ガルバリウム鋼板とSGL(エスジーエル)の違いとは?次世代金属屋根材の特徴を職人が解説

はじめに

金属屋根のリフォームや葺き替えを調べていると、「ガルバリウム鋼板」とよく似た「SGL(エスジーエル)」という言葉を目にすることが増えてきました。「何が違うの?」「SGLのほうが少し高いけれど、その価値はある?」と迷う方も多いはずです。

結論から言うと、SGLはガルバリウム鋼板を“進化させた”次世代の金属屋根材で、とくにサビに強いのが特徴です。私たちは創業70年、板金職人 親子三代で金属屋根の施工に携わってきました。その視点から、両者の違い、価格、海沿いでの使い方、そして選び方まで、できるだけ分かりやすく解説します。

金属屋根の例。ガルバリウム鋼板やSGLは、軽量で錆びにくく、屋根リフォームの定番材料です。

そもそもガルバリウム鋼板とは?(おさらい)

ガルバリウム鋼板は、鉄(鋼板)の表面を「アルミニウム55%・亜鉛・シリコン」のめっきで覆った金属建材です。1982年に国内で初めて生産されて以来、軽量で錆びにくく、デザイン性も高いことから、屋根や外壁の定番材料として広く普及しました。瓦やスレートより大幅に軽く、建物への負担が小さいため、地震に有利な点も人気の理由です。

このアルミニウム「55%」という比率が、実はとても重要です。アルミの耐食性と、亜鉛が持つ「犠牲防食(鉄の代わりに先に溶けて鉄を守る働き)」の両方をバランスよく発揮できる、絶妙な配合になっています。ガルバリウム鋼板の詳しい特徴は「ガルバリウム鋼板の屋根が新築で人気な理由」もご覧ください。

一方で、ガルバリウム鋼板にも弱点はあります。鉄を含むため、もらい錆(他の金属のサビが移ること)には注意が必要で、塩害の厳しい海沿いではサビの進行が早まることがあります。また、金属ゆえに熱が伝わりやすく、雨音も響きやすいという面があります。これらは断熱材が一体になった製品や下葺き材で対策できますが、こうした弱点をさらに補ったのが、次にご紹介するSGLです。

SGL(エスジーエル)鋼板とは?

ガルバリウムに「マグネシウム」を加えた次世代モデル

SGLは、ガルバリウム鋼板のめっきに新たに「マグネシウム(Mg)」を加えた金属屋根材です。ガルバリウムの優れためっき構造はそのままに、マグネシウムの働きでめっき層をさらに強化しています。製造元である日鉄鋼板によると、SGLはガルバリウム鋼板の「3倍超」の耐食性(錆びにくさ)を実現しているとされています(※同社の複合サイクル試験の腐食減量測定結果からの推定値)。なお、加工性がよく、塗装(カラー鋼板)の下地としても適しているため、さまざまな屋根・外壁製品の素材として使われています。

名前の由来と登場の背景

「SGL」の「S」は、Superior(上質)・Special(特別)・Super(超越)といった優れた特性を表す言葉の頭文字から、「GL」はガルバリウムの通称から取られています。日鉄鋼板は1996年から次世代ガルバリウムの開発に着手し、2001年にマグネシウムを添加した試作を経て、2013年に「エスジーエル」として誕生させました。現在では、多くの金属屋根製品の素材として採用が広がっています。

金属屋根材の進化を示す年表。1982年ガルバリウム鋼板の国内初生産から2013年のエスジーエル誕生までの流れ
図1:金属屋根材の進化。ガルバリウム鋼板(1982年)から、マグネシウムを加えたエスジーエル(2013年)へと進化しました。

ガルバリウムとSGLの違い【3つのポイント】

① めっきに「マグネシウム」が入っている

最大の違いは、めっきの成分です。ガルバリウムが「アルミニウム55%・亜鉛・シリコン」なのに対し、SGLはそこに「マグネシウム約2%」が加わります。このわずかなマグネシウムが、耐食性を大きく引き上げる鍵になっています。マグネシウムが多すぎても少なすぎても効果が落ちるため、メーカーは試験を重ねて最適な「2%」に調整しています。

ガルバリウム鋼板とSGLのめっき組成を比較した図。SGLにはマグネシウム約2%が追加されている
図2:めっき組成の比較。SGLはガルバリウムの組成にマグネシウム約2%を加えています(一般的な代表値)。

② サビに強い(とくに切断端部・キズ)

金属屋根は、施工で切断した端部(こぐち)やキズの部分から錆びが進みやすい、という弱点があります。鉄の素地(地鉄)が露出するためです。屋根材は大きな板から必要な寸法に切り出し、現場でも納まりに合わせて加工するため、切り口やビスの貫通部がどうしても生じます。SGLはマグネシウムの働きで、こうした露出部にも緻密で安定した保護皮膜をつくり、錆びの進行を強力に抑えます。マグネシウムは亜鉛よりもイオン化しやすく、犠牲防食の働きを高めてくれるためです。屋根は切り口やビス穴が必ず生じるので、この「端部の強さ」は実用上とても大きなメリットです。

SGLの切断端部でマグネシウムを含む保護皮膜が地鉄の露出部を覆い、錆びの進行を抑えるメカニズムの断面図
図3:切断端部の保護イメージ。SGLはマグネシウムを含む保護皮膜が地鉄の露出部を覆い、錆びの進行を抑えます。

③ 海沿いでも使いやすい

塩害を受けやすい海沿いでは、金属屋根のメーカー保証に「海岸からの距離」の条件が設けられることがあります。製品やメーカーによって基準は異なりますが、一般的な目安として、ガルバリウムでは海岸から数km以内が保証の対象外となる一方、SGLではその範囲がより狭く(海岸に近くても使える)設定されることが多いとされています。塩害が心配な地域でも採用しやすいのは、SGLの強みのひとつです。具体的な条件は採用する製品の保証内容を必ず確認しましょう。

項目ガルバリウム鋼板SGL(エスジーエル)
めっき成分アルミ55%・亜鉛・シリコン+マグネシウム約2%
耐食性(錆びにくさ)高いさらに高い(メーカー試験で3倍超)
切断端部・キズへの強さ標準強い
海沿いでの使いやすさ距離条件ありより使いやすい傾向
価格標準少し高め
登場時期1982年〜2013年〜

価格はどのくらい違う?

SGLはガルバリウムより高性能なぶん、材料費はやや高くなる傾向があります。ただし、その差は製品や施工内容によってさまざまです。屋根工事の費用は材料費だけでなく、足場・撤去・施工手間なども含まれるため、屋根全体の工事費で見ると、ガルバとSGLの総額の差は思うほど大きくならないことも少なくありません。むしろ、サビに強く長持ちする分、塗り替えや葺き替えの周期を延ばせる可能性があり、長い目で見たトータルコストでは有利になることもあります。一般的な目安として、材料の単価差は数%〜十数%程度とされることが多いですが、屋根の形状・面積・製品グレードによって変わります。正確な金額は、必ず見積りで確認してください。

SGLでもサビる?知っておきたい注意点

「錆びにくい」は「錆びない」ではない

SGLは非常にサビに強い素材ですが、「絶対に錆びない」わけではありません。鉄粉が付着して起こる「もらい錆」や、深い傷を長く放置した場合などは、SGLでもサビが出ることがあります。性能を長く保つには、数年に一度の点検と、ほこりや塩分を洗い流す清掃、必要に応じた塗装メンテナンスが効果的です。「高性能だから何もしなくてよい」ではなく、「メンテナンスの手間を減らせる」材料と考えると、選んでから後悔がありません。

断熱・雨音は「製品選び」で対策する

ガルバもSGLも金属である以上、熱の伝わりやすさや雨音は共通の課題です。これは素材(ガルバかSGLか)の違いというより、断熱材が裏打ちされた製品を選ぶ、適切な下葺き材(ルーフィング)を使うといった「製品・工法」で対策します。屋根材を選ぶときは、母材がSGLかどうかだけでなく、断熱性能や製品の保証内容もあわせて確認すると安心です。

ガルバリウムとSGL、どちらを選べばいい?

迷ったときの考え方として、海沿いなど塩害が心配な地域の方や、できるだけ長持ちさせたい方にはSGLがおすすめです。一方で、初期費用をできるだけ抑えたい場合や、塩害の心配が少ない地域であれば、ガルバリウムでも十分な性能があります。

なお、最近では人気の金属屋根製品の多く(たとえば「スーパーガルテクト」など)がSGLを採用しており、製品を選んだ結果、自然とSGLになっているケースも増えています。屋根材選びは、お住まいの立地・ご予算・どれだけ長く使いたいかによって最適解が変わります。金属屋根への葺き替えやカバー工法をお考えの方は「屋根の葺き替えでガルバリウム鋼板が選ばれる理由」や「屋根カバー工法」もあわせてご覧ください。

製品を選ぶ際は、メーカー保証の年数にも注目しましょう。金属屋根の保証は「穴あき(赤錆による穴)」「赤錆」「塗膜の変色・退色」などの項目ごとに年数が定められており、SGLを採用した上位グレードの製品ほど保証年数が長い傾向があります。保証は施工方法や定期点検が条件になることもあるため、内容をよく確認しておくと安心です。

屋根工事の現場写真
金属屋根の端部(軒先)の例。切り口やエッジの錆びにくさは、屋根の寿命を左右する大切なポイントです。

まとめ

SGL(エスジーエル)は、ガルバリウム鋼板にマグネシウムを加えてサビへの強さを高めた“次世代ガルバリウム”です。とくに切断端部やキズに強く、海沿いでも使いやすいのが大きな魅力。価格はやや上がりますが、長持ちを重視するなら有力な選択肢になります。とくに、海に近い地域や、長く住み続けたいお住まいでは、その差が効いてきます。

とはいえ、実際の屋根づくりでは、素材そのものだけでなく、製品の形状(縦葺き・横葺き)や下地の状態、施工の丁寧さも仕上がりと寿命を大きく左右します。ガルバとSGLのどちらが向いているか迷われたら、立地やご予算もふまえて、屋根と板金の専門家にご相談ください。お住まいに合った最適な屋根材と工法をご提案します。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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