ガルバリウム鋼板の屋根が新築で人気な理由


近年、新築住宅の屋根材として「ガルバリウム鋼板」の人気が高まっています。これまで日本の住宅では瓦やスレートが主流でしたが、地震への備えやメンテナンスの簡単さ、そしてシンプルなデザインへの関心が強まる中で、ガルバリウム鋼板が注目されるようになりました。特に阪神・淡路大震災以降、「軽くて丈夫な屋根」が求められるようになり、軽量かつ耐久性に優れたガルバリウム鋼板の採用が増加しています。

この記事では、新築住宅でガルバリウム鋼板屋根を選ぶメリットや注意点、他の屋根材との違いについて、わかりやすく解説します。


ガルバリウム鋼板は、鉄をベースにアルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン1.6%の合金をメッキした金属板です。この特殊なメッキ層によって、通常の鉄よりもはるかに錆びにくく、高い耐久性を実現しています。

豊富なカラー

見た目は金属的な光沢がありますが、実際の住宅用屋根材には耐候性塗装が施され、黒やグレー、ブラウンなどさまざまなカラーバリエーションが展開されています。見た目の美しさと素材の強さを兼ね備えた、現代の屋根材として非常に優秀な選択肢です。

ガルバリウム鋼板は、1㎡あたり約5kgと非常に軽量です。これは瓦の約1/6、スレートの約1/3の重さで、屋根の重量が減ることで建物全体の耐震性が高まります。地震の揺れに対する安全性が向上するため、安心感のある住まいづくりに繋がります。日本は地震や台風が多い国ですから、耐震性・防災性の高さは新築時の大きな選定理由になります。

ガルバリウム鋼板は錆びにくく耐用年数(使用できる年数の目安)が長い素材です。一般的にガルバリウム鋼板屋根の寿命は25~30年程度と言われ、20年程度とされるスレート系屋根より10年以上長持ちします​。

実際、定期的な点検や適切なメンテナンスを行えば30年以上も寿命を伸ばすことも可能です。長期間、葺き替えなしで使えるため、「頻繁な塗り替えや屋根の交換はできるだけ避けたい」という方には大きなメリットになります​。

耐久性の高さ=将来的なメンテナンスコスト低減につながるため、新築時に長い目で見てコストを抑えたいというニーズにも合致します。

次世代ガルバリウム鋼版(SGL鋼板)
縦葺き

ガルバリウム鋼板は見た目がシャープでスッキリした印象になる屋根材です​。薄くフラットな板状の屋根材を継ぎ目なく葺くことで、凹凸が少なくモダンな外観に仕上がります。

カラーも自由度が高く、黒やグレーの屋根は現代的な住宅デザインにマッチします。和瓦のような重厚感のある雰囲気よりも、シンプルで現代的な雰囲気を好む方に支持されています​。

レッド系のカラー

実際、多くの建築家や住宅メーカーがデザイン住宅でガルバリウム鋼板屋根を採用しており、街中でもガルバリウム鋼板のスタイリッシュな屋根を目にする機会が増えています。

新築でガルバリウム鋼板屋根が選ばれる一番の理由はそのコストパフォーマンスの良さです。瓦(陶器瓦)は半世紀以上持つ高耐久な屋根材ですが材料費・施工費が高価です。一方、スレート屋根は瓦より安価ですが耐用年数が短めです。ガルバリウム鋼板は「価格は瓦より安く、耐久性はスレートより優れる」という位置にあり​ 、初期費用と耐久年数のバランスに優れています。

実際の施工単価は製品や断熱材の有無によって幅がありますが、スレートより若干高めでも長持ちする分、将来的な修繕や葺き替え費用を考慮するとトータルコストで経済的と言えます。

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メリットの多いガルバリウム鋼板ですが、完璧な素材というわけではありません。

導入後に「こんなはずでは」と後悔しないためにも、デメリットや注意点もしっかり理解しておきましょう。

金属は熱を通しやすいため、ガルバリウム鋼板屋根は夏の暑さ・冬の寒さの影響を受けやすい傾向があります​。

真夏は屋根が高温になりやすく、屋根裏の温度が上昇して室内に熱がこもる原因になり得ます。逆に冬は外気の冷たさが伝わりやすく室温低下につながることもあります。

断熱性の不足による室内環境の悪化

しかし、これはガルバリウム鋼板、単体で見た場合の話で、実際の住宅では断熱材の充填や通気層の確保など施工で対策可能です。ガルバリウム鋼板自体も、裏に断熱材一体型の製品スーパーガルテクトなど)がありますので、断熱性の低さは工夫次第で十分対策が可能です。

例えば、「スーパーガルテクト」というガルバリウム鋼板の製品は、化粧スレートや瓦よりも熱を通しにくいという結果があります。その理由として、「高性能な断熱材(ポリイソシアヌレートフォーム)」が一体型になっていることと、「遮熱性塗膜」が採用されていることが理由です。

断熱材(ポリイソシアヌレートフォーム)
雨音・風音などの騒音問題

ガルバリウム鋼板屋根は雨音が室内に伝わりやすいとも言われます​。金属板に雨粒が当たる音が響くためで、スレートや瓦に比べると雨音が大きく感じられるケースがあります。特に屋根裏に居室(ロフトなど)がある場合や、遮音材を入れていない場合には雨の日に音が気になるかもしれません。

この点も断熱と同様に施工段階で対策可能です。厚みのある断熱材(例えば、スタイロフォーム25㎜等)を敷いたり、天井裏にグラスウール断熱材を厚めに入れることで、雨音はかなり軽減できます。

屋根断熱
スタイロフォーム断熱材
ロックウール
ロックウール

対策を施したガルバリウム屋根では雨音はほとんど気にならないという声もありますが、なかには音に敏感な方もいらっしゃいます。設計者や施工業者としっかり相談し、防音対策を講じることが最適です。

ガルバリウム鋼板屋根は継ぎ目なくぴったり施工できるぶん通気性が低くなりがちです。そのため屋根裏の湿気がこもりやすく、冬場などに結露(水滴)が発生しやすいという指摘があります。結露は放置すると木材の腐食やカビ発生につながるため注意が必要です。

軒先換気と棟換気の組み合わせ

対策としては、屋根裏にきちんと換気口(小屋裏換気)を設けることや、通気層を設ける施工を行うことが挙げられます。要は屋根裏の空気を適度に循環させ、湿気を溜めない工夫が必要です。

ガルバリウム鋼板自体は錆びに強い素材ですが、「金属である以上、錆びるときは錆びる」という点も忘れてはいけません​。特に表面の塗装にもらい錆びが生じたり、メッキ層が傷ついた部分からサビが発生したりする可能性はあります​。ガルバリウム鋼板は硬質な金属板ですが、厚みが0.35〜0.4mm程度と薄いため表面は意外とデリケートです。

トタン(亜鉛メッキ鋼板)
ガルバリウム鋼板ではない

施工時に工具を落としてできた傷や、大きな雹(ひょう)・飛来物によるへこみなどから錆びが広がるケースがあります​。また海沿い地域では塩分による錆のリスクも高まります。

定期的な点検と早めの補修が重要です。傷がついて塗膜が剥がれた箇所はタッチアップ塗装をする、錆が出始めたら早めにケレン(研磨)して再塗装する、といったメンテナンスで長持ちさせることができます。

過剰請求されてお金が無くなってしまった人

ガルバリウム鋼板屋根は高級な瓦ほどではありませんが、スレート屋根などに比べると材料費・施工費がやや高めになる傾向があります​。前述の通りトータルではコスパ良好ですが、「とにかく初期費用を抑えたい」場合には選びにくいこともあります。

ただし製品や工法によって価格帯は様々です。予算に応じてガルバリウム鋼板の中でもシンプルなたて葺きタイプにする、断熱材をなくすなどの調整も可能です。価格面が気になる方は施工店と相談し、複数の屋根材で見積もり比較をすると良いでしょう。


次に、ガルバリウム鋼板屋根と他の代表的な屋根材との比較を見てみましょう。新築で選ばれる屋根材としては、大きく「瓦(陶器瓦)」「スレート(化粧スレート)」「金属系(ガルバリウム鋼板など)」の3種類があります。それぞれ特徴が異なり、一長一短があります。

屋根構造が家全体に与える影響

重さは、瓦 > スレート > ガルバリウム鋼板 の順です。瓦屋根(日本瓦)は1㎡あたり約50~60kgにもなる重い屋根材ですが、スレート(カラーベスト等)は約20kg/㎡、ガルバリウム鋼板は約5kg/㎡程度です。

例えば一般的な屋根(約20坪=66㎡)の場合、瓦屋根はトータルで約5トン、一方ガルバリウム鋼板ならわずか0.86トンと桁違いに軽量です。

この差は耐震性に大きく影響します。地震時、重い瓦屋根は強固な構造で支える必要がありますが、軽いガルバリウム鋼板なら建物への負荷が少なくて済みます。スレートは重量的には中間ですが、ガルバリウム鋼板の軽さは群を抜いています。

コスト面ではスレートが最も安く、次いでガルバリウム鋼板、瓦が高価というのが一般的です​。

具体的な価格は製品グレードや地域によって違いますが、スレート屋根は1㎡あたり4,000~8,000円程度、ガルバリウム鋼板は6,000~9,000円程度が一つの目安と言われます。瓦はさらに高くなる傾向で、和瓦だと1㎡あたり1万円以上になることもあります。

ただし先述のとおり、長期的な耐久性を考慮したライフサイクルコストではガルバリウム鋼板が有利です。初期費用を抑えるならスレート、将来的な交換頻度を減らすならガルバリウム鋼板、最高の耐久性重視なら瓦…というように予算や重視点に応じて選ぶことになります。

以上をまとめると、「スレート屋根」は安価でデザインも比較的自由、軽さもまずまずですが、寿命が短く定期塗装が必要。「瓦屋根」は極めて長寿命でメンテナンスも少ない反面、初期費用が高く重量も重い。そして「ガルバリウム鋼板屋根」は耐震・耐風性に優れ、価格と耐久性のバランスが良い中間的な存在、と言えます。

ニチハ 片流れ屋根

新築ではこの中から、住宅の構造やデザイン、予算、施主の優先順位に応じて最適な屋根材を選択することになります。

実績豊富で信頼できる業者にお願いしましょう。ガルバリウム鋼板屋根は施工方法によって性能を最大限発揮できます。板金同士のかみ合わせや固定方法、下地の処理、傷を付けない丁寧な作業など、高い技術が要求される部分もあります​。

施工が雑だと傷から錆びたり、継ぎ目の処理ミスで雨漏りするリスクもあります。

家の断熱プランや遮音プランとセットで検討しましょう。特に断熱材の厚みや屋根裏換気など、設計段階で工夫できます。断熱一体型のガルバリウム屋根材を採用するのも一案です。雨音が心配な場合は、防音シートの追加や天井裏のグラスウール増しなど対策可能か相談してみてください。

塩害地域(海から近い地域)や工業地帯では、より錆びに強い対策が必要です。最近はガルバリウム鋼板にマグネシウムを加えて耐食性を向上させた「エスジーエル鋼板(SGL鋼板)」も登場しています。海沿いで不安な方はこうした新素材を検討したり、定期的な塗装メンテナンスを計画に入れておくと安心です。また雪の多い地域では雪止め金具を付けるなど、地域の気候に合わせた選択をしましょう。

色や形状(横葺き・縦葺き)のバリエーションがあります。カタログや施工事例を見せてもらい、外観イメージを確認しましょう。ガルバリウム鋼板は同じ色でまとめるとシャープですが、外壁とのコントラストや艶の有無でも印象が変わります。後悔しないよう、じっくりデザインも検討してください。
(※横葺き・縦葺き…ガルバリウム鋼板屋根の葺き方の種類。同じ長方形の板金でも、長辺方向を横にして葺くか縦にして葺くかで見た目や排水特性が変わります。一般住宅では緩やかな勾配でも対応できる横葺きが主流です)

以上、ガルバリウム鋼板屋根の特徴や人気の理由について、新築を検討中の方向けに詳しく解説しました。ガルバリウム鋼板屋根は、耐震性・耐久性・デザイン性・コストのバランスが良い優秀な屋根材です。日本の気候や住宅事情に適した選択肢の一つと言えるでしょう。

大切なのは、メリットだけでなくデメリットも理解した上で、自分の希望や家の条件にマッチするか判断することです。本記事の内容を参考に、ぜひ理想の住まいにふさわしい屋根材を選んでください。ガルバリウム鋼板屋根が、皆様の快適で安心なマイホームづくりのお役に立てれば幸いです。

当社は金属屋根専門の板金職人が施工する会社です。
ガルバリウム鋼板屋根(金属屋根)についてのご相談は「屋根修理の匠ひおき」までお気軽にご相談ください。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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