屋根の下地は、家全体を守る要であり、建物の長期的な維持に欠かせない役割を果たします。適切な下地材がないと、たとえ屋根材がどんなに優れていても、本来の性能を十分に発揮できません。本記事では、屋根下地材の重要性に焦点を当て、垂木、野地板、ルーフィングという基本的な三つの下地についてプロの屋根職人が詳しく解説します。
屋根下地材の重要性
瓦、スレート、それからガルバリウム鋼板などの金属屋根は、適切な下地に支えられることで、雨漏りを防ぎ、台風や豪雨、雪といった厳しい気象から建物を守ることができます。もし、下地の施工が適切にされていなければ、屋根材の寿命は短くなり、建物自体の耐久性もさがることになります。普段は私たちの目に触れない屋根下地ではありますが、建物を長期間にわたり保護するため大変重要な役割を担っています。
屋根下地において大切なことは、「適切な下地の選定」と「正しく下地を固定する」ことです。「適切な下地の選定」とは、下地となる材質とサイズの選定です。例えば、野地板となる下地材は、「構造用合板」でかつ12㎜以上の厚みのあるサイズを選ぶことをおすすめしています。これよりも強度の弱い材質で、サイズも厚みが薄いものを選んでしまうと、屋根全体の耐久性を下げる結果となります。
二つ目の「正しく下地を固定する」とは、下地を強度のある固定をするという意味です。一見当たり前のようですが、工事の内容によっては、ビスを垂木にまで効かせないといけないケースがあります。例えばトタンの瓦棒屋根でカバー工法の場合、野地板(構造用合板12㎜)を固定するとき、しっかりと垂木までビスを効かせなければいけません。そうしないと下地の固定強度が弱くなり、暴風で野地板が浮いてしまう可能性があります。これらの「適切な下地の選定」と「正しく下地を固定する」をしないと、下地の上に施工する屋根材に悪い影響を与え、結果として屋根全体の施工不良を引き起こしかねません。
また、屋根下地を長期的に良い状態に保つ方法として、雨漏りの点検をおすすめします。この点検により、屋根材のひび割れやシーリング材の不良箇所などが早期に発見できれば、下地の腐食をあらかじめ予防することができます。点検から適切な部分補修を行えば、下地の交換工事という大きな費用の出費を事前に防ぐことができ、かつ建物の安全な状態を維持することができます。
垂木:屋根の骨組みとしての役割
垂木は屋根の構造を支えるもっとも重要な下地であり、屋根全体の荷重を適切に建物全体に伝える役割を持ちます。この垂木の配置や強度が適切でないと、屋根の安定性が損なわれ、地震の際は崩壊のリスクが高まります。
一般的にサイズは45㎝×45㎝以上になります。垂木の工事には、主に補強や交換があり、多くは新しい垂木を添える「抱かせ」工法といわれる補強を行います。とくに雨漏りが原因で葺き替え工事を行う際には、劣化している箇所の垂木は必ず補強しましょう。垂木を正しく設置することは建物の耐久性を保つ上で欠かすことはできません。
また、何年もの間にわたり屋根からの雨漏りを放置している場合は注意が必要です。気づかないうちに、屋根材だけではなく垂木にまで雨が浸みこみ、全体的に腐食が進行してしまうという、建物全体の問題にまで発展しているケースがまれにあります。下地のなかでもとくに腐食した垂木は、家の安全性に直接影響します。そういった最悪の事態を避けるために、初期の段階で雨漏れを発見し、部分補修などの適切な対処をおこなう必要があるでしょう。
野地板:屋根材の基礎
野地板は屋根材の取り付けにおいてもっとも大切な下地となります。野地板は垂木の上に固定する板のことです。その固定された野地板の上に防水シートである「ルーフィング」を敷きます。野地板の主要な材質は、構造用合板とバラ板ですが、近年の新築現場では基本的に構造用合板が用いられます。耐久性と耐震性に優れた構造用合板12㎜の使用が一般的となります。同じ構造用合板でも厚み9mmのものは避けた方がよいでしょう。
また、屋根工事の際とくに重要視しなければいけないのは、野地板をそのままにするか、新規に設置するかです。葺き替え工事では、既存の野地板が劣化しているケースが多いですので、新しい野地板の重ね張り、交換または部分補強を行います。また、屋根カバー工法においては既存の野地板を利用しますが、第一にその強度が適切かどうか確かめなければなりません。葺き替え工事かカバー工法かは、野地板の状態が一つの分かれ目となります。
野地板の寿命は30~50年程度ですが、屋根材によって野地板の寿命は異なり、金属屋根であれば、結露が生じにくい断熱材付きの製品を使用することで長寿命化が見込めます。断熱材がないガルバリウム鋼板の屋根は結露が生じやすいですが、カバー工法の際は結露が生じても直接、野地板には浸透しにくいため、あまり問題にはなりません。一方、葺き替え工事の場合は断熱材付きの屋根材を選ぶことをお勧めします。
野地板を新設してから40年以上経過している場合、屋根材そのものが傷み、徐々に野地板が腐食しはじめているかもしれません。そうなると屋根材が野地板に固定される力が低下し、台風などの暴風により屋根材の飛散リスクが高くなります。よくトタン屋根が台風などで飛ばされている映像を見かけたことがあると思いますが、それは野地板の腐食が主な要因です。
ルーフィング:目に見えない防水の役目を担う下葺材
ルーフィングは防水シートともいい、雨水を屋根内(屋根裏)に入れず、外(軒先)に流す役割を持ちます。ルーフィングがなければ、屋根の防水は成り立たないと言っても過言ではありません。このような重要な役割を担っているにも関わらず、外からは見えないため、軽視する工事会社も少なくありません。雨漏りから建物を守るうえで、ルーフィング選びは重要なポイントになります。
ルーフィングには様々なメーカーや種類があります。耐用年数が長く、グレードの高いもの、屋根カバーに適したものや、遮熱効果が期待できるものもあります。特に、田島ルーフィング(→屋根下葺材/仕様 | 田島ルーフィング株式会社 (tajima.jp))のようなトップメーカーでは、20種類近くのルーフィングを取り扱っており、商品ごとに品質や価格が異なります。施工会社によって扱うルーフィングも様々で、知識がないと適当なルーフィングで施工されることもあるため、十分に注意が必要です。
屋根リフォーム工事の際には、しばしば屋根材の種類や機能に焦点が当てられがちですが、ルーフィングの選択と丁寧な施工は非常に重要です。なぜなら、屋根からの雨漏りの主な原因として、ルーフィング自体の破れや施工不良が挙げられるからです。
一般的な屋根材、例えば瓦やスレート屋根や金属屋根は、雨風によって構造上どうしても水が屋根材の下へと入り込む隙間があります。しかし、ルーフィングがしっかりと施工されており機能していれば、侵入した雨水を軒先へと導き出し、内部の野地板や垂木などの腐食や劣化を防ぐことができます。
極端に言えば、ルーフィングさえ劣化しなければ、屋根材が多少おかしくても雨漏りが起こる心配はありません。しかし、ルーフィング自体ももちろん劣化します。したがって、屋根材とルーフィングの両方がしっかりと機能していることが当然重要になります。