屋根塗装の遮熱塗料は本当に効果があるのか?住宅に取り入れるメリットと注意点

9月に入っても、全国的に厳しい残暑が続いています。朝晩は多少涼しくなったとはいえ、日中の日差しはまだまだ強く、家の中、特に2階の部屋が蒸し暑く感じられる方も多いのではないでしょうか。
「今年の夏は本当に暑かった・・・」「来年こそは少しでも快適に過ごしたい!」
そうお考えの方に、今回のコラムでは屋根の暑さ対策の一つとして「屋根の遮熱塗料」についてご紹介します。
遮熱塗料って本当に効果があるの?」という疑問にお答えすべく、その仕組みやメリット・デメリットを、屋根修理の専門家がわかりやすく解説します。

屋根塗装

まず、なぜ夏になると屋根が熱くなるのか、その仕組みを簡単に見ていきましょう。
太陽から降り注ぐ光には、目に見える可視光線と、目に見えない赤外線紫外線が含まれています。特に、屋根を熱くするのはこの赤外線(近赤外線)です。屋根材が赤外線を吸収すると、それが熱に変わり、その熱が屋根裏を通して室内に伝わることで、部屋の温度が上がってしまうのです。

夏になると屋根が熱くなる

一方、遮熱塗料は、この近赤外線を効率よく反射するように設計された特殊な塗料をです。一般的な塗料が太陽の熱を吸収してしまうのに対し、遮熱塗料はまるで鏡のように熱を跳ね返すことで、屋根自体の温度上昇を抑える効果があります。
また、屋根材の温度上昇を抑えることで、屋根裏の温度や室内温度も下がり、冷房効率を高めることにつながります。

日本ペイント 遮熱塗料「サーモアイシリーズ」
[画像]日本ペイント
遮熱塗料「サーモアイシリーズ」カタログより

遮熱塗料を使うことで、具体的にどんな良いことがあるのでしょうか?

これが遮熱塗料の最大のメリットです。遮熱塗料を塗ることで、屋根表面の温度が最大で15〜20℃も下がると言われています。屋根裏への熱の侵入が減るため、部屋の温度が上昇しにくくなり、特に2階の部屋の暑さが大幅に緩和されます。エアコンに頼りきりだった夏も、快適に過ごせるようになるでしょう。

室内温度の上昇を抑え、快適な暮らしに

室内温度の上昇が抑えられるということは、エアコンの使用頻度や設定温度を下げられるということ。冷房の効きが良くなるため、電気代の節約効果も期待できます。

冷暖房費節約

屋根は、夏の厳しい暑さによって常に劣化の危険にさらされています。熱による膨張と収縮を繰り返すことで、ひび割れや反りが発生しやすくなるのです。遮熱塗料で屋根の温度上昇を抑えることは、屋根材にかかる負担を軽減し、結果として屋根自体の寿命を延ばすことにもつながります。

屋根材の劣化を防ぐ

良いことばかりのように聞こえる遮熱塗料ですが、デメリットや注意すべき点もあります。

遮熱塗料は、通常の塗料に比べて少し高価です。
しかし、電気代の節約や屋根材の長寿命化といった長期的なメリットも考慮して検討する必要があります。

遮熱塗料は費用は一般的な塗料よりも高め

遮熱塗料の効果は、塗料の色に大きく左右されます。太陽の光を吸収しやすい黒や濃いグレーといった濃色は、熱を反射する効果が低くなります。一方、白や薄いグレー、クリーム色といった淡色は、高い遮熱効果を発揮します。 「どうしても濃い色の屋根にしたい!」というこだわりが場合は、色の選択肢が狭まることを知っておきましょう。

塗料の色によって効果が違う

遮熱塗料は、屋根に付着した汚れ(ホコリ、排気ガス、コケなど)によって遮熱効果が低下します。汚れが塗膜の表面を覆ってしまうと、太陽の光を反射できなくなるからです。そのため、定期的な清掃や、汚れにくい低汚染性を持つ遮熱塗料を選ぶことも重要です。

汚れによって遮熱塗料の効果が薄れる

遮熱塗料の効果を最大限に引き出すためには、色選びが非常に重要です。
太陽光に含まれる赤外線は、すべての色を同じように反射するわけではありません。一般的に、白や淡い色は熱を反射する力が強く、黒や濃い色は熱を吸収しやすいという性質があります。

塗料の色選び
  • 淡色(白、クリーム、グレーなど)
    可視光線と近赤外線の両方を効率よく反射します。特に白は最も反射率が高く、熱をほとんど吸収しません。そのため、高い遮熱効果を期待できます。
  • 濃色(黒、濃紺、濃いグレーなど)
    可視光線を吸収するため、熱を溜め込みやすい性質があります。遮熱塗料であっても、濃い色は淡色に比べて近赤外線の反射率が低くなります。結果として、期待するほどの遮熱効果が得られない場合があります。

「屋根の色を変えたくない」「家全体のデザインに合わせたい」という方もいると思いますが、夏の暑さ対策を重視する場合は、できるだけ淡い色を選ぶことをおすすめします。
もし、どうしても濃い色にしたい場合は、以下の点を必ず確認しましょう。

  • メーカーの反射率データ
    塗料メーカーは、それぞれの色の反射率データを公開しています。濃色を選ぶ際は、その塗料の「遮熱性能」と「色の反射率データ」を必ず確認し、どの程度の効果が期待できるのかを把握することが重要です。
  • 遮熱性能に特化した濃色
    最近では、濃色でも高い遮熱性能を持つ製品も開発されています。特殊な顔料を配合することで、可視光線は吸収しても、熱の元となる近赤外線だけを効率よく反射する塗料もあります。
日本ペイント 遮熱塗料サーモアイシリーズ カラーラインナップ 反射率
[画像]日本ペイント
遮熱塗料「サーモアイシリーズ」カタログより

色選びは、遮熱塗料の効果を左右する重要な要素です。見た目だけでなく、機能面も考慮して、最適な色を選びましょう。

「費用が少し高くなるなら、本当に元が取れるのかな・・・?」
遮熱塗料を検討する上で、誰もが気になるのがその費用対効果でしょう。結論から言うと、遮熱塗料を使うべきかどうかの判断は、ご自宅の状態やライフプランによって異なります。

屋根塗装
  • 冷房効率を上げたい方
    夏の暑さに悩んでいて、少しでもエアコン代を節約したいと考えている方。
  • 屋根が金属製の方
    金属屋根(ガルバリウム鋼板など)は熱を伝えやすいため、遮熱塗料の効果をより強く実感できます。
  • 屋根材の劣化を少しでも遅らせたい方
    遮熱塗料は、熱による屋根材への負担を軽減するため、屋根の寿命を延ばす効果も期待できます。

遮熱塗料は、一般的な塗料と比較して1平方メートルあたり数百円から数千円高くなるのが一般的です。一見すると高価に感じられますが、前述した「遮熱塗料のメリット」に対する費用対効果があるのかどうか?という点について、総合的に考慮することが重要です。

費用対効果

遮熱塗料は、夏の厳しい暑さから家を守り、エアコンの使用を抑えることで、目に見える形で電気代を削減します。特に、日中に在宅する時間が長いご家庭や、常に2階の部屋が暑く、エアコンをフル稼働させているご家庭では、その効果をより強く実感できます。
例えば、屋根の表面温度を15℃下げることができれば、室温は2〜3℃下がると言われています。これによって、エアコンの設定温度を上げたり、運転時間を短くしたりできるため、年間の冷房費が大きく変わってきます。長期的な視点で見れば、電気代の節約効果で塗料代の負担を十分に軽減できるケースも少なくありません。

遮熱塗料は、ただ涼しくなるだけでなく、塗膜そのものを熱による劣化から守るという重要な役割も担っています。一般的な塗料は、太陽の熱を吸収して膨張と収縮を繰り返すことで、ひび割れや剥がれが起きやすくなります。一方、遮熱塗料は熱を反射するため、塗膜にかかる負担が少なく、劣化を遅らせることができます。結果として、通常の塗料よりも再塗装までの期間が長くなり、将来的なメンテナンス費用を抑えることにつながります。

遮熱塗料は、金属屋根の特性と非常に相性が良く、熱を反射する塗料を塗ることで、屋根材自体の温度上昇を劇的に抑えることができ、その効果をより強く実感できます。見た目も美しく保ちながら、夏の暑さ対策を同時に行えるため、金属屋根を使用しているご家庭には特に費用対効果が見込めるでしょう。

ガルバリウム鋼板
金属屋根(ガルバリウム鋼板)

遮熱塗料のメリットは、コストだけでは語れません。最も大きな価値は、「住まいの快適性が向上する」ことです。
寝苦しい夜が減ったり、日中の暑さで集中力が途切れることがなくなったりと、日常の暮らしが快適になります。特に、ご高齢の方や小さなお子さんがいるご家庭では、熱中症対策としても非常に有効です。この「快適性」というメリットは、金額には換算できない大きな価値だと言えるでしょう。

遮熱塗料は、建物の種類や用途によって、その効果を最大限に発揮できます。以下のような建物には、遮熱塗料の使用を特におすすめします。

金属は熱伝導率が高く、太陽の熱を非常に吸収しやすい素材です。そのため、金属屋根の建物は、夏になると屋根が想像以上に高温になり、屋根裏への熱の伝わりも大きくなります。
遮熱塗料は、この金属屋根の特性と非常に相性が良いです。熱を反射する塗料を塗ることで、屋根材自体の温度上昇を劇的に抑えることができ、その効果をより強く実感できます。見た目も美しく保ちながら、夏の暑さ対策を同時に行えるため、高い費用対効果を期待できます。

ガルバリウム鋼板屋根
金属屋根(ガルバリウム鋼板)

屋根の真下に広がる空間を持つ建物は、太陽の熱の影響を直接受けやすいため、遮熱塗料の効果を特に実感できます。

1階から天井までが繋がった開放的な吹き抜けは、暖かい空気が上に集まる性質(熱対流)のため、2階部分や天井付近に熱が溜まりやすくなります。遮熱塗料で屋根からの熱の侵入を抑えることで、室内の熱ごもりを防ぎ、全体的な冷房効率が向上します。

吹き抜け

屋根の傾斜をそのまま活かした勾配天井は、高い開放感がある反面、屋根からの熱が直接室内に伝わり、夏場は非常に暑くなりやすいです。遮熱塗装によって屋根表面の温度を下げることで、部屋の体感温度が大きく変わり、快適に過ごせるようになります。

天井勾配

趣味の部屋や収納スペースとして利用されることの多い屋根裏部屋(ロフト)は、屋根と天井が近く、熱がこもりやすい構造です。遮熱塗料を塗ることで、この部屋の温度を下げ、より快適に利用できるようになります。

ロフト

工場や倉庫といった大規模な建物は、屋根の面積が非常に広く、熱がこもりやすい構造をしています。
遮熱塗料を塗ることで、室内の温度を数度下げることができ、従業員がより快適に作業できる環境を整えることができます。その結果として、作業効率の向上や、熱中症対策にもつながりますので、遮熱塗装をすることは一般住宅に比べると非常に大きな効果をもたらします。
また、倉庫に保管しているデリケートな製品(食品、精密機器など)を熱から守り、品質管理に役立つというメリットもあります。多くの人が集まる公共施設や作業工場では、冷暖房費の大きな負担を軽減することにも貢献するでしょう。

工場倉庫の屋根
工場の屋根

遮熱塗料は「夏の暑さ対策に効果的」というイメージが強い一方で、「冬は太陽の熱も反射してしまい、かえって寒くなるのでは?」という疑問を持つ方も少なくありません。
結論から言うと、一般住宅において遮熱塗料が冬の快適性に与える影響は限定的であり、「逆効果になる」と心配する必要はほとんどありません。

遮熱塗料は冬は寒いの?逆効果!?

まず、根本的な熱源である太陽のエネルギーが違います。冬は夏に比べて太陽高度が低く、日射のエネルギー量も大幅に少なくなります。屋根が受ける直射日光の強さ自体が弱いため、夏のように屋根温度が大きく上昇することはありません。そのため、遮熱塗料を塗ったからといって「室内が極端に寒くなる」ということはほぼありません。

冬の日射量は夏と比べて少ない

冬に室内が寒く感じる大きな要因は、屋根や外壁からの熱の逃げやすさにあります。暖かい空気は、熱伝導、対流、放射の3つの現象によって、外へと逃げていきます。

  • 熱伝導: 壁や屋根材を伝って熱が移動する現象。
  • 対流: 暖められた空気が上昇して外へ逃げる現象。
  • 放射: 熱が赤外線として放射され、窓などから外へ移動する現象。
室内の暖かさは屋根よりも断熱性能で決まる

遮熱塗料は、夏の熱(近赤外線)を反射する効果はありますが、冬の暖房熱が外に逃げるのを防ぐ効果はありません。冬の室温は、断熱材の有無や性能が何よりも重要です。断熱材は熱の移動を物理的に遮断するため、冬の暖房効果を保つ上で決定的な役割を果たします。遮熱塗料は熱の「侵入」を防ぐためのものであり、熱の「流出」を防ぐ機能は持っていません。

ただし、以下のようなケースでは、ごくわずかに影響を感じることもあります。

  • 日射が強い地域
    冬でも比較的晴天が多く、日差しが強い地域では、屋根からの日射熱を多少なりとも期待しているご家庭もあります。
  • 南向きの大屋根
    太陽光を多く受ける南向きの大屋根では、日中の日差しによる暖まりが弱まる可能性があります。

しかし、これらのケースでも、その影響はごくわずかです。室内を暖かく保つためには、遮熱塗料の効果を気にするよりも、窓の断熱性能(二重サッシなど)や、壁・屋根の断熱材の性能を見直すことが圧倒的に優先されます。

複層ペアガラス

遮熱塗料は「夏の暑さ対策に特化した塗料」であり、冬の寒さを和らげる効果は期待できません。ただし、「逆効果になる」と心配する必要はなく、冬の室温は断熱材や窓性能でコントロールすることが基本です。
そのため、夏の暑さに困っている住宅には非常に有効ですが、「冬も夏も快適にしたい」という場合には、遮熱塗料だけでなく、屋根裏の断熱工事や換気システムとの組み合わせが重要になります。
遮熱塗料はあくまで「夏」の快適性を高めるための賢い選択肢の一つだと認識しておきましょう。

断熱材選びのポイント
夏の屋根暑さ対策に関してはこちらのコラム記事も参考にしてみてください。

屋根の遮熱塗料は、夏の厳しい暑さから家を守るための非常に有効な手段です。ただ単に屋根を塗り替えるだけでなく、太陽の熱を反射して屋根の温度上昇を抑えることで、室内の快適性を大きく向上させ、電気代の節約にもつながります。

ただし、その効果を最大限に引き出すためには、色選びが非常に重要です。白や淡い色は高い遮熱効果を発揮しますが、黒や濃い色は熱を吸収しやすいため、期待する効果が得られない場合があります。

「冬はかえって寒くなるのでは?」という心配はほとんどありません。遮熱塗料は熱を反射しますが、冬の室温は断熱材や窓の性能に大きく左右されるため、日常生活に悪影響を与えることはほとんどないでしょう。

遮熱塗料は万能ではありませんが、「夏の暑さ」という住まいの悩みを解決するための確かな一歩となります。
ご自宅の屋根の状態や構造、ライフスタイルに合わせて、遮熱塗装が本当に必要なメンテナンス方法かどうか、屋根修理・リフォームの専門業者に相談してみることをおすすめします。

屋根修理の匠ひおきでは、お客様の家の構造を踏まえて、屋根の状態をしっかりと診断し、最適なご提案をさせていただきます。
遮熱塗料、屋根塗装に関するご相談も、どうぞお気軽にお問い合わせください。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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