遮熱塗料と断熱材の違いとは?屋根の暑さ対策で失敗しないために

夏になると「2階が暑くて寝苦しい」「冷房が効きにくい」といった声をよく耳にします。これは単なる気温の高さだけが原因ではなく、屋根そのものが太陽の熱を大量に受けてしまうことが大きな要因です。特に日本の住宅は屋根と居住空間の距離が近いため、屋根が熱を溜め込むと、その熱が屋根裏を通して室内に伝わり、家全体の温度を押し上げてしまいます。

屋根の暑さ対策は「快適に暮らすため」だけではなく、「光熱費の節約」「家の寿命を延ばす」「家族の健康を守る」という多くのメリットをもたらします。

本記事では、その代表的な方法である遮熱塗料と断熱材の違いを整理し、それぞれの特徴を理解することで、住まいに合った最適な対策を見極めるためのヒントをご紹介します。

屋根が夏になると熱を帯びる大きな原因は、太陽光に含まれる「近赤外線」です。屋根材がこの近赤外線を吸収すると、そのエネルギーが熱に変わり、屋根裏から室内へと伝わってしまいます。その結果、2階の部屋が蒸し風呂のように暑くなるのです。

夏になると屋根が熱くなる

遮熱塗料は、この近赤外線を効率よく反射するように作られた特殊な塗料です。通常の塗料が熱を吸収してしまうのに対し、遮熱塗料はまるで鏡のように熱をはね返すため、屋根自体の温度上昇を抑えることができます。屋根表面が熱くならなければ、屋根裏や室内の温度上昇も抑えられ、冷房の効きが良くなるという仕組みです。

遮熱塗料の主なメリットは三つあります。
まず「室内を涼しく快適に保てること」。特に2階や屋根裏部屋の暑さが和らぎ、過ごしやすくなります。次に「冷房効率が上がり、電気代を節約できること」。そして「屋根材の寿命を延ばせること」。温度変化による膨張・収縮の負担が減るため、ひび割れや反りといった劣化を抑える効果も期待できます。

遮熱塗料に関してはこちらのコラム記事も参考にしてみてください。

日本ペイント 遮熱塗料「サーモアイシリーズ」
[画像]日本ペイント
遮熱塗料「サーモアイシリーズ」カタログより

このように、遮熱塗料は「屋根から入る熱を減らす」という発想で夏の暑さを和らげる方法です。

次の章では、同じ暑さ対策でもアプローチが異なる「断熱材」について見ていきましょう。

断熱材とは、屋根や壁、床などに施工して「熱の移動を遮る」ための建材です。遮熱塗料が“熱を反射する”のに対して、断熱材は“熱を通さない”役割を果たします。夏は外の熱が室内に伝わるのを防ぎ、冬は室内の暖かい空気が外へ逃げるのを防ぐことで、一年を通して快適な住環境を支える重要な存在です。

ニチハ「センタールーフの構造」

断熱材の仕組みは「空気の層」を利用しています。グラスウールや発泡ウレタンといった素材は無数の小さな気泡を含んでおり、この空気が熱を伝えにくいため、外からの熱を遮断し、内側の暖気も逃がさない効果を発揮します。

代表的な断熱材のひとつにスタイロフォームがあります。スタイロフォームは押出法ポリスチレンフォームという硬質断熱材で、軽量で水に強く、施工性にも優れています。厚み25㎜のスタイロフォームは、リフォームや屋根への敷き込みなどに取り入れられる断熱材です。

住宅リフォームの断熱補強として利用されるケースも多く見られます。ただし厚みが25㎜程度では「補助的な断熱効果」にとどまる場合があり、本格的に快適性を高めるには、より厚い断熱材や他の工法と組み合わせるのが理想です。

遮熱塗料が主に「夏の直射日光による暑さ」を軽減するのに対し、断熱材は四季を通じて室内温度を安定させます。
夏は外気温が35℃を超える日でも、断熱材が屋根や壁からの熱の侵入を遅らせ、室内温度上昇を緩やかにします。
冬は逆に、室内で暖めた空気が外へ逃げるのを防ぐため、暖房効率が上がります。とくに無断熱の住宅や築年数の古い家では、断熱材を加えるだけで「冬の底冷えがなくなった」といった声も多く聞かれます。つまり、断熱材は「夏対策」「冬対策」の両方をカバーできる万能な仕組みといえます。

室内温度の上昇を抑え、快適な暮らしに

外気の影響を受けにくくなることで、冷房や暖房の効率が格段に高まります。例えば、屋根裏にスタイロフォームを追加するだけでも、エアコンの稼働時間を短縮でき、年間の光熱費を数千円から数万円節約できるケースがあります。厚みのある断熱材を組み合わせれば、その効果はさらに大きくなります。

冷暖房費節約

高断熱の家は「省エネ住宅」や「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」といった評価基準に直結します。これらは国の補助金制度や減税制度の対象になることも多く、初期投資の一部を補助金で賄える可能性があります。

室内の暖かさは屋根よりも断熱性能で決まる

遮熱と断熱の最大の違いは、その働き方です。
遮熱は「屋根表面で太陽の熱を反射してはね返す」ことで、屋根材が熱くなるのを防ぎます。遮熱塗料や遮熱仕様の屋根材がこれにあたり、まさに“日傘”のような役割を果たします。

一方、断熱は「伝わってきた熱を建物内部へ通さない」ことを目的としています。屋根裏や壁の内部に施工する断熱材は、小さな空気の層で熱の移動を妨げ、“冬に羽織る上着”のような働きをします。

つまり、遮熱は「熱を受け止める前に返す」、断熱は「入ってきた熱を中に通さない」という違いがあるのです。

金属屋根はリサイクル性能に優れた屋根材

遮熱は、夏に特化した方法です。屋根表面の温度を下げるため、2階や屋根裏部屋の暑さを和らげる効果が大きく、冷房の効きを助けてくれます。ただし冬は、日射量そのものが少ないため遮熱の恩恵はほとんどなく、「冬に寒くなる」という心配も基本的には不要です。

断熱は、夏と冬の両方に効果を発揮します。夏は外の熱気が室内に入り込むのを防ぎ、冬は室内の暖房熱を逃がさず保温効果を高めます。そのため、冷房費・暖房費のどちらも削減できるのが大きな特徴です。

たとえば、スーパーガルテクトのように断熱材付き金属屋根を採用した場合は、屋根材自体に遮熱・断熱の両面が組み込まれているため、夏冬を通じて安定した効果を得やすいのが利点です。ここにスタイロフォームを追加すれば、夏の熱対策+冬の保温性に“厚み”を持たせることもできます。

アイジー工業「スーパーガルテクト」

遮熱と断熱では、費用のかかり方にも大きな違いがあります。
遮熱塗料は通常の塗料より1㎡あたり数百円〜数千円高くなりますが、工事そのものは屋根の塗り替え作業と同じ流れで行えるため、比較的導入しやすいのが特徴です。初期投資は抑えめで、「夏の冷房費を下げたい」という短期的な目的に合っています。

断熱材は施工範囲や厚みによって費用が大きく変わります。屋根や壁の内部に施工するため工事規模は大きくなり、リフォームで追加する場合は数十万円〜100万円以上になることも珍しくありません。その分、夏冬を通じて光熱費を削減できるため、長期的に見れば投資効果が高いのが特徴です。

イメージとして、遮熱は「即効性があるが効果は夏中心」断熱は「初期費用は高いが年間を通じて効果を発揮する」と整理できます。

費用対効果

遮熱塗料は「屋根の表面温度を下げたい」「夏の暑さを和らげたい」というニーズに特化しています。特に次のような住まいには効果的です。

塗料の色選び
  • 金属屋根(ガルバリウム鋼板など)の家など
    金属は熱を伝えやすいため、直射日光で一気に温度が上がります。遮熱塗料を使うことで、屋根材自体の温度上昇を抑え、屋根裏への熱の伝わりを大幅に軽減できます。
  • 2階や屋根裏部屋がとにかく暑い家
    日中はエアコンをフル稼働してもなかなか効かない、寝室が蒸し風呂のようになるといった悩みがある場合、遮熱塗料の効果を実感できます。
  • 冷房費を少しでも抑えたい方
    表面温度が10℃下がると、室温も2℃下がるとされます。その分エアコン設定温度を下げずに済み、光熱費削減につながります。

断熱材は「夏も冬も快適にしたい」「建物の性能そのものを底上げしたい」という場合に適しています。以下のような状況で特におすすめです

  • 冬の寒さも厳しい地域に住んでいる場合
    遮熱塗料は夏に効果的ですが、冬の保温効果はほとんどありません。断熱材なら夏冬両方で室温を安定させることができます。
  • リフォームや屋根葺き替えのタイミング
    外壁や屋根の工事と同時に断熱材を組み込めば効率的です。特にスーパーガルテクトのような断熱材付き金属屋根に、スタイロフォーム25㎜などを追加すると補助的な効果が得られます。厚みは十分ではないものの、夏の熱や冬の冷気の伝わりを和らげるプラス効果があります。ただし、断熱工事は初期費用が高く、施工の規模も大きくなりやすいため、「どの範囲で断熱するのか」「予算と効果のバランスはどうか」を事前に検討することが大切です。

遮熱と断熱は、それぞれが別の働きを持つため、両方を組み合わせることで相乗効果が生まれます。

遮熱塗料は屋根表面の温度上昇を抑え、そもそも「建物に入ってくる熱の量」を減らします。そのうえで断熱材が建物内部に伝わろうとする熱を食い止めることで、室内環境をより安定させることができます。つまり、遮熱は“入口で熱を防ぐ、断熱は“内部への侵入を遮る”という二重の防御が働くのです。

屋根塗装

具体例を挙げると、金属屋根の「スーパーガルテクト」を施工し、その表面は遮熱塗料で仕上げられているので、屋根材の断熱性能に加えて表面温度の上昇を抑える効果が得られます。さらに屋根裏にスタイロフォームを敷き込めば、熱の伝わりを補助的に遅らせる層が追加されます。結果として、夏は屋根裏の温度が数度下がり、エアコンの効きが良くなることが期待できます。

費用対効果

遮熱塗料や断熱材は、どんな家でも同じ効果を発揮するわけではありません。たとえば、スーパーガルテクトのように遮熱塗膜と断熱材を備えた屋根材なら、追加で遮熱塗料を塗る必要は基本的にありません。そのかわり、屋根裏にスタイロフォームなどを足すと、補助的に快適性を底上げできます。
一方、スレート瓦や古い金属屋根などは、遮熱塗料の恩恵を受けやすく、塗り替え時に導入すると効果的です。築年数が経っている家は、屋根下地や断熱材の状態も劣化している可能性があるため、事前の点検を行い、どの工法が適しているかを判断することが重要です。

「遮熱塗料を塗れば夏も冬も快適」といった過剰な宣伝を鵜呑みにするのは危険です。遮熱は夏に特化した効果であり、冬の寒さ対策にはほとんど寄与しません。逆に、断熱材は厚みが不足していれば効果も限定的です。

信頼できる業者であれば、
・屋根材の種類、築年数、屋根裏の断熱状況を見たうえで最適な工法を提案してくれる
・遮熱と断熱の違いを説明し、どちらに重点を置くべきかを明確に示してくれる
・色や厚みの選択による効果の違いを具体的に伝えてくれる

遮熱塗料と断熱性能のメリットは、コストだけでは語れません。最も大きな価値は、「住まいの快適性が向上する」ことです。
寝苦しい夜が減ったり、日中の暑さで集中力が途切れることがなくなったりと、日常の暮らしが快適になります。特に、ご高齢の方や小さなお子さんがいるご家庭では、熱中症対策としても非常に有効です。この「快適性」というメリットは、金額には換算できない大きな価値だと言えるでしょう。

断熱材選びのポイント

屋根の暑さ対策には「遮熱」と「断熱」という二つの方法があり、それぞれ役割も費用感も異なります。遮熱は夏の直射日光を反射して屋根温度を下げ、断熱は外気の影響を遮断して一年を通じて快適性を高めます。

たとえば、スーパーガルテクトのように遮熱塗膜+断熱材を備えた屋根材であれば、屋根リフォームと同時に「遮熱と断熱の両方」を一度に取り入れることが可能です。さらに屋根裏にスタイロフォームを追加すれば、プラスαの快適性を得られます。

「今すぐ2階の暑さを和らげたい」「光熱費を少しでも下げたい」といった短期的な目的なら遮熱塗料が向いています。一方、「夏も冬も含めて家の性能を底上げしたい」「将来的に資産価値を高めたい」という方は断熱材や高断熱仕様の屋根材が適しています。

屋根修理の匠ひおきでは、お客様の家の構造を踏まえて、屋根の状態をしっかりと診断し、最適なご提案をさせていただきます。
遮熱塗料、屋根断熱に関するご相談も、どうぞお気軽にお問い合わせください。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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