屋根工事の流れと期間を職人が解説|葺き替え・カバー工法・塗装の工程と日数

はじめに

「屋根の工事って、いったい何日くらいかかるの?」——ご相談をいただくとき、費用と並んで必ずと言っていいほど聞かれるのが工期のことです。工事中は足場が組まれ、職人が屋根の上で作業しますから、生活への影響が気になるのは当然のことだと思います。

ところが屋根工事と一口に言っても、葺き替え・カバー工法・屋根塗装では、行う作業も日数も大きく異なります。この記事では、創業70年・板金職人として親子三代で屋根に向き合ってきた立場から、着工から完了までの「工程の中身」と「工期の目安」を、工法ごとにわかりやすく整理します。あわせて、工期が延びてしまう要因や、工事中にお施主様に気をつけていただきたいこともご紹介します。

屋根工事は大きく3種類|まず全体像をつかむ

屋根のリフォーム工事は、大きく次の3つに分けられます。どれを選ぶかで工程の数も工期も変わるため、まずは全体像をつかんでおきましょう。

  • 葺き替え(ふきかえ)……既存の屋根材をすべて撤去し、下地から作り直して新しい屋根材を葺く工事。屋根を一新でき、下地の補修まで踏み込めます。
  • カバー工法(かぶせ葺き)……既存の屋根材を残したまま、その上に新しい屋根材をかぶせる工事。撤去や廃材処分が少なく、工期・費用を抑えやすい方法です。
  • 屋根塗装……既存の屋根材を塗り替えてメンテナンスする工事。屋根材そのものは交換せず、塗膜で保護します。

それぞれの工事内容と向いているケース、工期の目安を表にまとめました。なお工期はあくまで一般的な目安で、屋根の広さや形状、下地の状態、天候によって前後します。

工法主な工事内容向いているケース工期の目安
葺き替え既存撤去→下地補修→屋根材を新設屋根材や下地の傷みが大きい/屋根を一新したい約7〜14日
カバー工法既存の上に防水紙+新屋根材をかぶせる下地が健全/費用と工期を抑えたい約5〜12日
屋根塗装洗浄→下塗り→中塗り→上塗り屋根材は健全で塗膜の劣化が中心約5〜10日
工法別の概要と工期の目安(30坪・2階建てを想定した一般的な目安)

【共通】着工までの流れと足場の設置

どの工法を選んでも、工事の前には共通の準備があります。ここを丁寧に行うことが、結果的にスムーズな工事と仕上がりにつながります。

現地調査・お見積もり・ご契約・近隣あいさつ

はじめに屋根に上って現地調査を行い、屋根材の種類や劣化の状態、下地の傷み具合を確認します。ここで撮影した写真をもとに、必要な工事と数量を出してお見積もりを作成します。ご契約後は、着工日や工期、作業時間をお伝えし、工事前に近隣のお宅へごあいさつに伺います。足場の組み立てや作業には音が伴いますので、事前のひと声がトラブルを防ぐ大切な工程です。調査からご契約までは数日〜数週間と、ご検討の状況によって幅があります。

足場の設置(半日〜1日)

工事初日は、まず屋根のまわりに仮設足場を組みます。足場は職人の安全を守るだけでなく、塗料や粉じんの飛散を防ぐメッシュシートを張るためにも欠かせません。一般的な戸建てなら半日〜1日ほどで設置が完了します。「足場代がもったいない」と感じる方もいらっしゃいますが、安全と仕上がりの品質を支える必要なコストとお考えください。

屋根を囲うように組まれた仮設足場。屋根材の上に足場のジャッキベースが据えられている様子
工事初日に組む仮設足場。安全確保と飛散防止のため、どの工法でもまず足場から始まります

葺き替え工事の工程と日数

葺き替えは、屋根をいったん下地まで戻して作り直す、もっとも根本的な工事です。工程は大きく次の5ステップに分かれます。

葺き替え工事の流れを示した5ステップの図。撤去・下地補修・ルーフィング・屋根材の施工・板金仕上げの順
図:葺き替え工事の流れ(5つのステップ)

①既存の屋根材を撤去・処分する

まず古い屋根材をはがして撤去します。瓦であれば1枚ずつ降ろし、スレートや金属屋根もていねいに取り外します。撤去した屋根材は廃材として分別し、適正に処分します。後述しますが、古いスレートにはアスベスト(石綿)を含むものがあり、その場合は法令に沿った扱いが必要になります。撤去と清掃で1〜2日ほどが目安です。

②野地板(下地)を点検・補修する

屋根材をはがすと、その下にある野地板(のじいた)や垂木といった下地が現れます。長年の雨や、過去の雨漏りで傷んでいることも少なくありません。葺き替えの最大のメリットは、この下地を直接確認し、傷んだ部分を増し張りや張り替えで補修できる点にあります。下地から建て直せるのは葺き替えならではで、屋根の寿命を根本から延ばすことにつながります。

③ルーフィング(防水紙)を敷く

下地が整ったら、ルーフィング(防水紙・下葺き材)を敷きます。じつは雨水を最終的に止めているのは屋根材ではなく、このルーフィングです。屋根材のすき間から入った雨水も、ルーフィングが受け止めて軒先へ排水します。だからこそ、私たち職人がもっとも神経を使う工程の一つです。

ルーフィングは軒先から棟へ向かって、必ず下から上へ貼り重ねていきます。こうすることで、上の段が下の段に水を流し、継ぎ目から雨水が入りにくくなります。重ねしろ(重ねる幅)にも基準があり、住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書」などでは、流れ方向(上下)で100mm以上、長手方向(左右)で200mm以上が標準とされています。この重ねが足りないと、せっかく防水紙を敷いても雨漏りの入り口になってしまいます。

ルーフィングの重ねしろを示した図。上下は100mm以上、左右は200mm以上で、軒先から棟へ下から上に貼り重ねる
図:下葺き材(ルーフィング)の重ねしろの基準。数値は標準的な目安です

④新しい屋根材を葺く

防水の下ごしらえができたら、いよいよ新しい屋根材を葺いていきます。ガルバリウム鋼板やSGL(エスジーエル)などの金属屋根、軽量瓦など、ご希望と建物に合わせて選んだ屋根材を、軒先から棟へ順に固定します。屋根材ごとに留め方やビス・釘のピッチが決まっており、メーカーの施工要領に従って一枚ずつ確実に納めていきます。屋根の広さにもよりますが、ここで2〜4日ほどかかります。

⑤棟・板金を取り付け、仕上げ・片付け

最後に、屋根のてっぺんの棟板金や、軒先・けらばの水切りといった板金部材を取り付けます。屋根の継ぎ目や端部は雨仕舞いの要で、板金職人の腕が出るところです。取り付けが終わったら清掃と最終点検を行い、問題がなければ足場を解体して工事完了です。葺き替え全体の工期は、足場の設置・解体を含めて約7〜14日が目安になります。

葺き替えで仕上がった金属屋根(縦葺き)。足場が残る施工現場で、棟板金まで納まった完成の様子
葺き替えで一新した金属屋根。棟板金・水切りまで納め、清掃・点検を経て足場を解体します

カバー工法の工程と日数

カバー工法は、既存の屋根材を撤去せず、その上から新しい屋根材をかぶせる工事です。撤去や廃材処分の工程が省けるため、葺き替えより工期・費用を抑えやすいのが特長です。スレート屋根の改修でよく選ばれます。

工程は、足場の設置のあと、棟板金など既存の突起部を撤去・清掃し、既存屋根の上に防水紙(ルーフィング)を敷き、その上に軽量の金属屋根材を下から葺き上げ、最後に棟板金などを取り付けて仕上げます。屋根が二重になるため断熱・遮音の面でもメリットがあります。一方で、下地が雨漏りなどで傷んでいる場合や、瓦屋根のように上に重ねられない屋根には向きません。工期の目安は足場を含めて約5〜12日です。

屋根工事の現場写真
ガルバリウム鋼板(縦葺き)の施工例。

屋根塗装の工程と日数

屋根塗装は、屋根材そのものは交換せず、塗膜を塗り替えて保護するメンテナンスです。スレートや金属屋根で、屋根材は健全でも色あせやサビなど塗膜の劣化が進んだ場合に向いています。基本の流れは「高圧洗浄→下地調整→下塗り→中塗り→上塗り」です。

意外と見落とされがちなのが、各工程に必要な「乾燥時間」です。高圧洗浄のあとは、屋根が濡れたまま塗ると塗料が密着せず、はがれの原因になるため、一般的に1日程度(できれば24〜48時間)しっかり乾かします。下塗り・中塗り・上塗りの間にもそれぞれ乾燥時間が必要で、気温や湿度が低い冬場は1日に1工程しか進められないこともあります。スレート屋根では、塗料で屋根材のすき間がふさがらないよう「縁切り(タスペーサー)」という作業を入れることもあります。これらを含めた工期の目安は約5〜10日です。

工法別の工期・工程まとめ

ここまでの工期を一目で比べられるよう、グラフにまとめました。同じ「屋根工事」でも、工程の数が多い葺き替えほど日数がかかる傾向があるとわかります。

屋根塗装・カバー工法・葺き替えの工期の目安を比べた横棒グラフ。塗装5〜10日、カバー5〜12日、葺き替え7〜14日
図:工法別の工期の目安くらべ(30坪・2階建てを想定した一般的な目安)

工期が延びる主な要因

お伝えした日数はあくまで標準的な目安です。実際には、次のような事情で工期が延びることがあります。あらかじめ知っておくと、工事が予定より長引いても落ち着いて対応できます。

天候(雨・雪・強風)

屋根工事は高所での作業で、濡れた屋根は滑って危険なうえ、防水紙や塗料は雨天では正しく施工できません。雨・雪・強風の日は作業を見合わせるため、その分だけ工期が後ろにずれます。梅雨や台風の時期は、数日単位で延びることも珍しくありません。

下地の傷みが想定より大きいとき

葺き替えで屋根材をはがしてみると、野地板が思った以上に傷んでいた、というケースがあります。下地の補修や張り替えが追加になれば、その分の日数と費用がかかります。屋根の中は実際に開けてみないとわからない部分があるため、信頼できる業者は、追加が必要になった時点できちんと説明し、ご了承を得てから進めます。

アスベスト含有スレートの場合

古いスレート屋根には、アスベスト(石綿)を含む製品があります。アスベストは2004年に含有率1%超の建材の製造が原則禁止され、2006年には0.1%超のものが全面的に禁止されました。そのため、おおむね2004年頃までに建てられた住宅のスレート屋根は、アスベストを含んでいる可能性があると考えられます。

アスベストを含む屋根材を撤去(葺き替え)する場合は、飛散を防ぐ措置や適正な処分が必要で、その分の手間と費用がかかります。また2022年4月以降は、一定の解体・改修工事で石綿の有無を事前に調査することが義務づけられています。「撤去せず上にかぶせるカバー工法を選ぶ」という選択肢もあり、屋根の状態と費用を見比べて判断することになります。詳しくは専門業者にご相談ください。

工事中にお施主様が気をつけたいこと

工事を気持ちよく進めるために、お施主様側で少しご協力いただけると助かる点がいくつかあります。まず、足場を組むため建物の外周に1m程度のスペースが必要になります。鉢植えや自転車などは、あらかじめ移動しておいていただくとスムーズです。塗装工事の際は塗料やにおい、粉じんが出るため、洗濯物は室内干しをおすすめします。日中は足場の昇降や屋根からの作業音が出ますので、在宅勤務や小さなお子様がいるご家庭は、工程表を確認しておくと安心です。基本的に工事中もふだんどおり生活していただけますが、気になることは遠慮なく職人にお声がけください。

まとめ

屋根工事の工期は、屋根塗装で約5〜10日、カバー工法で約5〜12日、葺き替えで約7〜14日が一般的な目安です。いずれも足場の設置から始まり、ルーフィングや板金といった「見えなくなる部分」をていねいに仕上げることが、屋根の寿命と雨漏り防止を左右します。日数はあくまで目安で、天候や下地の状態によって前後しますが、各工程の意味を知っておくと、業者の説明も理解しやすくなり、納得して工事を任せられるはずです。

屋根修理の匠ひおき(株式会社日置)は、創業70年・親子三代の板金職人が、撤去から下地補修、ルーフィング、板金仕上げまで自社で直接施工しています。「うちの屋根はどの工法が合う?」「工期はどれくらい?」といったご相談も、現地をしっかり拝見したうえでお答えします。屋根のことでお悩みの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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