塩害に強い屋根材は?海沿いの屋根の塩害対策とガルバリウムの注意点

「海の近くに住んでいて、屋根の板金が思ったより早く錆びてきた」。沿岸部にお住まいの方から、こうしたご相談をいただくことがあります。

結論から言うと、塩害で先に傷むのは屋根の「金属の部分」です。屋根材は錆に強いものを選び、棟板金・谷板金・ビスといった部材まで気を配ると、塩害の影響を小さくできます。

この記事でわかること

  • 屋根の塩害とは何か、なぜ金属が錆びやすくなるのか
  • 塩害に強い屋根材・弱い屋根材(ガルバリウム鋼板・SGL・瓦・スレート)
  • 塩害で傷みやすい場所と、地上からできるチェック
  • 海沿いの家の塩害対策と、葺き替えで屋根材を選ぶときの注意点

1954年創業の板金・屋根工事店「屋根修理の匠ひおき」の板金職人が、現場の写真を使って解説します。

スレート屋根の棟板金に出た錆と塗装のはがれ
スレート屋根の棟板金に出た錆と塗装のはがれ。屋根材より先に、金属の板金が傷んでいます(この写真の錆が塩害によるものかは、写真からは分かりません)。

屋根の塩害とは|潮風の塩分で金属が錆びるしくみ

屋根の塩害とは、海から運ばれる塩分で、屋根の金属部分が錆びたり傷んだりすることです。波しぶきや風で舞い上がった細かな塩の粒は、風に乗って住宅地まで届きます。これを「飛来塩分(ひらいえんぶん)」と呼びます。

塩分には湿気を吸う性質があります。塩が付いた金属の表面は、晴れていても湿った状態が続きやすくなります。さらに塩分は、金属を守る塗膜やめっきを傷めます。そのため、内陸の家より錆が早く進みやすいのです。

塩分は、雨で流れにくい所にたまります。屋根では、重なり部分の内側や板金の継ぎ目、軒の裏側などです。

塩害に強い屋根材・弱い屋根材|屋根材ごとの違い

塩害への強さは、屋根材の素材で大きく変わります。錆の心配があるのは金属の屋根材と、どの屋根にも使われる金属の部材です。主な屋根材の違いを表にまとめます。

屋根材塩害との関係気をつけたいこと
SGL(エスジーエル)ガルバリウム鋼板のめっきにマグネシウムを加え、錆に強くした鋼板錆びにくいが、錆びないわけではない。もらい錆や深い傷に注意
ガルバリウム鋼板アルミニウムと亜鉛のめっきで、トタンより錆びにくい製品によっては、保証に海岸からの距離の条件がある
トタン(亜鉛めっき鋼板)金属屋根の中では錆びやすい塗膜が傷むと錆が進みやすい。こまめな点検と塗装が必要
瓦焼き物なので、瓦そのものは錆びない谷板金・棟まわりの金具・釘などの金属部分は錆びる
スレート(化粧スレート)セメント系の板なので、スレートそのものは錆びない棟板金や、固定する釘・ビスは錆びる

金属屋根(ガルバリウム鋼板・SGL)

金属屋根の中でも、錆への強さには差があります。今の金属屋根の主流はガルバリウム鋼板で、アルミニウムと亜鉛のめっきによって、トタンよりずっと錆びにくくなっています。

さらに錆に強くしたのが、SGL(エスジーエル)です。製造元の日鉄鋼板は、ガルバリウム鋼板のめっきに2%のマグネシウムを加え、「ガルバリウム鋼板の3倍超の耐食性」を実現したとしています。2013年に販売が始まりました。「SGL」は日鉄鋼板の呼び方で、マグネシウムを加えた同じようなめっき鋼板を、屋根材メーカーは「超高耐久ガルバ」(アイジー工業のスーパーガルテクト)などの名前で呼んでいます。海沿いで金属屋根を選ぶなら、SGLを使った屋根材が候補になります。違いの詳しい説明は「ガルバリウム鋼板とSGLの違い」をご覧ください。

張り替えが終わった黒い金属屋根の全景
張り替えが終わった金属屋根。海沿いでは、屋根材だけでなく、棟や軒先に使う部材・ビスまで錆に強いものを選びます。

瓦屋根・スレート屋根

瓦は焼き物なので、瓦そのものが塩で錆びることはありません。ただし、谷に入れる谷板金や、棟を固定する金具・釘は金属です。

スレートも、板そのものは錆びません。一方で、てっぺんの棟板金や、スレートを留める釘は錆びます。瓦屋根もスレート屋根も、点検では金属の部分を中心に見ます。

塩害で傷みやすい場所|棟板金・谷板金・ビスまわり

塩害で先に傷むのは、屋根材より板金や金具です。点検で特に見るのは、次の3つです。

  1. 棟板金・谷板金:屋根のてっぺんの棟板金と、屋根面がぶつかる谷の谷板金。塗膜がはがれた所から錆が広がります。谷板金は詳しくは「谷板金とは」で解説しています。
  2. ビス・釘と切り口:屋根材や板金を留めるビスの頭、板金を切った端。めっきや塗膜が切れている所から錆びやすくなります。
  3. 違う金属が触れ合う所:アンテナの金具や鉄の部材が触れる所。ほかの金属の錆が移る「もらい錆」や、違う種類の金属どうしで腐食が進む「電食(でんしょく)」が起きることがあります。
瓦屋根の谷に入った谷板金の表面に広がった錆
瓦屋根の谷板金の表面に広がった錆。谷は雨水が集まる所なので、錆びて穴があくと雨漏りにつながります(塩害が原因かは、写真からは分かりません)。

屋根の各部の名前は「屋根の名称一覧」で写真付きで紹介しています。

こんな症状は点検のサイン|地上からできるチェック

塩害による錆は、早く見つけるほど小さな補修で済みます。屋根には上がらず、地上や窓から見える範囲で確かめてください。

見えること考えられること目安
棟や屋根の端の板金に赤茶色の筋や点がある板金の錆早めに点検を
板金の塗装が白っぽくはがれている塗膜の劣化。錆が出る手前のことが多い点検で状態を確認
金属屋根の表面の色あせ、赤い点々塗膜の劣化、もらい錆点検で状態を確認
雨どいの中や外壁に、赤茶色の汚れが流れた跡上の板金・金具の錆点検で錆の出どころを確認
天井や壁にしみがある錆びて穴があいた所からの雨漏りすぐに点検を
錆と色あせが広がった瓦棒の金属屋根
錆と色あせが広がった瓦棒(かわらぼう)の金属屋根。表面全体に錆が出ると、塗装か葺き替えかを検討する段階です。

海沿いの家の塩害対策|お手入れ・補修・葺き替え

立地は変えられないので、塩害をゼロにはできません。それでも、お手入れと工事のときの材料選びで、傷みの進み方は変わります。

真水で塩分を流す(地上から届く所だけ)

強い海風や台風のあとは、塩分がたくさん付いています。雨どいの外側や外壁、地上から届く板金は、ホースの水道水でやさしく流すと錆の進みを抑えられます。高圧洗浄機や硬いブラシは塗膜を傷めるので使いません。屋根の上の水洗いは転落の危険があるため、ご自身では行わないでください。

点検を早めに、塗膜が傷んだら塗り替え

金属屋根やスレート屋根では、表面の塗膜が錆を防ぐ最初の守りです。海沿いでは塗膜の傷みが早く進むことがあるため、内陸より早めに点検を受けると安心です。塗膜のはがれが見えたら、錆が広がる前に塗り替えを考えます。塗料の違いは「屋根塗装の塗料えらび」をご覧ください。

板金の交換・葺き替えでは部材まで錆に強いものを

錆びて穴があいた板金は、塗装では直りません。棟板金や谷板金を交換します。屋根全体の傷みが進んでいれば、カバー工法や葺き替えを検討します。

そのときは、屋根材だけでなく、ビスや棟・軒先の部材まで錆に強いものを選びます。部材が先に錆びると、そこから傷みが広がるためです。金属屋根の製品は、保証に海岸からの距離などの条件が付いていることがあります。選ぶ前に、製品の保証の条件を確かめます。

板金職人が点検で確かめること

  • 棟板金・谷板金・軒先の板金の錆と、穴あきの有無
  • 板金の継ぎ目やビスの頭、切り口の錆
  • アンテナなどほかの金属が触れている所のもらい錆
  • 塗膜のはがれ・色あせの広がり方(部分補修で済むか、全体の工事が必要か)
  • 雨どいの中の錆や、屋根裏・天井のしみ(雨漏りが始まっていないか)

点検のあとは、撮った写真をお見せしながら、いま工事が必要か、しばらく様子を見てよいかをご説明します。

費用が変わる要素と見積書の確認点

当社の工事の㎡単価とお見積り例は「料金の目安」で公開しています。塩害の補修や葺き替えの実際の費用は、錆の範囲(板金の一部か、屋根全体か)、下地の傷み具合、屋根の広さと形、選ぶ屋根材と部材、足場の有無で変わります。無料点検で状態を見てから、内訳の分かる見積もりをお出しします。概算は「お見積りシミュレーター」でも確かめられます。

見積書では、屋根材の製品名だけでなく、棟・谷・軒先の板金やビスの材質まで書かれているかを確かめてください。海沿いの家なら、選んだ製品の保証の条件も確認しておくと安心です。

よくあるご質問

Q. 海からどのくらい離れていれば、塩害の心配はありませんか?

一律の線はありません。目安になるのは、屋根材の保証の条件です。たとえば日鉄鋼板・JFE鋼板・アイジー工業・ニチハの金属屋根材やカラー鋼板には、海岸から500m以遠(または500m以内は対象外)を保証の条件にしている製品が多くあります。風向きや地形によっては、海から離れていても潮風が届きます。海が近い場合は、選ぶ製品の保証の条件を確かめてください。

Q. 塩害地域でもガルバリウム鋼板の屋根にできますか?

使える製品は多くあります。ただし、保証に海岸からの距離の条件が付く製品もあります。海が近いなら、より錆に強いSGLを使った屋根材も比べて選ぶと安心です。

Q. SGLとガルバリウム鋼板の違いは何ですか?

SGLは、ガルバリウム鋼板のめっきにマグネシウムを加えた鋼板です。製造元は、ガルバリウム鋼板の3倍超の耐食性としています。詳しくは「ガルバリウム鋼板とSGLの違い」で解説しています。

Q. 瓦屋根なら塩害の心配はありませんか?

瓦そのものは錆びません。ただし、谷板金や棟まわりの金具・釘は金属なので錆びます。瓦屋根でも、板金の点検は欠かせません。

Q. 外壁のガルバリウム鋼板も塩害を受けますか?

屋根と同じ金属なので、塩分の影響を受けます。外壁は雨で塩分が流れにくい面もあるため、地上から届く所は真水で流すのが効果的です。屋根と外壁をまとめて点検すると、傷みの出方を比べられます。

まとめ

  • 塩害は、潮風の塩分で屋根の金属部分が錆びること。塩が湿気を吸い、塗膜やめっきを傷める
  • 錆の心配があるのは金属の屋根材と、棟板金・谷板金・ビスなどの部材。瓦やスレートでも金属部分は錆びる
  • 金属屋根なら、ガルバリウム鋼板より錆に強いSGLが海沿いの候補になる
  • お手入れは地上から届く所の水洗いまで。屋根の上は職人に任せ、早めの点検で小さな補修に
  • 葺き替えでは部材まで錆に強いものを選び、製品の保証の条件を確かめる

参考・出典

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1954年創業、親子三代の板金・屋根工事店として、奈良・三重を中心に大阪・京都・和歌山・滋賀・兵庫まで、点検・雨漏り修理・葺き替えのご相談を承ります。現地調査・お見積もりは無料です。

※遠方の場合は出張費をいただく場合がございます。詳しくはお問い合わせください。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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