瓦屋根の葺き替えリフォームと瓦の賢い再利用術とは?

瓦屋根のリフォーム

日本の住宅において、古くから親しまれてきた瓦屋根。その重厚な見た目と、優れた耐久性・断熱性から、多くの家で採用されてきました。しかし、年月が経つにつれて、瓦屋根が抱える固有の課題が、頭を悩ませる要因となっています。

築年数の経過とともに、瓦のズレや割れから雨漏りのリスクが高まるほか、定期的な漆喰(しっくい)のメンテナンスも欠かせません。そして何より、近年多発する地震への備えとして、屋根の「重さ」が大きな懸念材料となっています。

この課題を解決し、住宅の寿命と安全性を高めるリフォームとして注目されているのが、軽量で耐久性に優れたガルバリウム鋼板などへの「葺き替え(ふきかえ)」です。
単に屋根材を変更するだけでなく、撤去する古い瓦を環境に配慮し、かつコストを抑えて活用する「再利用」の選択肢も考えられます。
本コラムでは、瓦屋根からの吹き替えと、古い瓦の賢い再利用法について詳しく解説します。

古い瓦の賢い再利用法

瓦屋根の葺き替えリフォームを検討する際、まずは大きく分けて葺き替え(ふきかえ)・葺き直し(ふきなおし)二つの選択肢があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを理解し、ご自宅にとって最適な方法を選びましょう。

古い瓦を一度剥がし、下地と防水シートを修理・交換した後、瓦を再び使う方法です。

既存瓦の再利用・葺き直し(ふきなおし)
  • 瓦の寿命を活かす
    瓦自体は非常に耐久性が高く、適切に施工されていれば50年以上の寿命を持つと言われています。瓦そのものの品質が保たれていれば、その寿命を最大限に活かせます。
  • 瓦への愛着
    瓦の持つ伝統的な風合いや、長年培われた色合いをそのまま維持できます。家に対する思い入れが強く、コストよりもこの風情や愛着を大切にしたい方は葺き直しを希望されます。
  • 瓦材費の削減
    既存の瓦を使用するので、新しい瓦材の購入費用はかかりません。
    (破損している瓦は別途必要となります)
  • 耐震性の問題が残る
    瓦の重量が変わらないため、葺き替えの最大の目的である耐震性の向上は期待できません
  • コスト削減効果は限定的
    瓦材費はかかりませんが、雨漏り防止の要となる下地や防水シートの交換・補修は必須です。この工事費用がかかるため、トータルコストの大きな削減にはつながりにくいのが実情です。
  • 耐久性のリスク
    古い瓦を再利用することで、瓦の寿命も短くなります。仮に50年の寿命で瓦を築25年で葺き直しした場合、残りの寿命は約25年となります。
  • 補修の困難さ
    葺き直しや将来のメンテナンスの際、割れた瓦があった場合に同じ瓦がすでに廃番となっており、手に入らない可能性があります。色や形が異なる瓦で補修すると、屋根全体の統一感が失われる場合もあります。

古い瓦を撤去し、軽量で耐久性の高いガルバリウム鋼板に屋根材を一新する方法です。

瓦から新しい屋根材「ガルバリウム鋼板」への葺き替え
  • 耐震性が劇的に向上(最重要)
    瓦の約1/8〜1/10という圧倒的な軽量化により、建物の重心が下がり、地震に対する安全性が大きく向上します。
  • 高い耐久性とメンテナンス性
    錆びにくく、割れやズレの心配がないため、長期的なメンテナンス費用を抑えられます。
  • デザイン性
    和風建築にも調和し、モダンで洗練された外観になります。
  • コストの問題
    新しい屋根材の費用がかかります。
    但し、このコストは葺き直しをするよりコストがかかるということではありません。

お客様が屋根の葺き替えに求めるものが「耐震性向上」と「長期的な安心」であれば、私たちは迷わずガルバリウム鋼板への葺き替えをおすすめします。

瓦屋根から金属屋根(ガルバリウム)へ葺き替えるメリットに関してはこちらのコラム記事も参考にしてみてください。

瓦屋根を葺き替える際、屋根材の選択肢はいくつかありますが、私たちが最も推奨し、多くのお客様に選ばれているのがガルバリウム鋼板です。
これは、単なる新しい屋根材への交換ではなく、住宅の構造的な安全性を向上させるという点で、他の屋根材と一線を画しているからです。
前項でもご紹介しましたが、以下にさらに詳しく解説していきます。

瓦屋根は重いため、耐震性が悪い
耐震性を高める為には屋根の軽量化が望ましい

瓦屋根からガルバリウム鋼板への葺き替えを選ぶ最大の理由が、建物の耐震性の劇的な向上です。
一般的な瓦屋根は1平方メートルあたり約40〜60kgの重量がありますが、ガルバリウム鋼板はわずか約5kg/平方メートルと、瓦の1/8から1/10程度の軽さです。

屋根が軽くなると、建物の重心が低くなり、地震の際に建物が受ける揺れの力が大幅に軽減されます。特に地震が多い日本において、屋根の軽量化は最も効果的な耐震対策の一つであり、家族の命を守ることにつながります。

ガルバリウム鋼板は、アルミニウムと亜鉛の合金めっきを施した金属屋根材です。その優れた特性により、瓦屋根に比べて長期的なメンテナンスが楽になります。

  • 長寿命
    従来の金属屋根に比べ、現代のガルバリウム鋼板は耐久性が格段に向上しています。瓦のように割れたり、強風でズレたりする心配が少なく、長期的に屋根のトラブルを軽減します。
  • メンテナンスコスト削減
    瓦屋根特有の漆喰の補修や、瓦の差し替えといった細かなメンテナンスがほぼ不要になります。これにより、将来的な維持コストを大幅に削減できます。

近年のガルバリウム鋼板は、デザイン性も進化しています。モダンでシャープな外観を演出するデザインや、和風建築にも馴染む落ち着いた色味まで、多様な選択肢があります。
特に、和風の瓦屋根から葺き替える場合でも、ガルバリウム鋼板は非常にデザイン性がマッチします。 伝統的な日本家屋の重厚感を残しつつ、黒や深緑などの落ち着いた色味を選ぶことで、屋根全体をすっきりと引き締め、モダンで洗練された雰囲気に一新できます。建物のイメージを一新し、資産価値を高める効果も期待できます。

屋根の葺き替え工事を行う際、必ず発生するのが古い瓦の処分です。瓦は産業廃棄物として処理されるため、その処分費用はリフォーム全体のコストに少なからず影響を与えます。
しかし、撤去した瓦は単なる廃棄物ではありません。適切な方法を取ることで、コストを削減し、環境にも配慮した賢い「再利用」が可能です。

瓦を再利用する最大のメリットは、廃棄物を減らし環境への負荷を軽減できる点です。また、解体で発生する瓦の処分費用(産業廃棄物としての処理費用)を削減できるため、経済的なメリットも大きくなります。さらに、砕いた瓦を砂利や資材として利用すれば、新たな砂利の購入費用も抑えられます。

撤去した瓦を細かく砕いて作る「瓦チップ」は、ホームセンターなどでも販売されている人気の庭敷材です。瓦チップは、多孔質で透水性・水はけが非常に良いという特性があり、庭の防草対策や景観向上に役立ちます。

古い瓦を瓦チップに加工して庭づくりに
瓦チップを使用した庭のアプローチ

最近では、この水はけの良さと環境配慮の観点から、キャンプ場やレジャー施設などで、サイトの地面に瓦チップを敷き詰める活用事例が広がっています。水たまりができにくく、快適な地面環境を整えるのに最適です。

キャンプ場で再利用された瓦チップ
キャンプ場で瓦チップをサイトに敷き詰めた例

「せっかく大量に出る瓦を自分でチップにしたい」と思われる方もいらっしゃいます。ネットなどではハンマーで瓦を叩いて砕く方法が紹介されていますが、庭一面に敷くほどの量となると、個人で対応できる量ではありません。専門の設備や経験がない場合は、無理をせず業者に依頼する方が無難です。

  • 少量の場合
    破れにくい袋に入れ、ハンマーなどで叩けば、ある程度砕いて使うことは可能です。
  • 大量の場合
    専門の破砕機やリサイクル業者を通す必要があります。

瓦チップには、現場で破砕されたものと、角を丸くする処理(丸角加工)などを施し、安全性を高めて販売されている既製品(例:テコラ)があります。再利用をご希望の際は、どちらの方法を望むかをご相談ください。

瓦チップ テコラ

割れの少ない良質な瓦は、そのままの形で庭やアプローチの装飾材として、古い風合いを活かした独自のデザイン空間づくりにも役立ちます。

古い瓦をそのままの形で庭に再利用
瓦そのままの形を利用した庭のアプローチ

瓦の再利用はメリットが大きい一方で、以下の注意点を必ず守る必要があります。
まず、アスベスト含有瓦は再利用不可となります。古いセメント瓦などには、アスベスト(石綿)が含まれている製品があり、健康被害のリスクがあるため、再利用は法律で禁止されています。
セメント瓦は、セメントと水を混ぜて作った瓦で、粘土瓦に比べて安価で施工しやすいため、1970年代~1980年代の住宅に多く使用されており、強度を高めるためにアスベストが使用されているケースがあります。特徴として、粘土瓦のような光沢がなく、厚みがあり、表面の塗膜が剥がれるとセメントの質感が現れます。
屋根材にアスベストが含まれている可能性があるかどうかは、築年数屋根材の種類からある程度推測できますが、確実な判断には専門業者による事前調査が必要ですのでご注意ください。

古いセメント瓦
古いセメント瓦はアスベストが
含まれている製品もあるので注意が必要

屋根修理の際は、私たちのような屋根専門業者にご相談いただければ、アスベストの有無調査から、安全で法令を遵守した解体・処分までを適切に行いますのでご安心ください。

瓦を加工して再利用する際には、業者と契約の前に事前相談を徹底するようにしてください。

  • 瓦の再利用には、産廃業者への手配とは別のルートが必要なため、できれば屋根葺き替えの契約前に、施工業者に「瓦は処分ではなく瓦チップに加工したい」と相談してください。
  • 加工料金は、産廃業者に処分を頼む料金より高くなる場合がありますが、瓦チップへの加工やリサイクルに対応している業者を紹介してもらえたり、適切なアドバイスをもらいましょう。
  • 量も考慮が必要です 全ての瓦を使うのか、一部を瓦チップにするのかを決めておきましょう。一部をチップにする場合は、残りの瓦は別途、産廃業者への処分依頼が必要です。

瓦を砕いて再利用するには、産業廃棄物処理の許可を持つ業者と、専用設備が必要です。個人での処理は現実的ではありませんのでご注意ください。

瓦屋根からガルバリウム鋼板への葺き替えは、家の安全と資産価値を高める重要な投資です。失敗のないリフォームを実現するために、特に注意すべき点と、信頼できる業者を選ぶためのポイントをご紹介します。

トラブルを防ぐ予防策こそ最良の防御

ガルバリウム鋼板は軽量ですが、屋根の耐久性は屋根材の下にある下地材と防水シートの品質に大きく左右されます。

屋根の下地補強、防水シートは重要
  • 下地補強の徹底
    重い瓦を支えていた下地は経年劣化していることが多いため、ガルバリウム鋼板の特性を最大限に活かし、耐震性を向上させるための適切な下地の点検と補強が不可欠です。
  • 防水シートの選定
    葺き替えでは、新しい防水シート(ルーフィング)を敷きます。ここが雨漏り防止の要となるため、高性能で耐久性に優れた防水シートを丁寧に施工できる技術力が求められます。

前述の通り、古い瓦の再利用をご希望の場合、産廃業者を手配する前のタイミングで、必ず施工業者へ相談してください。

業者との打ち合わせを綿密に行い、イメージの共有を図ることも重要です
  • 費用対効果の確認
    瓦チップへの加工料金は、単純な処分費用より高くなる場合があります。トータルの費用対効果や、瓦チップの必要量を業者と確認しましょう。
  • アスベスト含有瓦の確認
    特に古いセメント瓦など、アスベストを含む可能性がある瓦は、再利用が法律で禁止されています。葺き替え工事前に、必ず専門業者に依頼し、アスベストの有無調査を実施することが必要です。

安心できる業者に任せるために、以下の3点をチェックしてください。

  • 施工実績の豊富さ
    瓦屋根から金属屋根への葺き替えは、特殊なノウハウが必要です。ガルバリウム鋼板への葺き替え実績が豊富で、その地域特有の気候を考慮した提案ができる業者を選びましょう。
  • 保証体制の明確化
    工事後の不具合に備え、工事保証の内容と期間が明確に書面で提示されているか確認しましょう。
  • 自社施工体制
    診断・施工・管理を一貫して自社で行っている業者(自社施工)は、中間マージンが発生しないため費用が抑えられるうえ、責任の所在が明確で安心感が得られます。
プロに依頼することで安心して任せることができます
ガルバリウム屋根の業者選びに関してはこちらのコラム記事も参考にしてみてください。

瓦屋根のリフォームは、ご家族がこれからも安心して暮らすための、とても大切な決断です。
耐震性のことを最優先に考慮する場合、お家を地震に強くし、長持ちさせるガルバリウム鋼板への葺き替えがおすすめです。屋根を軽くすることで、家族の安全を守る力がぐっと高まります。
また、古くなった瓦はただ捨てるのではなく、瓦チップなどお庭で再利用という方法もあります。屋根修理業者とよく相談の上、コスト面と環境面の両方から検討し、賢い屋根リフォームを実現させましょう。

瓦屋根のリフォーム

ご自宅の屋根が今どんな状態なのか、どんなリフォームが最適なのかは、お家ごとに違います。
まずは、専門業者による診断を受けて、現在の屋根の状況、最適な瓦屋根の葺き替え方法、そして瓦の再利用の可能性についてご相談ください。

屋根修理の匠ひおきは、瓦の劣化状態から下地の状況、耐震性への影響までを詳細にチェックし、お客様の状況とご要望に合わせた最適なプランをご提案いたします。安心・安全・そして環境に優しい屋根リフォームをお考えなら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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