はじめに
屋根の雨漏りは「屋根材の劣化」が主な原因だと考えられがちですが、実際には板金部分の劣化が原因となるケースが最も多いのです。
屋根雨漏りの主な発生箇所や、板金、雨仕舞(あまじまい)、ルーフィングといった重要な要素の役割を正しく理解することで、根本的な解決策を見つけることができます。
この記事では、屋根からの雨漏り原因と解決方法を詳しく解説し、住まいの防水対策に役立つ知識を提供します。
雨漏りの3大要因
約7割:板金の劣化
棟板金、谷どい板金、ケラバ板金など、雨仕舞部分に使われる板金の不具合が主な原因。
いずれも雨漏りしていた際の写真です。上にかぶっていた板金が錆びて劣化したからです。
約2割:屋根材の経年劣化
瓦やスレート、金属屋根の劣化により雨漏りが発生。
そもそもの屋根材自体の寿命です。スレートの割れや金属の錆びた箇所から水が回ります。
約1割:施工不良
雨仕舞やルーフィング施工の不備が原因のケース。
板金部分は雨仕舞(あまじまい)と深く関係しています。水の流れを考えず適当に施工すると、不具合をきたします。
つまり水が回りやすい部分の施工を精密にしないと、雨漏りにつながりやすいのです。
板金が原因
特に注目すべきは、雨漏りの約7割が板金部分に起因している点です。
板金が使われる部位は「雨風が集中しやすい」という特徴があるため、雨漏りのリスクが高いのです。
板金劣化の進行プロセス:雨漏りが発生するまでの流れ
初期段階:サビの発生
板金部分に雨水が溜まると、サビが発生します。特にトタン素材の板金は錆びやすいです。
中期段階:穴あきの進行
サビが進行すると、板金に小さな穴が開き始めます。雨水が板金を通過し、内部に侵入します。
最終段階:雨漏りの顕在化
雨水が天井裏や壁内に到達し、雨染みや雨漏りとして表面化します。
雨仕舞と板金の役割
「雨仕舞」とは、内部に雨水が浸入しないようにするための施工を指します。
以下のような板金の種類があります。
- 谷どい板金:屋根と屋根の谷部分に設置され、水が集中して流れる重要な部分。最も雨漏りが発生しやすい箇所。
- 棟板金:屋根の頂上部分に設置され、風圧を受けやすく、台風で剥がれやすい部位。
- ケラバ板金:屋根の端部分を覆い、雨風から保護する。風の影響で劣化が進行しやすい。
- 雨押え板金:屋根と外壁の接合部分に設置され、防水の要となる。
- 軒先板金:屋根の先端部分を保護し、雨水が軒樋に流れやすくする役割を持つ。
板金部分は屋根全体の中でも目立たない部分に使われているため、劣化に気付きにくいのが特徴です。
ルーフィングが原因
ルーフィングは、屋根防水の最後の要です。
屋根材や板金の下に敷かれ、屋根全体の防水機能を支える重要な要素となります。
耐用年数
一般的なルーフィングの耐用年数は20~30年。新築時に高耐久製品が採用されることは少なく、20年を超える建物では劣化が進んでいる可能性が高いです。
古い建物ではアスファルト系ルーフィングが使用されており、劣化が顕著です。
雨漏りの根本的な解決策
ルーフィングの交換
雨漏りを根本的に解決するには、ルーフィングを交換することが必須です。
ルーフィング交換には屋根材や板金を一度すべて剥がす必要がありますが、これにより屋根全体の防水を再構築することが可能です。
さらに、耐用年数30年以上の製品:改質アスファルトルーフィングを使用することで、雨漏りリスクを大幅に低減できます。
板金工事の専門知識を持つ業者を選ぶ
鋼板メーカーは、製品本来の性能を発揮させるために、細かな施工規定や推奨手順を定めています。各メーカーによる製品ごとに、役物の取り付け方法、釘やビスの種類・打ち方、屋根材の重ね代や勾配など、様々な細則が決められています。
しかし、専門知識や経験が不足している業者は、これらの規定を軽視したり、独自の省略的な方法で作業を進めたりします。規定を無視することで、短期的にはコストを抑えたり工期を短縮したりできるかもしれませんが、結果的には屋根の防水性能が不十分になり、雨漏りや素材の劣化を加速させる要因となります。
屋根施工に求められる板金技術
近年は、屋根の隙間やつなぎ目の部分など雨風の侵入を防ぐ役物(やくもの)の部材が、既製品として工場出荷時に完成された状態で流通するようになってきました。昔ほど現場で一から加工する必要が減り、工期短縮やコスト削減ができるようになってきています。
しかし、どれほど既製品が普及したとはいえ、屋根形状や現場条件は一邸一様であり、実際には加工済みの役物をそのまま取り付けられるケースばかりではありません。
例えば、以下のような状況では、最終的に現場での微調整が避けられないことが多く、板金職人による施工が必要となります。これはガルバリウム鋼板屋根に限らず、瓦屋根やスレート屋根など、あらゆる屋根の現場で起こり得ます。
板金職人による施工が必要となるケース
- 複雑な屋根形状
切妻や片流れなどシンプルな形状なら既製品をそのまま使える可能性が高いですが、入隅・出隅が多い寄棟屋根、段違い屋根、屋根に突起物(トップライトや換気口)が多い場合などは、どうしても想定外の角度や勾配が発生します。また、狭小地に建つ住宅や、周囲の建物との位置関係によって微妙な寸法の違いが生じることもあります。 - 現場特有の条件
地域や立地環境によっては、風雨や積雪、塩害などが考慮事項となり、標準的な既製品の寸法・形状だけでは十分な防水性能を確保できないケースがあります。そうした場合、屋根職人は現場で役物を切ったり曲げたりしながら、強風対策のために少し大きめの立ち上がりを作ったり、塩害地域向けに特定の材質を組み合わせたりする工夫が必要になります。 - 微妙な寸法誤差や勾配の違い
設計図面上は寸分違わぬ角度や寸法であっても、実際の施工現場では微妙な誤差が出ることは珍しくありません。わずかな狂いでも、雨水の流れ方や溜まりやすい箇所が変わってしまうため、役物をそのまま取り付けると隙間が生じたり、接合部が不均一になってしまうことがあります。こうした場合、板金職人は現場の実測値に合わせて、役物の端部を微調整したり、最適な勾配を確保するために部分的に切り込みや折り曲げ加工を加えます。
板金加工技術の重要性
こうした現場での微調整が求められる時、鍵となるのが板金加工の技術です。既製品をただ取り付けるだけであれば、基本的な施工手順を踏めば一定の品質が確保できますが、現場対応の加工は、材料の特性や曲げ方・切り方、定尺物から任意寸法への加工ノウハウなど、豊富な経験と技術を求められます。熟練した板金職人による施工が不可欠となります。
耐久性の高い素材を提案してくれるかという視点も重要です。ステンレスやSGL鋼板などの使用を推奨する業者が望ましいです。
ガルバリウム鋼板は加工しやすいとはいえ、強引な曲げや雑な切り込みによって表面処理層を傷めれば、後々サビや腐食の原因となってしまいます。熟練した職人は適切な工具の使い方や曲げ半径、切断方法を熟知しているため、素材を傷めることなく高精度な加工が可能です。
さらに、屋根は雨漏りを防ぐだけでなく、建物全体の外観にも大きな影響を及ぼします。熟練の職人は役物を美しく加工し、つなぎ目を目立たせないよう丁寧に処理することで、既製品を単に取り付けるだけでは難しい美観と性能の両立を実現します。
また、図面には記載されていない微細な干渉や、施工中に突発的に生じる問題に対して、最適な判断を下し、加工や取り付けを臨機応変に対応できるのも経験豊富な職人の強みです。
板金技術に加え、こうした材質への理解、見た目の美しさと性能への配慮、そして現場での判断力が組み合わさることで、初めて質の高い屋根施工が可能となります。
板金技術に加え、こうした材質への理解、見た目の美しさと性能への配慮、そして現場での判断力が組み合わさることで、初めて質の高い屋根施工が可能となります。
後悔しないための業者選びを
専門業者以外に工事を依頼しない
ガルバリウム鋼板は、金属屋根職人の専門工事です。特に、役物の正しい施工や断熱・遮音対策は、専門的な知識と技術が必要です。しかし、金属屋根の構造や施工方法を十分に理解していない業者や、他の屋根材を専門とする業者が多数参入しています。
多くの業者が「屋根専門」「実績多数」と宣伝していますが、実際には金属屋根の専門知識や技術を持たない場合があります。さらに、専門業者であっても手抜き工事を行う業者も存在するため、本当に注意が必要です。
費用の安さで業者を選ばない
費用の安さだけで業者を選ぶことは非常に危険です。専門的な技術を持つ職人による適切な施工には、それ相応の費用がかかります。一部の業者は他社よりも安い価格を提示するために、役物の設置を省略したり、断熱・遮音対策を行わないことでコストを削減しています。 その結果、施工不良による雨漏りや室内環境の悪化、騒音問題などが発生し、後々の修繕費用が高額になるケースが多く報告されています。安価な工事には安いなりの理由があることを理解し、費用だけで業者を選ばないようにしましょう。
また、実際の工事内容の違いを十分に理解しないまま、提示された見積額のみを比較して業者を選んでしまい後悔するケースも多くあります。屋根修理や交換の費用は、単に「安い・高い」で決まるものではなく、具体的な工事内容や手順、使用する材料の質、そして屋根材ごとに異なる正しい施工方法が取り入れられているかどうかによって大きく左右されます。見積金額だけを基準に業者を選ぶと、安易な施工や規定無視によって不具合や雨漏りが繰り返されるなど、結果的に高額な再修理費用や建物内部へのダメージといった残念な結果を招く恐れがあります。
屋根修理業者の選び方に関してはこちらのコラム記事も参考にしてみてください。
まとめ
雨漏りをさせないためには、施工不良による不具合を防ぐことが最も重要です。そのためには、役物の正しい施工や断熱材一体型の屋根材の提案など、専門的な知識と技術を持つ信頼できる専門業者に依頼することが不可欠です。
屋根で後悔しないためにも、以下のポイントに気を付けて工事を検討するようにしてください。
- 専門業者に依頼する:金属屋根の専門知識と技術を持ち、役物の正しい施工や断熱・遮音対策ができる業者を選びましょう。
- 費用だけで選ばない:安さの裏にはリスクが潜んでいます。適正な価格で高品質な工事を提供する業者を選びましょう。
- 複数の業者を比較検討する:見積もりや工事内容を比較し、信頼できる業者を選びましょう。
当社は金属屋根専門の板金職人であるがゆえに、ガルバリウム鋼板などの金属屋根で失敗や後悔をしてほしくありません。技術や知識のない業者に施工を依頼した結果、金属屋根に対する評価が下がってしまうことは非常に残念です。
特に、断熱・遮音対策や役物の施工不良によるトラブルは、本来のガルバリウム屋根の良さを損ないます。そうした残念な結果を避けるためにも、本物の職人が施工するガルバリウム鋼板などの金属屋根の良さを、ぜひ皆さんに知っていただきたいと思います。
ガルバリウム鋼板屋根を検討されている方は、ぜひ「屋根修理の匠ひおき」までご相談ください。
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