はじめに
ルーフィングとは
ルーフィングとは、屋根材の下に敷かれる防水シートのことで、建築業界では「下葺き材」とも呼ばれています。野地板や、既存屋根の上に貼り付けていき、雨漏りをさせない役割を担います。

屋根は、瓦やスレート、金属屋根などの「一次防水」と、その下のルーフィングによる「二次防水」の二重構造で守られています。雨水は、一次防水だけで完全に防ぐのは難しく、強い風雨でどうしても隙間から水が入り込みます。最後の砦となって雨漏りを防ぐのがルーフィングなのです。
従来型アスファルトルーフィング
コストを優先する場合には、昔から使われている、従来型の「アスファルトルーフィング」が使用されており、今でも広く普及しています。しかし、ルーフィングの機能として破れやすい材質ですので、あまりお勧めしません。


基材に紙を用いてアスファルトを含浸させることで雨水を通しにくくしたもので、施工のしやすさと価格の安さから新築住宅や建売住宅で広く採用されています。
基材が紙であるため強度や柔軟性に乏しく、経年によって硬化や破れが生じやすいという弱点を持ちます。
そのため耐用年数はおおよそ10年程度に限られ、建築基準法や住宅瑕疵担保責任保険が定める最低限の保証期間をクリアするための「必要最低限の防水材」としての役割にとどまる場合が多いです。
「安価で流通量が多い」「施工者にとって扱いやすい」という理由から現在でも一定の需要がありますので、リフォーム時にはルーフィングの名称に注意し、確認するようにしましょう。



従来のアスファルトルーフィングは基材が紙質。
写真のように、経年劣化により固く硬直し脆くなっているのがわかります。
「改質」アスファルトルーフィング
合成ゴムや合成樹脂を混ぜて改質した防水シートで「ゴムアス」とも呼ばれます。
当社でよく使用する製品としては、田島ルーフィングの「PカラーEX+(プラス)」になります。こちらは基材に不織布が採用されており、優れた性能にもかかわらず、コストパフォーマンスが素晴らしい下葺材です。


紙基材にアスファルトを含浸させただけの従来品と比べると、柔軟性と耐久性が格段に向上している点が最大の特徴です。施工中に折り曲げても割れにくく、長期使用による硬化やひび割れも起こりにくいため、耐用年数は20年からと長く、屋根全体の寿命を支える二次防水材として高く評価されています。
価格は、従来のアスファルトルーフィングと比べても1本あたり数百円から千円程度高い程度で、戸建て住宅全体で見ても1万円前後の差に収まることが多く、コストパフォーマンスは非常に高いです。
屋根工事を考える際には、屋根材だけでなく「その下の防水シートがどんな種類なのか」を確認することが、住まいを長く守る一番のポイントだといえるでしょう。改質アスファルトのルーフィングを選ぶようにすることをお勧めします。
ルーフィングの種類とは?
現在使用されているルーフィングには、主に2種類あります。アスファルト系もしくは高分子系ルーフィングになります。
アスファルト系は、改質アスファルトか、従来のアスファルトかによって耐久性が大きく異なります。また、「基材」といって基になる材質が、「紙」であるか「不織布」であるかによっても防水性能が変わります。さらに、粘着性であるのかないのかによって、製品が異なり、用途も異なってきます。
高分子系はポリプロピレン・ポリエチレンを基材にしたシートです。これも粘着式かどうかの違いもあります。
アスファルト系ルーフィング
現在の日本の戸建住宅で多く採用されるようになってきているのは「改質アスファルトルーフィング」、通称、「ゴムアス」です。価格が手頃でありながら、柔軟性・耐久性ともに優れているため、屋根リフォームから新築まで幅広く使われています。

基材の種類
改質アスファルトルーフィングには、「紙基材」と「不織布基材」があります。
- 紙タイプ:コストは安いが、湿気や経年劣化で弱りやすい。
- 不織布タイプ:繊維質のシートを基材にしており、破れにくく強度が高い。耐久性も長く、現在の主流。
粘着性であるか
さらに近年増えているのが「粘着性のあるゴムアス」。裏面に粘着層があり、ステープルや釘で留める必要がありません。穴を開けずに施工できるため、釘穴からの雨水侵入リスクをゼロに近づけられるのが大きなメリットです。

特にカバー工法(既存屋根の上に新しい屋根をかぶせるリフォーム)では、下地に直接密着できる粘着式が最適です。既存屋根材の継ぎ目や段差をしっかりカバーし、二重屋根特有の雨仕舞いの難しさを解消します。
高分子系ルーフィング(シート系)の特徴と種類

画像引用:セーレン株式会社HP
アスファルトを使わず、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)といった高分子素材を基材としたルーフィングが近年注目されています。
軽量でありながら高い強度を持ち、耐久性は30年以上と長寿命。引張強度や耐破断性に優れるため、施工時に破れにくいのも特徴です。
透湿タイプ
屋根内部の湿気を外に逃がしつつ、雨水は遮断する「透湿防水シート」タイプがあります。欧米では標準的に採用されており、住宅の高断熱化・高気密化が進む日本でも注目度が高まっています。ただし透湿性能を活かすには「通気層」が必要で、野地板と屋根材の間に適切な空気の流れを確保しなければ結露や腐朽を防げません。

遮熱タイプ
もう一つの進化系が「遮熱タイプ」。シート表面にアルミ蒸着などを施し、太陽光の輻射熱を反射することで屋根下温度の上昇を抑制します。夏季の冷房負荷軽減につながり、省エネ性が高いのがメリットです。

欧米では主流、日本での普及はこれから
高分子系ルーフィングは欧米住宅ではスタンダードですが、日本ではまだアスファルト系が主流です。しかし、長寿命化や高断熱住宅の増加により、今後は高分子系ルーフィングが採用されるケースが増えていくと考えられます。
実際におすすめの製品一覧
カバー工法の場合 ※既存の屋根の上に貼る場合
タディス セルフ(アスファルト系)税別1000円/㎡

このルーフィングは改質アスファルトを使った「遅延粘着型下葺材」です。基材は紙であるが特殊原紙であるため、通常の紙基材よりは高耐久。数時間経つと粘着力が強まり、改質アスファルトならではの高い防水性能を発揮します。勾配のゆるい屋根やリフォーム工事に最適な下葺材です。
タディス セルフ カバー(アスファルト系)

このルーフィング材は薄くて軽いため、リフォーム工事などの改修現場で扱いやすく、下地の形状にも柔軟に追従できます。合成繊維の不織布を使っているので、既存のスレート屋根の上でも破れにくく安心です。
さらに改質アスファルトを使用しており、強度が高く、温度変化や湿気などの影響で伸び縮みしにくい性質を備えているため、雨漏り防止に優れています。
また、ルーフィングに釘やビスを打ったとき、その穴のまわりをルーフィング自体がしっかり密着して塞ぎ、雨水が侵入しないようにする性能があり防水性に優れています。
ルーフラミテクトZ 粘着タイプ(高分子系)

ルーフ ラミテクトZは、アスファルトを使用しない高分子系の屋根下葺材です。
優れた止水機能を持ち、気温の変化に左右されにくいため、真夏の高温環境や冬場の低温でも安定した防水性能を発揮します。熱劣化に強く、長期間にわたり防水性能を維持できる点が大きな特徴です。
非常に軽量で、高所作業でも施工性に優れています。熱でベタつかないため現場を汚す心配がなく、作業効率も向上します。
下地が合板(木質)の場合 ※葺き替え時や新築工事の場合
PカラーEX+(プラス)税別800円/㎡

ARK規格「改質アスファルトルーフィング下葺材」ARK-04sに適合したPカラーシリーズ。
不織布の合成繊維を基材とし、ステープル留めで施工するタイプです。改質アスファルトルーフィングの汎用品として、基本性能に優れ、コスト面でもバランスの良い下葺材です。
ニューライナールーフィング

この下葺材は、改質アスファルトルーフィングの先駆けとして培われた技術を活かし、防水性・耐久性ともにトップクラスの性能を誇ります。
改質アスファルト層を不織布と原紙で挟み込む構造により、長期にわたる安定した防水機能を実現。さらに表面には防滑特殊塗料を採用し、施工時の安全性を大幅に向上。
ルーフ ラミテクト®︎ EX

ルーフ ラミテクト® EXは、アスファルトを一切使用せず、特殊ポリマーによって優れた防水性能を実現した高分子系の屋根下葺材です。重量は約1/5と非常に軽く、安全性や施工効率を高める点が大きな特長です。
温度変化に強く、真夏の高温や冬の低温でも安定した防水性能を発揮し、長期にわたって建物を雨から守ります。

マスタールーフィング


独自の劣化防止層によって外気の影響を遮断し、経年劣化を防ぐことで、超高耐久であり、超長期的に防水機能を維持します。
基材には高強度の合成繊維不織布を採用し、さらに高品質な改質アスファルトを組み合わせることで、抜群の耐久性を実現しています。
機械的強度・防水性能・耐久性・防滑性といった屋根下葺材に求められる機能をすべて兼ね備えた、まさに“パーフェクトルーフィング”と呼べる製品です。
まとめ
屋根の防水性能を本当に支えているのは、普段は見えない「二次防水」であるルーフィングです。
ところが、その価格差は意外なほど小さいです。ここを節約する理由はありません。大切な家を長く守りたいのであれば、紙基材の最低グレードではなく、不織布を使った改質アスファルトルーフィングを選ぶのが賢明です。
また、既存屋根の上からかぶせるカバー工法であれば、釘穴を開けずに施工できる粘着式の改質アスファルト系製品が最適です。
ルーフィング自体の費用の差は数万円程度です(高級なものもありますが)。そのわずかな上乗せで、将来の雨漏りリスクや修繕の手戻りコストを大きく減らすことができます。適切なルーフィングを用いた屋根工事を一度終えれば、その後ルーフィングのことを心配するのは何十年も先のことになるでしょう。

当社は屋根工事専門の会社です。
ルーフィングについてのご相談は「屋根修理の匠ひおき」までお気軽にご相談ください。
コメント