【フラット35】住宅仕様実態調査報告(R5年度)で金属屋根の使用率が半数以上!一番人気の理由とは?

近年、住宅の長寿命化や省エネ化が社会的な課題として注目されています。特に、気候変動による自然災害の増加やエネルギー資源の制約から、住宅の性能向上はますます重要になっています。その中でも、屋根は建物全体を保護し、快適な居住環境を維持する上で欠かせない要素です。
本記事では、屋根のリフォームや新築を検討している方に向けて、住宅金融支援機構が令和6年6月に公表した「フラット35住宅仕様実態調査報告(R5年度)」を基に、屋根に焦点を絞って屋根人気のトレンドを探っていきたいと思います。

「フラット35住宅仕様実態調査報告」は、独立行政法人住宅金融支援機構が実施している調査で、フラット35の融資対象となった住宅の仕様や性能について詳細なデータを収集・分析したものです。この報告書を通じて、現在の住宅市場における建築仕様の傾向や最新のトレンドを把握することができます。

フラット35

2023年度(令和5年度)の「フラット35住宅仕様実態調査報告」によると、全国における屋根材の使用割合は以下の通りです。

[屋根葺き材(令和5年度)
粘土瓦 11.0%
スレート瓦 27.3%
ガルバリウム鋼板またはジンカリウム鋼板 52.5%
ガルバリウム鋼板またはジンカリウム鋼板以外の金属板 3.2%
アスファルトシングル葺 3.2%
屋根一体型太陽光パネル 0.9%
その他 2.3%

※2つ以上の屋根葺き材を用いている物件の場合はダブルカウントしているため、合計値は100%を超える。

全国的に最も多く使用されている屋根材は「ガルバリウム鋼板またはジンカリウム鋼板」で、その使用割合は52.5%となっています。「ガルバリウム鋼板またはジンカリウム鋼板以外の金属板」の3.2%も含めて、新築やリフォームにおいて、半数以上の住宅でこれらの金属屋根が採用されていることを示しています。次に多いのが「スレート瓦」で、全体の27.3%を占めています。

【フラット35】住宅仕様実態調査報告 屋根葺き材
【フラット35】住宅仕様実態調査報告 屋根葺き材

この調査結果から、金属屋根の採用率が大幅に増加していることがよくおわかりいただけるかと思います。平成29年度には金属屋根の使用割合が42.1%でしたが、令和5年度には55.5%へと約13.4%増加しました。特に、ガルバリウム鋼板またはジンカリウム鋼板の採用が増加しており、これらの屋根材は耐久性や耐食性に優れていることがその要因と考えられます。
一方、スレート瓦と粘土瓦の採用率は減少しています。スレート瓦は約5.5%減少し、粘土瓦は約7.7%減少しました。これらの伝統的な屋根材の使用割合が減少する一方で、金属屋根へのシフトが進んでいることが明らかになっています。

屋根材に関してはこちらのコラム記事も参考にしてみてください。

【フラット35】住宅仕様実態調査報告 屋根葺き材×地域
【フラット35】住宅仕様実態調査報告 屋根葺き材×地域

地域別に見ると、屋根材の選択には明確な違いが現れています。2023年度(令和5年度)の「フラット35住宅仕様実態調査報告」による主な屋根材(金属スレート)の地域別の使用割合は以下の通りです。

[屋根葺き材×地域(令和5年度)
金属 スレート
北海道 67.6% 27.0% 1.4%
東北 64.4% 8.0% 13.3%
首都圏 32.2% 49.7% 8.7%
関東(除首都圏) 62.0% 14.3% 14.7%
北陸 81.6% 3.4% 10.3%
東海 69.9% 14.7% 11.4%
近畿 53.4% 32.7% 5.2%
中国

58.4%

22.7% 16.9%
四国 63.5% 16.5% 14.1%
九州 44.2% 27.1% 17.4%
  • 北陸81.6%
  • 東海69.9%
  • 北海道67.6%
  • 東北64.4%
  • 四国63.5%
  • 関東(除首都圏)62.0%
  • 中国58.4%
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板

北陸東北、北海道では、積雪による屋根への負担を軽減するために金属屋根が採用されています。また、東海、中国、四国では、台風や豪雨への対策として、耐風性・防水性に優れた金属屋根が好まれています。

  • 首都圏49.7%
  • 近畿32.7%
  • 九州27.1%
スレート屋根
スレート屋根

首都圏や近畿などの都市部では、デザイン性やコストパフォーマンスを重視してスレート屋根が選ばれています。スレート屋根は色や形状のバリエーションが豊富で、現代的な建築デザインに適しています。また、高層建築や狭小地での施工に向いています。

  • 九州17.4%
  • 中国16.9%
  • 四国14.1%
  • 東北13.3%
日本瓦
粘土瓦

九州や中国、四国では、歴史的に瓦屋根の文化が根付いており伝統的な外観や耐久性を求めて瓦が選ばれています。また、瓦屋根は耐久性が高く、断熱性や耐火性にも優れています。

これらの地域では、金属屋根の採用率が非常に高いです。その主な理由は、積雪対策耐久性の確保にあります。北海道や東北、北陸地方は、冬季に大量の積雪があり、屋根にかかる負荷が大きくなります。金属屋根は軽量であり、雪の重みによる建物への負担を軽減できます。また、雪が滑り落ちやすい特性があるため、雪下ろしの手間を減らすことができます。さらに、金属屋根は耐久性や耐候性に優れており、厳しい気候条件にも耐えられるため、これらの地域で多く採用されています。

雪の多い地域には金属屋根が多く採用されている

首都圏では、スレート瓦の採用率が最も高いです。都市部では、デザイン性とコストパフォーマンスを重視する傾向があります。スレート瓦は薄くて軽量であり、色や形状のバリエーションが豊富なため、モダンな建築デザインに適しています。また、施工コストが比較的低いため、コスト意識の高い都市部のニーズに合致しています。さらに、首都圏は積雪が少なく、気候が温暖であるため、金属屋根の必要性が低く、スレート瓦でも十分な性能を発揮できます。

首都圏ではスレート瓦の採用率が最も高くなっている

都市部と郊外が混在し、デザイン性と機能性の両方が求められます。都市部ではスレート瓦が多く採用され、郊外や伝統的な地域では粘土瓦も使用されています。また、台風や豪雨への対策として、金属屋根も選ばれています。

台風や豪雨が多い地域であるため、耐風性や防水性に優れた金属屋根が好まれます。一方、伝統的な建築が多く残る地域では、粘土瓦も引き続き採用されています。

温暖な気候であり、地震や台風も多いため、耐震性と耐風性を兼ね備えた金属屋根スレート瓦が選ばれています。また、伝統的な瓦文化が根強く、粘土瓦の使用も一定の割合を占めています。

日本は南北に長く、地域ごとに気候や自然災害のリスクが大きく異なります。そのため、屋根材の選択には地域の気候条件が大きく影響します。

  • 台風や豪雨が多い地域
    耐風性や防水性に優れた屋根材が求められ、金属屋根が選ばれる傾向があります。
  • 積雪が多い地域
    軽量で雪の滑落性が高い金属屋根が適しています。これにより、屋根への負担を軽減し、雪下ろしの作業負担も減少します。
  • 温暖な気候の地域
    デザイン性や伝統性を重視し、スレート屋根や粘土瓦が選ばれます。これらの屋根材は、断熱性や遮音性にも優れており、快適な居住環境を提供します。

これまで金属屋根はカバー工法などのリフォームにおいて多く採用されてきました。カバー工法とは、既存の屋根材の上から新しい屋根材を重ねる工法で、軽量な金属屋根が最適とされてきました。
しかし、近年では新築住宅においても金属屋根の採用が増加しています。近年の住宅建築において、金属屋根(ガルバリウム鋼板やジンカリウム鋼板)が最も多く採用されている背景には、以下のようなさまざまな要因が考えられます。

金属屋根
ガルバリウム鋼板の住宅

金属屋根は、瓦屋根やスレート屋根に比べて非常に軽量です。そのため、建物全体の重量が軽減されることにより、地震時に建物への負担が減少し、耐震性が向上します。日本のように地震が多い国では特に耐震性の高い住宅が求められており、重い瓦屋根から金属屋根に葺き替えるリフォームも増加傾向にあります。

金属屋根は、現代のシンプルモダンな外観の住宅に非常によくマッチします。金属の持つシャープなラインや質感は、ミニマルでスタイリッシュな建築デザインと調和し、建物全体の美観を高めます。その軽量性と耐久性も相まって、機能性とデザイン性を両立させる理想的な選択肢として、モダンな住宅を求める多くの方々から支持されています。

ガルバリウム鋼板やジンカリウム鋼板は、耐食性に優れた合金で、錆びにくく長寿命のため、耐久性が高く評価されています。また、これらの金属屋根の表面にはコーティングが施されており、長期間にわたって美観を維持することができます。結果として、定期的な塗装などのメンテナンス頻度が少なくて済み、メンテナンス性にも優れています。

金属屋根は、耐久性が高くメンテナンスコストが低いため、長期的に見ても経済的です。金属屋根の性能を最大限に発揮するためには、専門の板金職人による正確な施工が必要です。

金属屋根は、雨風や紫外線に強く、過酷な気候条件にも耐えられる優れた耐候性を持っています。また、その軽量性により、雪の重みによる建物への負担を軽減できるため、積雪地域である北海道や東北などの寒冷地で多く採用されています。

金属屋根は環境への配慮にも優れており、そのリサイクル性と持続可能性が大きな特徴です。金属は再生資源としてリサイクルが可能で、これにより環境負荷を低減することができます。また、金属屋根は長寿命であるため、資源の消費を抑えることができ、持続可能な建築材料として評価されています。

【フラット35】住宅仕様実態調査報告 屋根の形状
【フラット35】住宅仕様実態調査報告 屋根の形状
屋根の形状

2023年度(令和5年度)の「フラット35住宅仕様実態調査報告」によると、屋根の形状の採用割合は以下の通りです。

[屋根の形状(令和5年度)
切妻屋根 31.5%
寄棟屋根 13.2%
陸屋根(フラット屋根) 1.0%
片流れ屋根 41.5%
段違い屋根 10.6%
無落雪屋根 1.3%

片流れ屋根が前回調査の平成29年度の30.5%から令和5年度の41.5%へと、片流れ屋根の採用率が大幅に増加しています。その理由として考えられるのは、モダンでシンプルなデザインが現代の住宅トレンドとなっており、片流れ屋根はそのニーズに適合していること、また太陽光パネルの設置に適しているため、再生可能エネルギーへの関心の高まりが影響しているのではないかと考えられます。

一方で切妻屋根は、前回調査の平成29年度の40.7%から令和5年度の31.5%へと約9.2%減少しています。片流れ屋根の採用率が増加していることから、従来の伝統的なデザインよりも、個性的でモダンなデザインを求める傾向が強まっていることが数字に表れています。

片流れ屋根
片流れ屋根
切妻屋根
切妻屋根

屋根構造に関してはこちらのコラム記事も参考にしてみてください。

片流れ屋根は、一方向に傾斜したシンプルでモダンなデザインが特徴であり、近年特に人気が高まっています。この屋根形状は大きな屋根面を持つことが多く、軽量な金属屋根を使用することで建物への負担を軽減できます。また、シンプルな形状であるため、金属屋根材を効率的に施工することが可能です。さらに、金属屋根はスタイリッシュな外観を演出でき、片流れ屋根のモダンなデザインと相性が良いです。

ニチハ 片流れ屋根
[画像]ニチハ

切妻屋根は、最も伝統的でシンプルな屋根形状の一つで、金属屋根は非常に適しています。切妻屋根は構造が簡単なため、軽量な金属屋根を使用することで耐震性能をさらに向上させることが可能です。さらに、施工が容易な切妻屋根と金属屋根の組み合わせは、コストを抑えつつ高性能な屋根を実現でき、優れたコストパフォーマンスを発揮します。

アイジー工業 切妻屋根
[画像]アイジー工業

寄棟屋根は、全ての面が傾斜した形状であり、風や地震に強いというメリットがあります。寄棟屋根の形状において、金属屋根は耐風性に優れており、風による影響を受けにくい設計が可能です。また、屋根面積が多い寄棟屋根では、軽量な金属屋根を使用することで建物への負担を抑えることができます。さらに、寄棟屋根の立体的なデザインを活かし、金属屋根の質感やカラーを組み合わせることで、高級感を演出することができます。

ニチハ 寄棟屋根
[画像]ニチハ

今回の「フラット35住宅仕様実態調査報告(令和5年度)」を通じて、屋根材や屋根形状の最新トレンドが明らかになりました。全国的に見ると、金属屋根の採用率が大幅に増加し、特にガルバリウム鋼板やジンカリウム鋼板が多く使用されています。一方、スレート瓦や粘土瓦の採用率は減少しており、伝統的な屋根材から金属屋根へのシフトが進んでいることがわかります。
屋根形状においては、片流れ屋根の採用率が大幅に増加し、現代のモダンでシンプルなデザインが求められていることが反映されています。片流れ屋根は金属屋根との相性が良く、結果的に金属屋根の採用率が半数以上となりました。
耐震性、耐久性、デザイン性、環境性など、現代の住宅に求められる要素として、屋根リフォームだけでなく新築においても金属屋根が人気となってきていることがわかりました。

金属屋根は多くのメリットを持つ一方で、その性能を最大限に発揮するためには、専門の板金職人による正確な施工が不可欠です。不適切な施工は雨漏りなどの不具合を招く可能性があるため、信頼できる専門業者に依頼するようにしましょう。

日置 卓弥

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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