はじめに
横暖ルーフ(よこだんルーフ)とは、大手建材メーカーのニチハ株式会社が製造・販売する高性能な金属屋根材です。名称の「横暖」は、横葺き(金属板を横方向に重ねる工法)の屋根材であり、断熱性能によって屋内を暖かく保てることに由来しています。主な素材はガルバリウム鋼板(アルミニウムと亜鉛合金メッキ鋼板)で、裏面に硬質ウレタンフォーム断熱材が一体成型されています。この構造により、従来の金属屋根に比べて 遮熱性・断熱性 に優れ、夏は涼しく冬は暖かい住環境を実現できるのが特徴です。
また、ガルバリウム鋼板にも通常品と改良品があり、横暖ルーフにはマグネシウムを約2%添加した「高耐食性ガルバリウム鋼板(SGL)」が採用されています。その結果、一般的なガルバリウム鋼板より耐久性が約3倍とされ、サビに対する強さが飛躍的に向上しています。
製品は2000年前後に発売されて以来改良が重ねられ、現在は「横暖ルーフS」「横暖ルーフαS」「横暖ルーフプレミアムS」「横暖ルーフαプレミアムS」といったバリエーションがラインナップされています。標準モデルの「S」は表面がポリエステル塗装、一方で上位モデルの「プレミアムS」ではフッ素樹脂塗装が施されており、より長期の耐候性・耐久性を備えています。
いずれのモデルも厚さ0.35mmの高耐食鋼板と厚さ約12〜17mmの断熱材を組み合わせ、軽量かつ高断熱の屋根材となっています。一般的な和瓦やスレート瓦にも適合する和風・洋風問わないデザインで、新築はもちろんリフォーム(屋根の葺き替え・カバー工法)にも広く採用されています。

メリット・デメリット
メリット
横暖ルーフの最大のメリットは屋根材としての性能の総合力が高いことです。まず、耐久性に優れています。素材に使用されている「塗装高耐食GL鋼板」(SGL)は錆びにくく、従来の金属屋根より長寿命です。約25〜30年の耐用年数が保証されており、メーカー保証も塗膜15〜20年・赤錆20年・穴あき25年と非常に長期です。実際、通常のスレート屋根よりもガルバリウム鋼板屋根の方が寿命が長く、約30年以上もつとされます。
加えて横暖ルーフは裏に断熱材を貼り合わせているため、遮熱性・断熱性が飛躍的に高い点も魅力です。他の一般的な屋根材に比べ、真夏の屋根表面温度の上昇を大幅に抑制します。試験では断熱材無しの金属屋根と比べて屋根温度上昇を約25℃、スレート系屋根と比べて約22℃も低減したデータがあり、室内の冷房効果維持にも貢献します。その結果、夏場でも夜遅くまで続く屋根裏の熱こもりが緩和され、冬場も保温性が向上したとの報告があります。実際に「瓦屋根のときより夏の暑さから解放され、冬の寒さも和らいだ。冷暖房の効きが良くなった」との利用者の声もあり、省エネ効果・快適性の点で評価されています。
さらに、重量が非常に軽いことも重要なメリットです。横暖ルーフを含む金属系屋根材は瓦やスレートに比べて圧倒的に軽量で、建物構造への負担を大幅に減らせます。1㎡あたりの重量は横暖ルーフで約5〜7kg程度しかなく(1枚あたり約3.7kg、スレート屋根の約1/4、陶器瓦の1/10前後という驚くべき軽さです。このため耐震性能にも優れており、屋根を軽くすることで地震時の建物揺れを小さくできる効果があります。実際に「瓦から横暖ルーフに替えたら地震時の揺れが小さく感じられた」という証言もあります。軽量な屋根材は建物への荷重負担が減り、経年による構造劣化リスクも抑えられるため、耐震補強や古い家のリフォームにも適しています。
また、横暖ルーフは金属屋根でありながら遮音性にも配慮されています。裏打ちの断熱材がクッションとなり、雨粒の衝撃音を緩和してくれるため、従来のトタン屋根ほど雨音が気にならないとされています。実際、利用者からも「豪雨時に多少音はするがすぐ慣れ、気にならないレベル。むしろベランダの屋根の雨音の方が大きいくらい」といった声があり、十分許容できる範囲との評価です。
加えて表面塗装にも遮熱顔料を含む高機能塗料を用いることで、紫外線による色あせを防ぎ美しい外観を長期間維持する効果もあります。
品質面ではメーカーの長期保証に加え、施工する業者側からの信頼性も高く、「性能が高く品質が安定している」「断熱性能が金属屋根製品の中でトップクラス」「耐用年数が長く費用対効果が高い」とプロも押す製品です。実際、屋根工事業者がガルバリウム鋼板を提案する際には横暖ルーフを第一候補に挙げることも多く、「当社でもお客様に強いご希望がなければ横暖ルーフをご提案しています」という声もあるほどです。総じて横暖ルーフは「軽いのに頑丈で長持ち、さらに夏涼しく冬暖かい」というバランスの取れたメリットを持ち、リフォームにも新築にも安心して使える屋根材として評価されています。
デメリット
一方、横暖ルーフにも留意すべき点・デメリットがあります。まず指摘されるのは初期費用の高さです。横暖ルーフの材工一式の価格は一般的な他の屋根材に比べて割高です。製品グレードや施工内容にもよりますが、1㎡あたり約7,000~10,000円程度とされ、これは同じ金属屋根でも断熱材なしのガルバリウム鋼板(立平葺きなど)の5,000円台からある相場より高価な設定です。一部の試算では「瓦よりも高い初期費用」と表現されることもあります。実際の工事では足場仮設費なども別途かかるため、一般住宅の屋根全体を横暖ルーフで葺き替えると数十万円~百数十万円のまとまった費用が必要になります。しかし、この点については「耐久性や断熱性が高く、補修・塗り替えの頻度が少なくて済むことを考えれば、長期的にはコストパフォーマンスの高い製品」と評価する見方もあります。初期投資は大きいものの、その後のランニングコスト削減で元が取れるという考え方です。
次に、施工条件の制約もデメリットです。横暖ルーフを施工できる屋根の勾配(傾斜角)には下限があり、メーカーでは2.5寸(約14度)以上の勾配が必要とされています。そのため、陸屋根(ほぼ平らな屋上)や勾配の緩い屋根には原則として使用できません。緩勾配屋根では雨水が排水しきれず金属継ぎ目から漏水する恐れがあるためで、該当する場合は防水シートを併用した防水工法や他の材料を検討する必要があります。この制約は横暖ルーフに限らず一般的な金属横葺き材に共通の注意点です。
また、材質上金属であることの宿命として、塗装表面に傷が付いたり塩分・汚れが付着したまま放置すると、その箇所から錆びが発生するリスクがあります。ガルバリウム鋼板自体は非常に錆びに強いとはいえ、「金属である以上、経年での腐食の可能性から完全には逃れられない」と指摘する声もあります。特に海岸に近い地域では塩害による金属腐食が心配されますが、横暖ルーフの場合、メーカー保証で海岸500mまで塩害保証対象とされるなど対策は講じられています。それでも錆を防ぐためには定期的な点検と早めのタッチアップ塗装などメンテナンスが重要となります。この点、陶器瓦であれば塗装が剥げる心配も無く錆の概念もないため、「瓦は何十年経っても素材自体は劣化しない」強みがあります。横暖ルーフでもフッ素樹脂塗装のプレミアムモデルなら塗膜劣化をかなり抑えられますが、塗装寿命が永年というわけではない点は認識しておきましょう。
そのほか、遮音性の違いもあります。たとえば雨音については断熱材なしのトタン屋根に比べれば静かとはいえ、厚みのある瓦屋根に比べれば音は伝わりやすい傾向です。(もっとも前述の通り実用上は気にならないレベルとの声も多いです)。
外観に関しても、フラットでシンプルな横暖ルーフの外観はモダンな住宅にはマッチしますが、重厚感のある和風住宅で用いると「家全体のデザインに違和感があった」「一文字瓦のような高級感はさすがにない」といった指摘もあります。もっとも、横暖ルーフ自体も艶消しの落ち着いたカラーやグラデーション塗装の意匠モデル(αS窯変など)があり、従来の安価なトタン板のようなチープさは感じにくくなっています。とはいえ本物の瓦の質感と比べれば見栄えが劣ると感じる向きもあるでしょう。
総じて横暖ルーフの欠点は、「高性能ゆえに価格が高い」「金属ゆえに錆や強風・緩勾配に注意」「厚みが薄いゆえ瓦ほどの重厚感や遮音性はない」とまとめられるでしょう。
施工性 (軽さ・工事のしやすさ・工期)
横暖ルーフの施工は、新築時に下地の野地板に直接葺く場合と、リフォーム時に既存屋根の上から被せるカバー工法(重ね葺き)の場合があります。特にリフォームでは古いスレート屋根やトタン屋根の撤去処分費を省けるカバー工法が多用されます。ここでは一般的なカバー工法での施工手順を紹介します(既存屋根の劣化が激しい場合や瓦屋根からの葺き替えの場合は、一度全て撤去してから新設する「葺き替え工法」となります)。
施工手順の例(カバー工法)
- 手順1.既存屋根付属部材の撤去: まず既存屋根の棟板金(屋根の頂部のカバー材)や貫板(その下地の木材)、雪止め金具などを取り外します。既存の屋根材本体(スレート瓦など)は撤去しないため、必要最小限の解体で済みます。この工程により、屋根表面をフラットな状態に整えます(瓦屋根の場合は瓦を全て撤去する必要があります)。
- 手順2.防水シート(ルーフィング)の設置: 下地調整後、屋根一面に改質アスファルトルーフィングシートなどの防水シートを新たに張っていきます。これは万一屋根材の継ぎ目から雨水が入り込んでも建物本体に雨漏りさせない最後の防水層となる重要な工程です。古い屋根にも元々ルーフィングはありますが、経年劣化しているため新しいシートを重ね張りして防水性を確保します。
- 手順3.役物の取り付け: 続いて軒先やケラバ(妻側端部)など屋根周辺部に板金役物と呼ばれる部材を取り付けます。これは雨仕舞(排水処理)のための部材で、軒先水切りやケラバ水切りなどが該当します。屋根材本体を張る前に周囲の縁取り部分を先行して施工し、防水シートの端部もしっかりカバーします。
- 手順4.横暖ルーフ本体の施工: 屋根面に横暖ルーフの本体パネルを一枚一枚施工していきます。横暖ルーフは長さ3m程度の細長い金属パネルで、これを軒先側から順にビス留めして重ねていきます(横葺き)。パネル同士はインターロック方式で継ぎ目を重ね合わせるため、ビスが露出せず雨水が内部に浸入しにくい構造です。適切に施工すれば重ね部分からの雨漏りリスクは極めて低く、台風などでも雨水をシャットアウトできます。
- 手順5.棟の取り付け: 屋根の頂上部(棟)に新しい貫板(下地木材)を固定し、その上から棟包み板金(棟トタン)を被せてビス留めし、棟部分を仕上げます。
以上が標準的な流れです。
既存屋根を撤去せず上から被せるカバー工法は、廃材処分が大幅に減るため工期・費用を抑えられるのがメリットです。実際の工事期間は家の大きさや天候にもよりますが、一般的な戸建住宅(延床30坪前後)なら約4〜7日程度が目安です。
例えば、屋根面積約40㎡のスレート屋根に横暖ルーフをカバー工事し、工期4日、費用約110万円(税込、足場代込み)で完了します。葺き替え工法(既存撤去あり)の場合は既存材の撤去と処分に余分な手間と日数がかかるため、概ね工期は+3〜4日、費用も廃材処理費などが加算されます。
ただし、下地の状態次第ではカバー工法が適用できないケース(野地板の腐食が激しい等)もあり、その場合は撤去・下地補修後に新設となります。施工は専門業者が行いますが、横暖ルーフはガイドライン施工法が確立されており、適切な手順を踏めば比較的スムーズに施工可能です。

メンテナンス性
横暖ルーフは耐久性の高い屋根材ですが、長持ちさせるには定期的な点検・メンテナンスが欠かせません。適切な維持管理を行えば屋根の美観や機能を良好に保つことができますが、放置すれば屋根材だけでなく建物全体の寿命を縮める恐れがあります。基本的な方針として、日常点検は年に1回程度、そして専門業者による定期点検を5年に一度程度行うのが望ましいとされています。日常点検といっても素人が高所に上るのは危険なため、地上から双眼鏡などで屋根表面の異常を観察したり、業者の点検サービスを利用するとよいでしょう。特に台風や地震、大雪の後には臨時で屋根の様子を確認し、異常があれば早めに対処することが大切です。
清掃としては、屋根表面に落ち葉や土埃が堆積すると雨水の流れを妨げ錆の原因にもなるため、状況に応じて掃き掃除や高圧洗浄で汚れを落とします。ただし高所作業は危険を伴うため、決して無理はせず専門の業者に依頼してください。
点検でチェックすべきポイントは、塗装の剥がれや退色、表面のサビ、小さな凹みや変形、継ぎ目のシーリング劣化などです。もし部分的な傷や塗膜の劣化が見られた場合は、早めにタッチアップ塗装や補修を行うことで被害の拡大を防げます。小規模なサビであればケレン(研磨)して防錆塗料を塗る、シーリングのひび割れは打ち替える、といった部分補修で対応可能です。それでも劣化が進行して屋根材に穴あきが生じたり、大きな凹みができた場合には、その板金パネルごと部分的な差し替えや補修板金の当て板処置をするケースもあります。
横暖ルーフの場合、表面塗装グレードによってメンテナンス周期の目安が異なります。ポリエステル塗装の標準モデルでは10年目くらいで塗膜のツヤが失われ始めるため、発売後15年~塗装を検討すると良いでしょう。
フッ素樹脂塗装のプレミアムモデルであれば30年前後まで塗り替え不要ですが、25年を超えるとさすがに塗膜性能が低下してくるため、やはり適切な時期に再塗装すれば以降さらに長く寿命を延ばせます。
再塗装の際は下地処理(高圧洗浄やケレン作業)を丁寧に行い、金属屋根対応の防錆プライマー+上塗り2回程度を行います。使用する塗料にもよりますが、再塗装費用の目安は1㎡あたり数千円(足場代別途)です。
長期的な目安としては、横暖ルーフは約25〜30年の耐用年数を見据えた製品です。適切にメンテナンスすれば30年以上もちます。
これらを踏まえ、横暖ルーフを設置した場合は「年間1回の自主点検+5年ごとの専門点検+15年~25年目で塗装」というサイクルを計画しておくと安心です。
なお、定期点検や部分補修の際には足場を組まないケースも多いですが、塗装や葺き替えなど大がかりな作業時には再度足場設置が必要になる点も念頭に置いてください。
他の屋根材との比較
横暖ルーフの価格帯は他の屋根材と比べて高めですが、耐久性やメンテナンスコストまで含めて検討する必要があります。ここでは代表的な屋根材について初期費用(材料+施工費)と耐用年数、そしてメンテナンスコストの目安を比較します。
価格帯
- 横暖ルーフ(ガルバリウム鋼板+断熱材): 初期費用は施工費込で約7,000~10,000円/㎡が目安です(グレードにより変動)。メーカーによる耐用年数は約25〜30年程度。15〜20年経過した頃に再塗装(費用数千円/㎡程度)を行えば30年近く使用可能です。トータルでは30年間で再塗装1回程度と軽微な補修のみで済むケースが多く、長期的なコストパフォーマンスは高いと評価されています。
- スレート(コロニアル)屋根: 初期費用は5,000~8,000円/㎡程度と安価で、デザインバリエーションも豊富なため新築でも多く採用されます。ただし耐用年数は約20〜25年程度で、10年前後で塗装が色あせてくるため10〜15年毎に塗り替えが必要です(1回あたり数十万円規模)。適切にメンテナンスすれば30年程度使用できる場合もありますが、放置すると割れや苔の発生で20年ほどで葺き替え時期を迎えます。ランニングコスト(塗装費用)を含めると、初期費用の安さほどには総額の差は大きくなくなる傾向です。
- 瓦(陶器瓦)屋根: 初期費用は12,000~15,000円/㎡程度と高価ですが、耐用年数は50年以上と最も長くなります。焼き物の瓦自体は塗装不要で半永久的に素材性能が維持され、色あせもしにくいです。定期的な塗装は不要ですが、地震で割れたりズレたりした場合の部分補修費用(都度数万円)がかかる場合があります。棟瓦の漆喰補修など細部のメンテナンスを適宜行えば、半世紀~100年に渡り葺き替え不要なケースもあります。初期費用は高いものの、耐用年数を考えれば長期コストは必ずしも高くありません。ただし瓦は重量があるため耐震補強費用(構造計算による梁や柱の強化)が別途発生する場合があります。
- ガルバリウム鋼板屋根(断熱材なしの一般的な金属屋根): 初期費用は5,000~8,000円/㎡程度で、スレートと同程度かやや安いこともあります。メーカーによる耐用年数は約20〜30年で、横暖ルーフと同素材なら寿命自体は30年以上期待できます。ただし断熱材が無いため遮熱・遮音性能が低く、居住性を考えると裏側に別途断熱材施工をしたり、定期塗装も15年ごとに必要となります。メンテナンスを怠るとサビが早期に進行する恐れがあるので、トータルでは横暖ルーフより維持管理費がかさむ場合もあります。初期費用を抑えたい場合には有力ですが、断熱性能など機能面では見劣りします。
- アスファルトシングル(アスファルト屋根): 初期費用は6,000~9,000円/㎡程度で、ガルバリウム鋼板とスレートの中間くらいです。ガラス繊維基材にアスファルトを染み込ませたシート状の屋根材で、軽量で施工も容易なため北米などで普及しています。耐用年数は商品グレードによりますが約20〜30年程度です。表面の石粒が経年で剥がれると防水性能が落ちるため、15~20年を過ぎたら葺き替えを検討します。塗装メンテナンスは基本不要ですが、強風で一部剥がれた場合の補修が必要になることがあります。初期費用とメンテナンス負担のバランスは良いですが、日本では台風での飛散リスクなどから金属屋根ほど主流ではありません。
以上を踏まえると、横暖ルーフは初期費用こそ高めなものの長寿命かつメンテナンス頻度が少ないため、総合的なコストパフォーマンスは良好です。逆にスレートは初期費用が安い反面、塗り替えなど維持費がかかるため長期的に見ると割安感が薄れます。瓦は初期費用・重量のハードルがありますが耐用年数では群を抜いており、長期で住む前提なら有力です。ガルバリウム鋼板(無断熱)は安価で耐久性もそこそこありますが、快適性や保証面で横暖ルーフに劣ります。アスファルトシングルは費用バランスは良いものの耐久性で横暖ルーフに及ばず、近年は金属屋根材の台頭で採用例が減っています。
以下に各種屋根材の初期費用・メーカーによる耐用年数・主なメンテナンスの比較表を示します。
屋根材 | 初期施工費用(目安) | 耐用年数(目安) | 主なメンテナンス |
---|---|---|---|
横暖ルーフ (断熱一体金属) | 7,000~10,000円/㎡ | 約25~35年 | 15~20年目に再塗装 細部補修・点検は適宜 |
化粧スレート (コロニアル) | 5,000~8,000円/㎡ | 約20~25年 | 10~15年毎に塗装 割れ時に部分交換 |
陶器瓦 | 12,000~15,000円/㎡ | 50年以上 | 塗装不要 割れ時に部分補修・漆喰補修 |
ガルバリウム鋼板 (断熱材なし) | 5,000~8,000円/㎡ | 約25~35年 | 10~15年毎に塗装 サビ発生時補修 |
アスファルトシングル | 6,000~9,000円/㎡ | 約20~30年 | 基本塗装不要 剥がれ時に部分補修 |
※上記費用・年数はあくまで一般的な目安です。製品グレードや施工条件、気候環境によって変動します。また、いずれの屋根材も定期点検と適切なメンテナンスが寿命を延ばす点は共通しています。
評判・口コミ
実際に横暖ルーフを使用した人の声や、施工した職人・業者からの評判を紹介します。総合的に見ると、横暖ルーフ利用者の満足度は高く、「リフォームして良かった」という意見が多いようです。
まず、多く挙げられるのが前述の断熱効果に関する体感的な評価です。「夏の厳しい暑さが和らいだ」「真夏でも2階が以前ほど暑くならない」「冬の朝、室内の冷え込みがマシになった」といった声が聞かれます。特に真夏の夜間、以前は瓦屋根に熱がこもって寝苦しかった家でも、横暖ルーフに替えてからは屋根が放射する熱が減り涼しく感じられるようになったという体験談があります。
加えて「エアコンの効きが良くなり光熱費が下がった気がする」と、断熱リフォームとしての効果を実感する声もあります。
耐震性についても、ある方は東日本大震災で瓦屋根が落下したのを機に2階を横暖ルーフに葺き替えたところ、「同程度の地震でも揺れが小さく感じられるようになった」と述べています
このように「軽くて薄い屋根」に替えた恩恵として、地震時の安心感が得られたとの評価が見られます。
防音性に関する口コミでは、「雨音は多少聞こえるが、以前のスレート屋根と大差ない」「むしろカーポートの屋根の音の方が気になるくらい」との意見があり、断熱材一体型ゆえに心配していたほどうるさくなかったという声が多いようです。
ただ、中には「やはり瓦と比べれば雨の音はするので最初は気になった」という人もおり、感じ方には個人差があります。しかしその方も「すぐに慣れて気にならなくなった」としており、極端なデメリットとは捉えられていません。
見た目・デザインについての声としては、「和瓦から横暖ルーフに変えたら家の雰囲気がモダンになった」「すっきりした見た目で満足」というポジティブな意見と、「やはり昔ながらの瓦の重厚感と比べると見劣りする」というネガティブな意見の双方があります。
前者は現代風のスタイルにマッチすると評価し、後者は家全体のデザインとの調和次第とも言えます。和風住宅では瓦の風合いを好む声も根強く、「デザインにこだわりがないのであれば初期費用の安いスレートでも十分」という意見もあるため、外観に関しては好みが分かれる部分です。ただ横暖ルーフにもカラーバリエーションが複数あり、落ち着いたマット調の黒やブラウン、グリーンなど選択できます。実際に施工した家の写真を見ると、遠目には一見して金属屋根と分からないくらい住宅になじんでいる例も多く、違和感は感じにくいという声もあります。
耐久性やメンテナンス性に関する評価では、まだ施工後数年~十数年のユーザーが多いため長期使用感はこれからですが、「今のところ不具合は全くない」「色あせも無く綺麗な状態を保っている」という声がほとんどです。
先述の通り遮熱塗装のおかげで塗膜の耐候性が高く、数年程度で見た目が変わることはありません。雨漏り等のトラブル報告もほとんど見当たらず、施工さえ適切なら信頼性は高いと言えます。
施工業者からの評判も上々で、「横暖ルーフは施工性が良く扱いやすい」「寸法精度が安定していて綺麗に仕上がる」との声があります。また、横暖ルーフシリーズはメーカー側の生産も安定しており流通面でも信頼されています。総じて「値段相応の高品質で満足度が高い屋根材」との評価を得ていると言えるでしょう。
他の屋根材との比較
後に、横暖ルーフと他の代表的な屋根材(スレート、瓦、ガルバリウム鋼板、シングル屋根など)との違いを整理します。それぞれの屋根材は一長一短があり、家の構造や立地、予算、求める性能によって適性が異なります。
- 横暖ルーフ vs スレート瓦: スレート瓦(化粧スレート)は現在最も普及している屋根材で、安価で施工しやすい反面、耐久性では横暖ルーフに劣ります。スレートは経年劣化で割れや欠けが生じやすく、定期的な塗装が必要ですが、横暖ルーフは割れる心配がなく遮熱性能も高いため、メンテ費用を考慮すれば長期的に有利です。一方、初期費用はスレートの方が大幅に安い(半額程度)ので、予算重視で性能にこだわらない場合はスレートも選択肢です。またスレート瓦はカラーバリエーションやデザインが豊富で意匠面の選択肢が広い利点があります。総じて「初期コスト重視ならスレート、耐久・断熱重視なら横暖ルーフ」と言えるでしょう。
- 横暖ルーフ vs 瓦(陶器瓦): 瓦は伝統的な屋根材で耐久性・耐候性ではトップです。塗装不要でメンテナンスはほぼ部分補修のみ、100年以上持つ例もあります。ただし重量が非常に重く、地震時の落下リスクや建物への負荷が大きい点がデメリットです。横暖ルーフなら瓦の約1/10の軽さで耐震性を飛躍的に高められるため、耐震性能を重視する家には向いています。また瓦は熱を蓄える性質があり夏場は日没後も放熱で屋根裏が暑くなる傾向がありますが、横暖ルーフは遮熱性が高く夏の室温上昇を抑えます。初期費用は瓦の方が高額になるケースが多いですが、近年では高機能な横暖ルーフの方が瓦より高価という指摘もあり、費用面はケースバイケースです。デザイン面では、和風建築にはやはり瓦の風格がマッチしますが、横暖ルーフも落ち着いた色調を選べば和モダンな雰囲気に調和します。つまり「伝統美・耐用年数を取るなら瓦、軽量性・断熱性を取るなら横暖ルーフ」という選択になります。耐震補強が難しい古い木造住宅をリフォームする場合などは横暖ルーフが適していますし、新築でも瓦屋根の重厚感が不要であれば横暖ルーフは有力候補です。
- 横暖ルーフ vs 一般ガルバリウム鋼板: 同じ金属屋根でも、断熱材なしのガルバリウム鋼板と比較すると、横暖ルーフは断熱・遮熱性能で圧倒的に優れています。一般のガルバリウム鋼板屋根は薄い金属板一枚のため防音・断熱性が低く、裏側に断熱材を追加施工しないと夏冬の快適性で劣ります。耐久性そのものは素材が同じであれば大差ありませんが、横暖ルーフは継ぎ目構造が工夫されており雨仕舞性能が高いこと、そしてメーカー保証が長期である点で有利です。価格は一般ガルバより横暖ルーフの方が高いですが、最近は他社製の断熱一体型金属屋根(アイジー工業の「スーパーガルテクト」等)も人気で、金属屋根は高機能化の流れにあります。したがって「とにかく安く金属屋根にしたい」のでなければ、断熱一体型である横暖ルーフを選ぶ価値は高いでしょう。逆に物置や車庫など居住性不要の建物にはシンプルなガルバリウム鋼板屋根で十分です。
- 横暖ルーフ vs アスファルトシングル: アスファルトシングルは軽量で施工性が良く、デザインも洋風住宅に合うなどの長所があります。価格は横暖ルーフより安めで、瓦よりも軽量なので耐震上も問題ありません。ただ耐久性では横暖ルーフに及ばず、寿命が来ると表面の石粒剥離や割れで防水機能が低下するため、葺き替えが必要になります。メンテナンス頻度自体は横暖ルーフと大差ないものの(10~20年スパン)、夏の遮熱性は横暖ルーフに劣り、真夏の屋根温度はシングルの方が上がりやすい傾向です。防火性能はどちらも認定品なら問題ありません。シングルはカラフルな色調や洋瓦風デザインも可能で意匠性で優れますが、近年の住宅ではガルバリウム鋼板系の採用率が上がっており、シングルはややニッチになっています。総合性能では横暖ルーフの方が上と言えるでしょう。
横暖ルーフが向いている方
どんな家に向いているか?
横暖ルーフは軽量で高機能なため、特に以下のようなケースに向いています。
- 古い家のリフォーム: 既存の屋根が劣化しているが、構造耐力上瓦のような重い屋根は避けたい場合。横暖ルーフのカバー工法で荷重を増やさずに屋根性能を向上できます。耐震性を損なわないどころか向上させられるため、昭和期の木造住宅の改修に適します。
- 寒暖差の大きい地域: 夏の猛烈な暑さや冬の厳しい寒さに悩む地域では、遮熱・断熱性能の高い横暖ルーフが冷暖房費の節約につながります。屋根断熱を強化したいが内側から断熱工事するのは難しい場合、横暖ルーフに葺き替えるだけで断熱リフォーム効果が得られます。
- メンテナンス頻度を減らしたい: 将来にわたり頻繁な屋根塗装や補修をしたくない方に向いています。横暖ルーフなら長期保証が付いており、塗り替えサイクルも長めで済みます。多少初期費用が高くても、生涯コストを抑えたい方にマッチします。
- 屋根の形状が複雑でない家: 横暖ルーフは長尺の金属板材なので、シンプルな切妻屋根や片流れ屋根で特に施工効率が良いです。緩やかな曲面屋根やドーム形状などには適用できませんが、一般住宅のほとんどは問題なく使用できます。
逆に、伝統的景観を厳守すべき寺社仏閣や、非常に勾配の緩い屋根などは横暖ルーフの出番ではありません。そのような場合は瓦や防水シート一体の屋根が選ばれます。それぞれの屋根材に得意不得意がありますが、横暖ルーフは現代の戸建住宅において総合力の高い屋根材と言えます。
耐久性・軽さ・断熱性と三拍子揃っているため、「家を長持ちさせたい」「快適さと省エネを両立したい」「地震に備えたい」という要望に応えられる屋根材として、検討する価値は十分にあるでしょう。住宅の状況や予算を踏まえ、専門業者とも相談しながら最適な屋根材を選んでください。
コメント