瓦屋根の漆喰(しっくい)とは?役割・劣化サインと詰め直し・取り直しを職人が解説

はじめに

瓦屋根の点検で「漆喰(しっくい)が傷んでいますね」「そろそろ詰め直しをしましょう」と言われて、どこの何を指しているのかピンとこなかった、という方は少なくありません。漆喰は、瓦屋根のてっぺん(棟)に使われている白い部材で、普段はあまり目立ちませんが、瓦屋根を長持ちさせるうえでとても大切な役割を担っています。

瓦そのものは50年以上ももつ非常に丈夫な屋根材ですが、漆喰の寿命はそれよりずっと短く、定期的な手入れが欠かせません。漆喰を放っておくと、棟の内部の土が流れ出し、瓦のズレや雨漏り、最悪の場合は棟の崩れにつながることもあります。この記事では、瓦屋根も手がける創業70年・親子三代の職人の視点から、漆喰の役割と劣化のサイン、そして「詰め直し」と「棟の取り直し」というメンテナンスの違いまでをわかりやすく解説します。なお瓦屋根全体のメンテナンスについては「瓦屋根の寿命とメンテナンス完全ガイド」もあわせてご覧ください。

漆喰(しっくい)とは?瓦屋根での役割

漆喰は消石灰を主成分とした建材

漆喰とは、消石灰(しょうせっかい)を主成分に、繊維やのりなどを混ぜて練り上げた建材です。古くからお城の白壁や蔵などにも使われてきた、日本の伝統的な建材で、固まると硬く、雨水に強く、調湿性もあるのが特徴です。瓦屋根では、棟(むね)と呼ばれる屋根のてっぺんの部分に使われています。白い帯のように見える部分が漆喰です。

近年は、あらかじめ材料が調合された「既調合漆喰」や、防水性を高めた「なんばん漆喰」が使われることが増えました。色も、白いものだけでなく、いぶし瓦に合わせた黒や灰色のものもあり、屋根の色調に合わせて選ばれます。

漆喰はどこに使われている?

漆喰がもっとも多く使われているのは、屋根のてっぺんを水平に走る「棟」です。瓦屋根の棟は、瓦をただ並べているのではなく、内部に土台となる土(葺き土)やなんばん漆喰を盛り、その上にのし瓦や冠瓦(かんむりがわら)を積み重ねてつくられています。漆喰は、その土台の側面を覆って雨水から守るように塗られています。このほか、鬼瓦のまわりや、屋根の傾斜の端(けらば)など、瓦と瓦のすき間や取り合い部分にも使われます。普段は地上から見えにくい場所ばかりですが、いずれも雨水が入り込みやすい大切な部分です。

図1:瓦屋根の棟まわりの構造と漆喰の位置

漆喰が担う3つの役割

漆喰の役割は大きく3つあります。1つ目は、棟の内部の土台(土)を雨水から守ることです。土がむき出しのままだと雨で流れ出してしまうため、漆喰がフタの役割をして土台を守っています。2つ目は、瓦を固定して安定させることです。漆喰が瓦どうしをつなぎとめ、棟瓦のズレや浮き、強風での飛散を防いでいます。3つ目は、美観です。白い漆喰が棟まわりをすっきりと引き締め、屋根全体の見た目を整えます。小さな部材に見えて、瓦屋根の寿命と見た目の両方を左右する、縁の下の力持ちのような存在なのです。

写真1:瓦屋根の棟まわり。白い帯のように見えるのが漆喰です

漆喰の寿命と見逃したくない劣化サイン

漆喰の寿命は、一般的な目安として20年程度とされます。瓦そのものが50〜100年もつのに対し、漆喰は先に傷んでいくため、瓦屋根では漆喰のメンテナンスが繰り返し必要になります。漆喰が傷む主な原因は、長年の紫外線や雨、夏冬の寒暖差、寒冷地では凍結と融解の繰り返し(凍害)です。こうした負担を毎日受け続けることで、少しずつもろくなっていきます。

漆喰の主な劣化サインを5つにまとめた図。剥がれ・崩れ、割れ・ひび、黒ずみ・苔、土の流出・露出、棟のゆがみ・瓦ズレ
図2:見逃したくない漆喰の劣化サイン

次のようなサインが見えたら、点検や補修の時期です。もっとも分かりやすいのが、漆喰の「剥がれ・割れ・崩れ」です。白い漆喰がひび割れたり、ボロボロと崩れ落ちたりしている状態で、地上に白い破片が落ちていることもあります。次に、漆喰の表面が黒ずんでいる場合は、カビや苔の発生、あるいは汚れの付着のサインです。漆喰が剥がれて内部の土が見えている、雨のあとに土が流れ出している、といった状態はかなり進行しています。さらに、棟全体がゆがんで波打っている、瓦がズレている、室内に雨漏りが出ているといった症状は、漆喰の劣化を通り越して棟の土台まで傷んでいる可能性が高い、危険なサインです。

写真2:割れ・崩れが進んだ漆喰。内部の土が見え始めています

これらを放置すると、土台の土が流れて棟瓦を支えきれなくなり、地震や台風で棟が崩れる危険が高まります。崩れた瓦が落下すれば、人やものを傷つける事故にもつながりかねません。漆喰は屋根の高い位置にあって普段は見えないため、瓦屋根は丈夫だからと油断せず、築15〜20年を過ぎたら一度、また地震や台風のあとにも、専門業者に棟まわりを点検してもらうと安心です。

漆喰のメンテナンス|詰め直しと棟の取り直し

漆喰のメンテナンスには、傷み具合に応じて大きく「漆喰の詰め直し」と「棟の取り直し」の2つがあります。

漆喰の詰め直しと棟の取り直しを劣化の程度で比較した図。内容・向いている状態・目安を整理
図3:漆喰の詰め直しと棟の取り直し

漆喰の詰め直し(劣化が軽度な場合)

漆喰の剥がれや崩れが比較的軽く、棟そのものはしっかりしている場合に行うのが「詰め直し」です。古くなった漆喰を取り除き、新しい漆喰を詰め直して仕上げます。棟を解体しないため費用や工期を抑えられ、漆喰メンテナンスの基本となる工事です。一般的な目安として、20年前後を一つの周期と考えるとよいでしょう。古い漆喰の上から重ね塗りをすると、すき間に水を呼び込みかえって傷みを早めることがあるため、必ず古い漆喰を除いてから詰め直すのが基本です。

棟の取り直し(劣化が重度な場合)

棟瓦がズレている、漆喰がほとんど無くなっている、棟が波打っているなど、傷みが大きい場合は「棟の取り直し」が必要です。これは、いったん棟瓦を解体し、土台からつくり直して瓦を積み直す工事です。費用と手間はかかりますが、根本からやり直すため確実で、地震や台風に強い棟に生まれ変わらせることができます。

近年は、棟の土台に従来の土ではなく、防水性の高い「なんばん漆喰」を使う湿式工法が主流です。さらに、棟の内部に金具と心材(しんざい)を入れて固定する「ガイドライン工法」を採用すると、地震や強風での棟の崩れに対する備えになります。耐震・耐風を重視する場合は、取り直しのタイミングでこうした補強を検討するとよいでしょう。

工事 主な内容 向いている状態 周期・特徴の目安
漆喰の詰め直し 古い漆喰を除き新しく詰める 漆喰の剥がれ・崩れが軽度 約20年を目安/費用を抑えられる
棟の取り直し 棟を解体し土台から積み直す 瓦ズレ・棟のゆがみなど重度 確実・長持ち/耐震補強も可能
表:漆喰の詰め直しと棟の取り直しの違い(時期・費用は状態により変動)
写真3:棟まわりの補修作業の様子(漆喰・なんばんでの施工)

高所作業はプロへ

漆喰の補修は、市販の材料もあるためDIYを考える方もいますが、屋根の上、それも棟という最も高い場所での作業になります。転落の危険が大きいうえ、誤って既存の瓦を割ったり、漆喰を塗りすぎて瓦のすき間(水の通り道)をふさいでしまい、かえって雨漏りを招いたりすることもあります。漆喰のメンテナンスは、無理をせず瓦屋根を扱える専門業者に依頼するのが安全です。

まとめ

漆喰は、瓦屋根の棟に使われる消石灰主成分の白い建材で、棟内部の土を雨水から守り、瓦を固定し、見た目を整えるという3つの役割を担っています。瓦が50年以上もつのに対し漆喰の寿命は約20年と短く、剥がれ・割れ・崩れ・黒ずみといったサインが見えたら点検の時期です。

メンテナンスは、傷みが軽ければ「漆喰の詰め直し」、棟のゆがみや瓦ズレなど重度なら「棟の取り直し」を選びます。取り直しの際は、なんばん漆喰やガイドライン工法で耐震・耐風性を高めることもできます。漆喰は高所にあり劣化に気づきにくいため、築15〜20年を過ぎたら、また地震や台風のあとには専門業者の点検をおすすめします。瓦屋根を長く守るために、漆喰の傷みは放置せず早めに手を入れましょう。瓦屋根全体のメンテナンスは「瓦屋根の寿命とメンテナンス完全ガイド」、雨漏りが心配な場合は「雨漏りの修理方法とは?:プロが教える対策」もご参照ください。瓦の種類については「瓦の基本:瓦屋根の種類と特徴」もどうぞ。

【出典・参考資料】
・屋根工事専門業者の解説(テイガク/街の屋根やさん 等):漆喰の役割・詰め直しと取り直しの違い・寿命の目安
・全日本瓦工事業連盟ほか「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」:ガイドライン工法(耐震・耐風の棟補強)の考え方
・なんばん漆喰メーカー資料(エスケー化研「シルガード」など):なんばん漆喰・湿式工法
※本文中の寿命・周期・費用などの数値は、屋根の状態・地域・施工条件によって変動する一般的な目安です。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

親子三代続く板金職人による高品質な工事をリーズナブルな価格で

屋根修理見積もりシミュレーター

雨漏り10年保証

最近の施工事例
  1. 大阪府泉佐野市|住友林業の住宅|スーパーガルテクトで屋根カバー工事

  2. 奈良県橿原市で工場・倉庫のスレート屋根改修!リファインルーフによるカバー工事事例

  3. スレート屋根からスーパーガルテクトへのカバー工事 三重県亀山市

オススメのお役立ち情報
  1. ガルバリウム鋼板屋根の縦葺き・横葺きの違いを徹底解説

  2. ガルバリウム鋼板「横暖ルーフ」って何?:横葺き材の人気製品

  3. 自宅の屋根を点検する方法とは?

  4. ガルバリウム鋼板「 スーパーガルテクト」って何?:横葺き材の人気製品

  5. 屋根修理の詐欺「悪徳業者の実態とその手口」

人気のコラム記事
  1. 1

    寒さ暑さ対策に欠かせない屋根・天井断熱材の選び方と注意点

  2. 2

    ガルバリウム鋼板屋根(金属屋根)が雪の多い地域で選ばれる理由とは?

  3. 3

    結露対策に欠かせない小屋裏(屋根裏)換気の重要性について

最新コラム記事
  1. 雨仕舞(あまじまい)とは?防水との違いと雨漏りを防ぐ仕組みを職人が解説

  2. 瓦屋根の漆喰(しっくい)とは?役割・劣化サインと詰め直し・取り直しを職人が解説

  3. アスファルトシングルとは?特徴・寿命・メリットデメリットとメンテナンスを職人が解説

職人コラム|カテゴリー

あわせて読みたいコラム