視ポイントで選ぶと良いでしょう。「長期保証の安心感」「実績の豊富さ」でスーパーガルテクトを推す声もあれば、「自分の家にはこの色が合う」「予算内でこのグレードがちょうどいい」と横暖ルーフを選ぶケースもあります。実際、性能差は僅少なので​、迷った場合はカタログの色見本や実物サンプルを取り寄せて質感を比較したり、施工業者にそれぞれの施工経験談を聞いたりすると決めやすくなります。

最後に、住宅所有者が屋根リフォーム時に検討すべきポイントを整理し、本記事のまとめとします。

1. ご自宅の屋根形状・勾配を把握する:まずは自宅の屋根がどんな形状・傾斜かを確認しましょう。勾配が緩い屋根なら必然的に縦葺き一択になります​。逆に十分な勾配があれば縦横どちらも選択できます。その場合、屋根の形状がシンプルなら縦葺きも可、複雑なら横葺きが有利、という判断材料になります​。ただし最近は縦葺き材でもある程度複雑形状に対応可能な場合もありますから、最終判断は専門業者の現地調査に委ねるのが確実です​。

2. 屋根材に求める優先事項を決める:屋根材に何を一番期待するか考えましょう。コスト重視なのか、デザイン重視なのか、あるいは断熱性能や耐久性重視なのか。コスト優先ならシンプルな縦葺きガルバで必要十分かもしれませんし、見た目を一新したければ横葺きデザイン屋根が適しています。断熱・遮熱性能を高めたいなら断熱材付き横葺きが第一候補ですし、海沿いで錆が心配なら最も耐食性の高い製品(例えばフッ素塗装の横暖ルーフαなど)を選ぶべきでしょう。このように譲れないポイントをはっきりさせることで、適材適所の選択がしやすくなります。

3. 縦葺き・横葺きの適材適所を理解する:本記事で述べたように、縦葺きと横葺きにはそれぞれ得意分野があります。縦葺きは防水性とコスト面横葺きは意匠性と機能面で優れる傾向があります。それぞれのメリット・デメリットを念頭に置きつつ、自宅の条件にマッチする方を選ぶのが重要です。「勾配が緩いからうちは縦葺きしか無理だけど、その分シンプルで安くてラッキー」と捉えるのも良いですし、「うちは条件が合うから多少高くても横葺き高機能屋根にしよう」と決断するのも一つです。

4. 製品ごとの特徴を比較する:同じ縦葺き、同じ横葺きでも製品ごとに性能は様々です。例えば縦葺きにもガルバより更に錆びに強いステンレス製の立平葺きがあり、価格は上がりますが海沿いでは有効です。また横葺きでも、前述したスーパーガルテクトと横暖ルーフのように似たコンセプトの製品が複数あります。カタログスペックや保証内容を比較検討し、自分に合った製品を選ぶことが満足いくリフォームにつながります。可能であればショールームで実物を確認したり、施工例写真を見せてもらったりするとイメージが掴みやすいでしょう。

5. 信頼できる屋根工事業者に相談する:最終的にはプロの意見が頼りになります。屋根は高所で自分では確認しづらく、判断が難しい部分も多いです。複数の業者に現地調査と見積もりを依頼し、提案内容を比較してみてください​。「縦葺きも横葺きも施工可能だけど、この家なら◯◯の方が適しています」といった具体的なアドバイスが得られるでしょう。悪徳業者を避けるためにも相見積もりは有効で、説明が丁寧でこちらの意向を尊重してくれる業者を選ぶと安心です​。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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