屋根を点検する方法とは?

屋根の点検はいつするのか

新築後の初回点検: 新築住宅では、施工上の不具合や初期不良が引き渡しから数年以内に見つかるケースが多いため、完成後1年目や3年目に点検するのがおすすめです。

この時期に屋根や外壁の不備(雨漏りの兆候や建材の不良)がないか確認しておくことで、早めの対処が可能になります。また、住宅の瑕疵担保責任は10年間あるため、築10年以内にも必ず専門家による点検を受けておくと安心です。

屋根の専門業者に依頼して確認

定期点検の頻度: 一般的な目安として、屋根は5年に1度程度は専門業者に点検を依頼するのが望ましいとされています。毎年点検できれば理想ですが現実には難しいため、数年ごとにプロの目で劣化状況をチェックしてもらいましょう。また、「年に1回」程度の自主点検(目視確認)も推奨されており、特に台風や大雨、地震など自然災害の後には臨時で屋根の状態を確認することが大切です。長期優良住宅では10年ごとの定期点検が義務付けられているように、少なくとも10年に一度は専門点検を行うことが住宅を長持ちさせる秘訣です。

点検時にチェックすべき項目

屋根全般に共通して次の点を確認します。

コケや藻の発生
コケや藻の発生
  • 屋根材の破損や劣化: 瓦・スレート・金属板に割れや欠け、剥がれがないか。また塗装面の色あせや防水塗膜の劣化が見られないかも確認します。
  • 屋根材のズレ・浮き: 強風や地震で瓦がずれたりスレートや金属板が浮いていないか。棟板金(屋根の棟部分の金属板)の剥がれや浮きもチェックします。
  • 雨漏りの兆候: 屋内の天井や壁にシミ・カビがないか(雨水侵入の痕跡)を見ます。小屋裏(屋根裏)に入れる場合は、野地板に水染みがないかも確認しましょう。
  • コケ・カビの発生: 屋根表面に緑色の苔や黒いカビが繁殖していないか。これは防水機能低下のサインで、塗膜劣化や水分滞留が疑われます。
  • 雨樋の状態: 屋根からの排水経路である雨樋が落ち葉やゴミで詰まっていないか、破損や外れがないかを確認します。詰まりは雨水の逆流や溢れにつながり、屋根や外壁を傷める原因になります。
雨樋が詰まると重大な損傷を引き起こす可能性があります

以上の項目は地上から双眼鏡で観察する、2階の窓から屋根を見下ろすなど、安全を確保しつつ可能な範囲でチェックできます。異常が見つかった場合や築年数が経っている場合には、早めに専門業者に詳しい点検を依頼しましょう。

屋根材ごとの点検時期

ガルバリウム鋼板屋根(金属屋根)

近年主流のガルバリウム鋼板屋根は、アルミ・亜鉛合金めっき鋼板からなる金属屋根です。

耐久性は高く耐用年数約30年~とも言われますが、メンテナンスフリーではありません。

金属屋根メーカーも定期点検を推奨しており、5年に1回は専門業者による点検を行うのが望ましいとされています。また、日常的には年1~2回の目視点検で錆や塗装の傷みを確認しましょう。特に海沿いなど錆びやすい環境では点検頻度を高めるべきです(後述)。

表面塗装の劣化(色あせ・剥がれ)がないか、露出した金属部にが発生していないかを確認します。塗装の剥がれを放置すると錆が進行し、穴あきや雨漏りの原因となるため注意が必要です。

ビスの緩み・抜けが起きていないかも重要なチェックポイントです。熱膨張と収縮を繰り返すうちにネジが緩むことがあり、放置すると屋根材や棟板金の飛散、ビス穴からの雨水浸入につながります。加えて、屋根表面の汚れ(落ち葉や鳥のフン)が堆積していると錆の誘因になるため、水はけ(排水状態)も確認し、必要に応じて清掃します。

ガルバリウム鋼板は表面の塗膜によって防食性を保っているため、15年程度を目安に塗装の塗り直しが必要です。

10年以上経過すると、塗膜の保護効果低下による色褪せやチョーキング現象が起きはじめるので、再塗装を検討しましょう。塗替えには遮熱性・防錆性を備えた専用塗料を用いると長持ちします。

瓦屋根(和瓦・洋瓦)

瓦屋根は粘土瓦に代表される伝統的な屋根材で、重厚で耐久性が高い点が特徴です。ただし瓦そのものが長持ちしても、固定に使われる土や漆喰、下地材は経年劣化します。また古い瓦は地震や台風で瓦が動くといったトラブルもあります。

防災瓦

瓦(特に陶器瓦・粘土瓦)は50年以上もつと言われ、新築から長期間メンテナンス不要なケースもあります。

しかし、瓦を固定する漆喰(しっくい)や瓦桟木などは20年前後で劣化してくるため、その頃に一度専門点検を受けるのが望ましいです。漆喰が劣化すると瓦の保持力が落ちるため、築20年目を一つの目安に棟部分のチェックや補修を検討しましょう。

セメント瓦・コンクリート瓦の場合は10年前後で表面の塗膜が劣化するため、築10年目くらいで再塗装や点検が必要になります。

瓦自体は焼き物の陶器瓦であれば色あせや腐食がほとんどなく半永久的にもちますが、割れ欠けが生じていないか定期的に確認が必要です。

屋根材の交換

落下物(飛来物)や人が乗った衝撃でヒビが入ることがあり、割れた瓦は差し替え修理が必要です。また瓦のズレ・浮きにも注意します。

地震や強風で瓦がずれると隙間から雨が吹き込み雨漏りの原因になりますし、外れた瓦が落下すると大変危険です。特に棟瓦がずれると棟全体の崩壊につながるため、棟の直線が乱れていないか目視しましょう。

加えて、瓦同士の接合部を埋めている漆喰の剥がれ・ひび割れも点検ポイントです。漆喰の劣化は瓦の固定力低下につながり、剥がれた部分から雨水が侵入すると下地木材を腐らせます。棟の漆喰に剥離がないか、剥がれ落ちた欠片が屋根に溜まっていないか確認してください。

セメント瓦・コンクリート瓦の場合は10年ごとの再塗装で防水性を保つことで、30年以上の耐用年数が期待できます。重い瓦屋根は地震時にズレが生じやすいため、定期点検とあわせて耐震金具の緩みなどもチェックし、必要に応じて瓦の固定補強をすると安心です。

さらに和瓦屋根では棟に積んだ熨斗瓦(のし瓦)を留める銅線やビスの緩みがないかも専門家にチェックしてもらうと良いでしょう。

瓦屋根は他の屋根材に比べメンテナンス頻度が少なく済みますが、放置せず異常箇所の補修を行うことが重要です。

割れた瓦の差し替えやずれた瓦の再設置は早めに対処し、漆喰が劣化していれば該当部位の塗り直し(棟の漆喰詰め直し工事)を行います。

スレート屋根(コロニアル・カラーベスト)

化粧スレート屋根はセメントに繊維等を混ぜ薄い板状に成型し、表面を塗装した屋根材です。和風住宅から洋風住宅まで広く普及しており、初期コストが低い反面、定期的な塗装メンテナンスが必要になります。

スレート屋根は定期的な塗装が寿命を左右します。前述のとおり約10年ごとに再塗装するのが一般的で、塗料のグレードによってはもう少し長持ちする場合もあります。

再塗装時には高圧洗浄で苔や汚れを落としてから施工し、防水性を回復させます。塗り替えを怠ると防水機能が失われ、スレート自体の寿命を縮めるので注意しましょう。

スレート自体の耐用年数は約20年ですが、防水機能は表面塗装によって維持されているため、8~10年程度で塗膜が劣化してきます。

したがって築8~10年目に一度専門点検を受け、再塗装や補修の必要がないか判断するのが望ましいでしょう。その後も塗り替えごとに同程度のスパンで点検・メンテを繰り返すことで、スレート屋根を長持ちさせられます。

スレート屋根で特に注意すべきは塗膜の劣化です。色褪せが見られれば防水性能低下のサインなので、塗り替え時期と考えます​。塗膜劣化に伴い吸水性が高まると、表面にコケやカビが繁殖しやすくなります。

苔・カビが生えていないか、発生している場合は広範囲に及んでいないか確認しましょう​。

またスレート材自体のひび割れ・欠けも点検ポイントです。

屋根材の劣化

経年や踏み割り、飛来物衝突で割れることがあり、割れ目から雨水が侵入すると下地を腐食させます。棟板金を留める釘の浮き(抜け)も起こりやすい箇所なのでチェックが必要です。スレートは薄く割れやすいため、劣化が進んだ屋根には人が上らないほうが安全です。

気候や環境要因による影響

台風シーズン到来!屋根を守るための補強方法と最新対策

建物の立地する環境によって、屋根へのダメージの種類や点検の重要度も変わります。お住まいの地域の気候に応じて、点検頻度や内容を調整しましょう。

台風や暴風雨の後は、屋根に目立った被害がなくても必ず点検する習慣をつけましょう。強風で瓦のズレ・飛散、スレートや板金のめくれ、アンテナの倒壊などが起きている可能性があります。実際、台風直後には瓦のずれや破損、雨樋の外れがないか目視でチェックすることが推奨されています。特に秋の台風シーズン後は入念な点検が必要です。被害が小さいうちに補修すれば修理費用も抑えられるため、台風が過ぎたら晴れた日に屋根全体を確認しましょう。

雪国では、冬場の積雪が屋根に大きな負担をかけます。降雪期には瓦や屋根材の割れ・変形、雪の重みでの軒先たわみ、雪下ろし作業による瓦の欠けなどが起こりえます。春先(雪解け後)に屋根点検を行い、冬の間に生じたダメージをチェックすることが重要です。例えば、凍結と融解を繰り返すうちにスレートやコンクリート瓦に凍害(表面の剥離や割れ)が生じることがあります。雪止め金具の緩みや破損、雨樋への氷詰まりによる変形なども確認しましょう。積雪地域では降雪前の秋にも事前点検を行い、雪の滑落を助ける融雪装置や雪止めの状態を確認するとベターです。

海に近い地域では潮風による塩害に注意が必要です​。海水の飛沫に含まれる塩分が風で運ばれ屋根に付着すると、金属部品の腐食が早まります。ガルバリウム鋼板など金属屋根のメーカー保証でも「海岸から○m以内の塩害地域は保証対象外」とされることがあるほどで、沿岸部では通常以上のメンテナンスが求められます。

具体的には錆びの発生しやすい金属部(棟板金・釘・ビスなど)を頻繁に点検し、年に数回は水洗いで塩分や汚れを洗い流すと良いでしょう。塩害地域では塗装の劣化進行も早いため、塗り替えサイクルを短め(例えば通常15年のところを10年程度)に計画することも検討してください。なお、塩害は瓦屋根でも影響があります。瓦を留める釘や金具が金属製の場合、錆びて緩む恐れがあるため、瓦屋根だからと油断せず定期的にチェックしましょう。

設置義務化に向けたスケジュール

このように、台風・豪雨・地震といった自然災害の直後や、冬季・海沿いなど過酷な環境にさらされた後には臨時の屋根点検が不可欠です。立地条件に応じて点検計画を調整し、被害の早期発見に努めてください。

点検方法と専門業者による点検頻度

自宅の屋根を自分で点検する場合は、絶対に屋根の上に無理に上がらないことが鉄則です。高所作業は非常に危険で、慣れていない人が登ると思わぬ事故につながります。実際、毎年プロの屋根職人でも転落事故が起きているほどです。さらに、劣化した屋根材は人が踏むだけで割れることもあり、屋根の構造を把握していないと弱い部分を踏み抜いて屋根を傷めてしまう恐れもあります。そのため、一般の方は屋根に上らずにできる安全な点検方法で確認するに留め、詳細な点検や補修の判断はプロに任せるのが賢明です。

地上や高所から目視で確認できる範囲をチェックします。双眼鏡を使えば地上からでも屋根表面の大まかな異常を捉えられます。2階建ての場合、2階の窓やベランダから下屋根(一階の屋根)を観察すると全体像を把握しやすいでしょう。見るべきポイントは前述した破損・ズレ・色あせ・コケ・雨樋の詰まりなどで、遠目にも分かる破損は見落とさないはずです。加えて、室内側から雨漏りのサイン(天井のシミ、壁紙の浮き)を点検することも有効です。セルフチェックは年に1回程度、および台風直後など適宜行い、小さな異変も見逃さないようにします。

金属屋根

プロの屋根点検では、作業員が実際に屋根に上ったりドローンや高所カメラを駆使したりして、細部まで徹底的な調査を行います。専門家は屋根材や下地構造に関する知識が豊富で、素人では見落とす初期の劣化兆候も見抜くことができます。例えば、一見問題なさそうに見えるコーキング(シーリング)の劣化や、小さな錆・クギの浮きなどもプロなら早期に発見し適切な対処法を提案してくれます。また必要に応じて瓦を一部持ち上げて下地を確認したり、赤外線カメラで雨漏り箇所を特定したりと、多角的な点検が可能です。自分でできるチェックは限られますが、プロの点検なら屋根裏や下地まで含めた包括的な診断が受けられるでしょう。

プロによる定期点検は5年おきくらいで実施するのが適切とされています。少なくとも10年に一度はプロの診断を受け、必要なメンテナンスを明確にしておくと安心です。

特に築15年を過ぎると屋根材の劣化が目立ち始めることが多いので​、住宅の耐用年数や前回の修理から長期間経過している場合は早めに点検を依頼しましょう。

また、大きな台風や地震の後は臨時で点検をお願いすることをおすすめします。最近では無料または安価で屋根点検を行う業者も多く、住宅メーカーや工務店が定期点検サービスを提供していることもあります。築年数や状況に応じて柔軟にプロの力を借りましょう。

屋根の点検のみを業者に依頼する場合、5,000~15,000円程度の費用が一般的な相場です。ただし「点検商法」には注意が必要で、極端に安価または無料点検をうたい強引に工事契約を迫る悪徳業者も存在します。信頼できる業者に依頼するために、相見積もりを取ったり実績や口コミを確認したりしましょう。 なお、雨漏り修理や屋根工事の見積もりの一環として点検する場合は無料になるケースも多いです。まずは家を建てたハウスメーカーやリフォーム会社に相談し、アフターサービスとして点検を受けられないか問い合わせてみるのも良いでしょう。

定期的な点検と早めのメンテナンス実施が、屋根の寿命を延ばし住まい全体の安全性を保つことにつながります。大切な我が家を長持ちさせるために、今回ご紹介したポイントを踏まえて計画的に屋根のチェックを行ってください。必要に応じて専門家の力を借りることで、安心して快適な住環境を維持できるでしょう。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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