屋根の葺き替えでガルバリウム鋼板が選ばれる理由

中古の一戸建て住宅で屋根リフォームを行う際、ガルバリウム鋼板(金属屋根)は人気の高い選択肢です。

横葺き スーパーガルテクト

軽量で耐久性が高く、コスト面でも優れていると言われますが、実際に採用するにあたっては様々な観点から検討が必要です。

本記事では、ガルバリウム鋼板屋根を検討する際に注目すべき2つの点にフォーカスして解説します。
コストパフォーマンス・耐久性・メンテナンス性を比較他屋根材:瓦、スレート、アスファルトシングル
地域別の適性寒冷地・雪国、台風が多い地域、海岸線の塩害地域


リフォームで屋根材を選ぶ際には、初期費用(材料・施工費)とランニングコスト(メンテナンス費用や耐用年数)を総合的に考慮したコストパフォーマンスが重要です。

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ガルバリウム鋼板はこの点で優れていると言われることが多く、他の代表的な屋根材(瓦やスレート、アスファルトシングル等)と比べてどの程度お得なのか確認してみましょう。

屋根材初期費用(材料+施工)耐用年数メンテナンス頻度重量(1㎡あたり)
化粧スレート(コロニアル等)約5,000~7,000円/㎡約20~30年10年ごとに塗装約20kg
ガルバリウム鋼板約6,000~8,000円/㎡約25~35年10~15年ごとに塗装約5kg
SGL鋼板(改良型ガルバリウム)約6,000~8,000円/㎡約30~40年10~15年ごとに塗装約5kg
セメント瓦(厚形スレート)約6,000~8,000円/㎡約30~40年10~15年ごとに塗装+20年ごとに漆喰補修約30kg
アスファルトシングル約7,000~9,000円/㎡約10~30年10年ごとに部分重ね張り・塗装等約9kg
粘土瓦(和瓦など)約8,000~10,000円/㎡40~50年以上20年ごとに漆喰補修約60kg

※上記は一般的な目安で、製品グレードや施工条件、環境によって変動します。

表からわかるように、ガルバリウム鋼板の初期費用はスレートよりやや高い程度で中程度の価格帯ですが、耐用年数は化粧スレートより長く30年前後と十分です。

たて葺き

一方、伝統的な粘土瓦は初期費用が最も高いものの耐用年数も50年以上と飛び抜けて長く、長期的に見れば一年あたりコストは低く抑えられる可能性があります。

例えば「初期費用100万円の瓦屋根を60年間使った場合、1年あたり約1.7万円。初期費用60万円のガルバリウム鋼板屋根を30年間使うと1年あたり約2万円となり、瓦の方が50%ほど安い」という試算もあります。

長く住む前提なら瓦のコストパフォーマンスは優秀ですが、初期負担の大きさや建物への負荷も考慮が必要です。

ガルバリウム鋼板は総合的なコスパが高いとされ、初期費用・維持費・耐久性・耐震性を総合すると最有力候補に挙げられることが多い屋根材です。初期投資を抑えつつ長持ちさせたい場合に適しています。

実際、費用面で見るとガルバリウム鋼板は「買いやすく維持しやすい屋根材」と言えます。

初期費用は中程度ですが耐用年数が長く、メンテナンスも10~15年に一度程度の再塗装でOK。長期的なコストパフォーマンスが高い屋根材です。

そして、瓦屋根からの葺き替えでは、屋根の軽量化による耐震力の強化が期待できます。金属屋根は伝統的な瓦屋根やスレート屋根に比べて大幅に軽量で、建物への荷重を減らすことができます。

特に中古住宅では、屋根の重さによる建物への負担が心配されますが、軽い屋根材にすることで建物全体の負荷を軽減できます。重量が減ることで耐震性(地震への強さ)が向上し、大地震時にも屋根の重さによる被害を抑えられるメリットがあります。

耐震工事

初期費用が比較的安価で導入しやすい反面、10年ごとの塗装が必要でトータルコストでは中程度になります。耐用年数もガルバリウム鋼板より短めです。

スレート瓦は表面の塗膜が劣化すると防水性が落ちコケやカビが生えやすくなるため、約10年ごと程度に塗装が必要になります。

アスファルトシングル屋根

期費用は最も高額ですが、耐用年数は50年以上と非常に長く、塗装の必要もありません(漆喰補修は約20年毎)。

割れた瓦の差し替えやズレの直しは随時行います。

また瓦を固定する棟部分(漆喰や瓦土台)は経年劣化するため、20年ごと程度に漆喰の詰め直しや取り替えが必要です。

日本瓦

初期費用は中~やや高めですが、製品によって寿命が大きく異なります。

品質次第では20年前後での張替えが必要になるため、長期の維持コストは高くつく場合があります。

表面に施された石粒(グラニュール)が経年で剥がれて防水力が低下します。劣化が進んだら上から重ね張りするか全交換となるため、手入れというより定期的なリフォームが前提の材料とも言えます。

10年程度での部分補修や30年以内での葺き替えが視野に入ります。

ジンカリウム鋼板(ディートレーディング社 ディプロマットスター)
  • ガルバリウム鋼板: 10~15年ごとに再塗装。定期点検でビス緩みやサビをチェックし早期補修。
  • スレート屋根: 10年ごとに塗装。苔・汚れ落とし、防水塗料の再塗布が必要。割れスレートは随時差し替え。
  • 粘土瓦屋根: 基本塗装不要。割れ瓦の交換や棟漆喰の補修を20年ごとに実施。定期点検でズレや金具ゆるみを確認。
  • アスファルトシングル: 塗装不要だが表面保護粒が取れてきたらカバー工法で重ね張り(約10~15年)。30年以内には葺き替え。

中古住宅の屋根リフォームでは、既存屋根の状態によって「葺き替え」と「カバー工法(重ね葺き)」の2通りの工法があります 。

葺き替えは既存屋根材を全て撤去して新しい屋根にする方法で、廃材処分費用や撤去手間がかかるため費用は高めですが、下地から新しくでき安心です。

一方、カバー工法(屋根の重ね葺き)は既存屋根を残したままその上に防水シートと新しい屋根材をかぶせる方法で、撤去作業が不要な分工期・費用を抑えられるのがメリットです 。ガルバリウム鋼板は軽量なためカバー工法に適しており、特に既存屋根がスレートやシングルの場合は重ね葺きがよく採用されます。

カバー工法と葺き替え工法の比較

例えばスレート屋根からガルバリウム鋼板へのリフォームでは、葺き替えよりカバー工法の方が費用が約1.5倍程度も安く済むケースがあります。

実際の費用相場としては、瓦屋根からガルバリウム鋼板へ全面葺き替えする場合で約「41,000~89,000円/坪」程度、スレート屋根からガルバリウム鋼板へ葺き替える場合で約「33,000~66,000円/坪」が一つの目安です(1坪=約3.3㎡)。

屋根面積や下地補修の有無によって総工費は変わりますが、一般的な住宅(延床30坪前後)の屋根で100~200万円前後が見込まれます。カバー工法が可能な条件であれば、これより費用を抑えられるでしょう。

ただし、現在の屋根材や工法によってリフォーム費用は変わります。重ね葺きが可能なら費用を節約できる場合があるため、専門業者と相談して最適な工法を選びましょう。

メンテナンス性とコストパフォーマンス

長期的な維持費まで含めて検討すると、ガルバリウム鋼板のコストパフォーマンスの高さが見えてきます。

屋根材選びでは、住んでいる地域の気候条件も重要な視点です。

雪の蓄積による屋根の変形や破損

寒冷地や豪雪地帯、台風常襲地域、海沿いの塩害地域など、それぞれの環境で屋根材に求められる性能があります。

ここではガルバリウム鋼板が各地域の条件にどの程度適しているか、そして他の屋根材と比べて有利・不利な点を見てみましょう。

※補足: 日本は地震が多い国でもあり、屋根の重量は全国どの地域でも耐震性に関わる重要ポイントです。重い屋根ほど地震時に建物に大きな力がかかるため、耐震面では軽い屋根材が有利です。

寒さが厳しく雪の積もる地域では、屋根材の耐寒性や雪への対策が求められます。ガルバリウム鋼板をはじめとする金属屋根は、次のような理由で寒冷地に適した材料と言えます。

金属屋根は材質自体に水分が染み込まないため、凍結による破損(凍害)が起こりません。

雪の重みと屋根への負担

他の屋根材のように内部まで水を含んで凍ることがないので、寒冷地でも安心です。

スレート系屋根(化粧スレートなど)は寒冷地では凍害で傷みやすい欠点があり、瓦屋根も陶器瓦自体は凍結に強い製品がありますが、表面の雪が溶けて染み込んだ水が再凍結すると割れの原因になる場合があります。

その点、金属屋根なら凍結によるダメージを受けにくいのは大きなメリットです。

金属屋根は継ぎ目が少なく屋根材内部に水が入り込みにくい構造をしています。

雪で雨漏り!?「すがもり(すがもれ)」

豪雪地帯では冬季に屋根と雪との隙間で氷が融けたり凍ったりを繰り返すことがありますが、金属屋根は下地に水が侵入しにくいため雨漏りリスクを低減できます。


台風や強風が頻繁に襲来する地域では、屋根材の耐風性能(強風で飛ばされにくいこと)が重要です。

気候変動の影響で台風がますます強力に

一般に重い屋根ほど風で飛ばされにくいイメージがありますが、実際には固定方法の適切さや経年劣化も大きく影響します。ガルバリウム鋼板を含む金属屋根と瓦屋根、それぞれの耐風性についてポイントを整理します。

ガルバリウム鋼板は一枚一枚をビスや釘でしっかり下地に固定して施工します。適切に施工された金属屋根は強風にも非常に強く、台風が多い地域でも安心して使用できます。

金属製のガルバリウム鋼板は風に強くサビにくいのが特徴。台風に強く費用も安い上、耐用年数も30年と長いためコストを抑えて長持ちさせたい方におすすめです。

軽量ゆえに飛ばされやすいのではと心配されることもありますが、きちんと固定されていれば風に対する安全性は問題ありません。

瓦は1枚あたり約50~60kgにもなる重い屋根材で、重み自体が風による浮き上がりを抑えるメリットになります。特に近年の新築瓦屋根は、一枚一枚をしっかりビス留め・金具固定する工法が義務化され、従来より耐風性が向上しています。重さに加え固定がしっかりしていれば簡単には飛ばされにくい屋根と言えます。

風災被害

ただし、古い瓦屋根で土葺き(瓦の下に土を詰める工法)の場合は、瓦の固定が弱く強風でズレたり飛散しやすいケースがあります。また、いくら重いとはいえ暴風雨時には瓦も飛ぶことがある点に注意が必要です。気象庁の資料によれば「瞬間風速20~30m程度で屋根瓦がはがれるものがある」とされ、実際に風速25m/sを超える暴風では瓦が飛散する可能性も指摘されています。つまり瓦だから絶対安心というわけではなく、固定方法とメンテナンス次第なのは金属屋根と同様です。

前述のように瓦屋根から軽量な金属屋根へ葺き替えることで、建物自体の負荷が減って地震や台風時の安全性が増します。

耐震工事

実際、古い重い瓦屋根は台風時に飛散だけでなく建物への重荷による被害(地震との複合被害など)も懸念されるため、「台風や地震リスクを考えるなら軽い屋根材へ替えた方が安心」と専門家も述べています。ガルバリウム鋼板なら瓦の約1/10の重量(瓦50~60kg/㎡に対し鋼板5kg/㎡程度)と極めて軽量で、土葺き瓦では瓦+土の重量が構造に大きな負担をかけていたものを大幅に軽減できます。

台風の多い西日本では、昔ながらの和瓦も多いですが近年は軽量な金属屋根へ葺き替えるケースが増えています。

リフォームは気候が安定している時期を選びましょう

台風が多い地域は概して夏場の高温多湿な気候でもあります。瓦屋根は厚みがあり断熱・遮熱性に優れるため屋根裏の温度上昇を抑える利点があります。金属屋根は薄いため断熱性は低いですが、こちらも近年では断熱材付きの金属屋根材や遮熱塗料の活用で工夫がなされています。

海沿いの地域では、潮風に含まれる塩分による塩害(サビ劣化)が建物外装に与える影響を考えねばなりません。金属製の屋根や外壁は特に塩害の影響を受けやすく、ガルバリウム鋼板も例外ではありません。

温暖地での断熱材選び

ただし、ガルバリウム鋼板は従来のトタン(亜鉛メッキ鋼板)より格段に錆びに強い素材であり、アルミニウムを含むめっき層が長期間にわたり鋼板を保護してくれます。一般的には「ガルバリウム鋼板は比較的塩害に強い」とも言われ、錆がすぐ発生するようなことはありません。しかし「比較的強い」というだけで、やはり海に近い環境では注意が必要です。

塩害地域でガルバリウム鋼板屋根を採用する際のポイントは次の通りです。
より高耐食な製品を選ぶ: 最近ではガルバリウム鋼板を改良し、マグネシウムを加えることで耐食性をさらに向上させた「SGL鋼板」があります。SGL鋼板は通常のガルバリウムの約3倍の耐食性があるとされ、海岸近くで金属屋根を使いたい場合に推奨されています。

海辺の地域では「ガルバリウム鋼板よりさらに錆びに強い屋根材が必要」と言われることもあり、ステンレス製の金属瓦やガルバリウム鋼板より耐久性の高い製品の採用が検討されます。

こまめなメンテナンス: 塩害地域では塩分が付着したままだと金属表面の腐食が進みやすくなります。そのため定期的に水で洗い流すなどのメンテナンスが有効です。軒先や屋根裏に塩が溜まりやすい家では、1~2ヶ月に一度程度ホースで水をかけて洗浄するだけでも違います。

リフォームの工期が短縮

また通常15年おき程度の再塗装も、早め早めに実施することで防錆効果を維持できます。塩害地域ではメンテナンスサイクルを前倒しする意識が大切です。

製品メーカーによっては「海岸から◯m以内は保証対象外」などといった条件を設けている場合もあります。例えばあるガルバリウム鋼板屋根材では「海岸から500m以上離れていれば穴あき25年保証適用」というケースがありました。

保証内容の確認

逆に言うと海に極めて近い立地ではメーカー保証が制限されることもあります。海岸部で金属屋根を使う際は、こうした耐候保証の条件も確認しておくとよいでしょう。

ガルバリウム鋼板は寒冷地・雪国から台風地域まで幅広い気候に対応できる汎用性の高い屋根材です。特に凍害のないことや軽量であることはどの地域でもメリットになります。

塩害地域では追加の対策が必要ですが、最新の耐食鋼板を使うことで対処可能です。お住まいの地域の気候風土を踏まえて、ガルバリウム鋼板が適しているかを専門業者と相談するとよいでしょう。

当社は金属屋根専門の板金職人が施工する会社です。
ガルバリウム鋼板屋根(金属屋根)についてのご相談は「屋根修理の匠ひおき」までお気軽にご相談ください。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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