「業者さんにモニエル瓦の塗装をすすめられたけれど、塗れば大丈夫?」——瓦屋根の点検で、よくいただくご相談です。
結論から言うと、塗装で直るのは瓦の見た目までです。雨漏りを止めている瓦の下の防水シート(ルーフィング)は、塗装では直りません。当社では、モニエル瓦の塗装はおすすめしていません。
この記事でわかること
- モニエル瓦とは何か、セメント瓦・セキスイかわらUとの違い
- 自分の家の瓦がモニエル瓦かを見分ける手がかり
- 塗装で直ること・直らないこと
- 葺き替えの進め方と、見積書で確かめること
1954年創業の板金・屋根工事店「屋根修理の匠ひおき」の板金職人が、現場の写真を使って解説します。

モニエル瓦とは|セメント瓦・セキスイかわらUとの違い
モニエル瓦は、セメント・骨材・水を混ぜ、押し出して形を作るコンクリートの瓦です。塗料メーカーの資料などでは「乾式コンクリート瓦」と書かれます。表面には、色を付けたセメントペーストの「スラリー層」が塗られ、新品のときはその上に透明なアクリルの層もあります。

モニエル瓦・セメント瓦・セキスイかわらU(化粧スレート)は、どれもセメントを主な原料にした「セメント系」の屋根材です。違うのは、作り方と表面の仕上げ、形です。
| 屋根材 | 材料と作り方 | 表面・注意 |
|---|---|---|
| モニエル瓦 (乾式コンクリート瓦) | セメント・骨材・水を混ぜ、押し出して成形 | 着色したセメントペースト(スラリー層)。瓦の下の端がデコボコ |
| セメント瓦 (プレスセメント瓦) | セメント・砂などを主な原料に、プレスで成形 | 塗装したものと、顔料を練り込んだ無塗装のものがある。瓦の下の端は平ら |
| セキスイかわらU (化粧スレート) | セメント・けい酸質原料・繊維などを、薄い板に加圧成形 | 古い製品には石綿を含むものがある |
| (参考)陶器瓦 ※セメント系ではない | 粘土を練って成形し、焼いたもの | 釉薬をかけたもの、いぶしたもの、そのままのものがある |
セメント瓦(プレスセメント瓦)
セメントと砂などをプレスで固めた瓦です。塗料メーカーの資料では、下の端は平らで、裏面はセメントの地肌とされています。JISでは、表面か裏面にメーカー名かその略号を表示することになっています。

見た目が似ているセキスイかわらU(化粧スレート)
ここでは、モニエル瓦と見た目が似ている化粧スレートとして、セキスイかわらUを取り上げます(以下「セキスイかわらU」と書きます)。名前に「かわら」と付きますが、セキスイかわらUは、国土交通省と経済産業省の「石綿(アスベスト)含有建材データベース」で「住宅屋根用化粧スレート」に分類されています。厚さ6mmの板で、1975〜1990年に作られたものは石綿を10〜14%含むとされています。葺き替えなどの工事の前には、石綿の事前調査が必要です。

うちの瓦はモニエル瓦?見分け方
見分ける手がかりは、屋根全体の形と、瓦の下の端(切り口)、表面の3つです。下の写真では、モニエル瓦は丸い山が並ぶ洋風の形、セメント瓦はなだらかな波の形です。ただ、形は製品によって違うので、形だけでは決められません。
モニエル瓦は、瓦のいちばん下の端(雨水が流れ落ちる先)の切り口に、細かいデコボコがあります。塗料メーカーの資料でも、見分けるポイントとされています。ふつうのセメント瓦は、この切り口が平らでなめらかです。

もう一つは表面です。塗り替えの時期になったスラリー瓦は、表面を釘などで軽くひっかくと、もろくなったスラリー層がぼろぼろ取れるとされています。
屋根の上はすべりやすく危険です。ご自身では上がらず、点検のときに職人に確かめてもらってください。地上や窓から撮った写真をLINEで送っていただくだけでも、見当をつけられることがあります。
モニエル瓦の塗装で直ること・直らないこと
塗装は、瓦の表面に色を塗る工事です。直るのは表面のことだけで、瓦のすき間や、その下の防水シートには届きません。
| 屋根の困りごと | 塗装で直る? | 理由 |
|---|---|---|
| 色あせ・コケ・黒ずみ | 見た目は戻る | 表面を洗って塗り直すため |
| もろくなったスラリー層 | 下地処理しだい | 傷んだ層を残して塗ると、数年で層ごとはがれることがある(塗料メーカーの資料) |
| 瓦が水を吸う | 一時的 | 表面の層が傷むと、瓦が水を吸いやすくなる。塗膜も年数で傷む |
| 瓦のすき間から入る雨水 | 直らない | 雨水を受けているのは瓦の下の防水シート |
| 防水シートの破れ・雨漏り | 直らない | 防水シートは瓦をめくらないと直せない |

なお塗料メーカーは、傷んだスラリー層をすべて落とし、専用の下塗り材を使えば塗装できるとしています。ただ、それでも防水シートの傷みは残ります。
当社がモニエル瓦の塗装をすすめない理由
瓦屋根は、瓦だけで雨を止めているわけではありません。瓦のすき間から入った雨水は、瓦の下の防水シートが受けて、軒先へ流しています。これは和瓦を含む瓦屋根すべてに共通する仕組みです。
古い屋根では、この防水シートが傷んで破れていることがあります。破れた所を通った雨水は野地板などの下地にしみ込み、建物の中にまで染み渡るおそれがあります。

当社が見てきた現場でも、塗装したのに雨漏りしているスラリー瓦の屋根を何度か見ています。塗装から8年ほどたった屋根では、塗膜がはがれて瓦が水を吸っていることもありました。雨漏りを止めるには、防水シートから直す必要があります。
モニエル瓦の傷み|こんな症状は点検のサイン
地上や窓から見て、次のような変化があれば点検をおすすめします。表面の変化は、瓦の下の防水シートの状態を確かめるきっかけにもなります。

| 見る場所 | 症状 | 考えられること |
|---|---|---|
| 屋根の表面 | 色があせて白っぽい | スラリー層が傷んでいる |
| 屋根の表面 | コケ・黒ずみが広がっている | 表面が水を含みやすくなっている |
| 屋根の表面 | 前に塗った塗膜がはがれている | スラリー層ごと塗膜が浮いている可能性 |
| 瓦の並び | 割れ・欠け・ずれ | すき間から入る雨水が増えるおそれ |
| 室内の天井・壁 | 雨のあとにシミ | 防水シートを通り越して雨水が入っている可能性 |
モニエル瓦の直し方|葺き替えで防水シートから新しくする
雨漏りを防ぐには、瓦の下の防水シートから新しくする葺き替えが確実です。当社では、次の流れで進めます。
- 古い瓦を下ろす
- 防水シートと野地板の傷みを確かめる
- 傷んだ野地板を直す、または上に新しい板を張る
- 新しい防水シートを張る
- 新しい屋根材を葺く
瓦をめくると、ふだん見えない下地の傷みを直接確かめられます。新しい屋根材に軽い金属屋根を選べば、屋根も軽くなります。

割れた瓦が少なく、雨漏りもない場合は、部分的な補修で様子を見ることもあります。ただし、モニエル瓦は廃盤になった製品が多く、同じ形・色の瓦が手に入りにくいため、現地で確かめてからご提案します。なお瓦は凹凸が大きく重いため、上に新しい屋根を重ねるカバー工法は一般に向きません。
葺き替えの進め方は屋根の葺き替え、瓦屋根から金属屋根への葺き替えは瓦屋根から金属屋根へ葺き替えるメリットで紹介しています。
板金職人が点検で確かめること
- 瓦の種類(下の端と表面のようす)
- 割れ・ずれの枚数と場所
- 棟・谷・壁際など、板金まわりの傷み
- 天井裏に入れる場合は、野地板や垂木の雨染み
- ずれた瓦のすき間などから見える範囲の、防水シートの傷み
防水シートは、瓦の上からはほとんど見えません。点検の結果は写真でお見せし、補修で足りるか、葺き替えがよいかをご説明します。
費用が変わる要素と見積書の確認点
当社では一律の金額は載せていません。費用は、次のような要素で変わります。
- 屋根の広さ・形・勾配
- 下地の傷み具合(野地板を直す範囲)
- 新しく葺く屋根材の種類
- 足場の有無
- 石綿の事前調査の要否
塗装をすすめられたときは、「瓦の下の防水シートの状態をどう確かめたか」を聞いてみてください。葺き替えの見積書では、防水シートの種類と、野地板を直す範囲が書かれているかを確かめます。無料点検で状態を見てから、内訳のわかる見積もりをお出しします。
モニエル瓦についてよくあるご質問
Q. モニエル瓦にアスベストは入っていますか?
当社では、モニエル瓦は基本的に石綿を含まない瓦と考えています。国土交通省・経済産業省の「石綿(アスベスト)含有建材データベース」でも、モニエル瓦・コンクリート瓦は見当たりません(2026年11月に確認)。ただし、屋根の解体や改修の工事の前には、石綿の有無を調べる「事前調査」が大気汚染防止法で決められています。下地やまわりの部材も含めて、調査の結果を確かめてください。
Q. モニエル瓦の寿命(耐用年数)はどのくらいですか?
一律の年数は言えません。瓦そのものより、表面のスラリー層や下の防水シートが先に傷むことが多いからです。年数より、色あせ・割れ・雨漏りなどの症状で判断します。
Q. モニエル瓦は1枚だけ交換できますか?
モニエル瓦は廃盤になった製品が多く、同じ形・色の瓦が手に入りにくいのが実情です。割れが少なければ、部分的な補修で直せることもあるので、現地で確かめます。
Q. まだ雨漏りしていません。それでも葺き替えが必要ですか?
すぐに必要とは限りません。まずは点検で、割れ・ずれの状態や天井裏の雨染みを確かめます。そのうえで、補修で様子を見るか、葺き替えを考えるかをご相談しましょう。
Q. モニエル瓦を自分で塗装してもいいですか?
おすすめしません。屋根の上はすべりやすく危険です。傷んだスラリー層を残して塗ると、層ごと塗膜がはがれる原因にもなります。
まとめ
- モニエル瓦は、押し出して作るコンクリートの瓦。セメント瓦・セキスイかわらUと同じセメント系の屋根材
- 見分ける手がかりは、屋根全体の形、デコボコした瓦の下の端、表面のスラリー層。屋根には上がらず、職人に確かめてもらう
- 塗装で直るのは見た目まで。雨漏りを止める防水シートは塗装では直らない
- 雨漏りを防ぐには、防水シートから新しくする葺き替えが確実
- 見積書では、防水シートの確かめ方と、野地板を直す範囲を確認する
参考・出典
- 日本ペイント「洋風コンクリート瓦(乾式コンクリート瓦・モニエル瓦)」(用語解説)
- 日本特殊塗料「NTスラリー瓦塗替え工法 カタログ【改訂第4版】」(PDF。スラリー瓦とは・瓦の判別・スラリー瓦の劣化)
- 水谷ペイント「根強い人気 瓦屋根の塗料選定ポイント」(2025年12月2日)
- 国土技術政策総合研究所 資料第975号 第4編 第Ⅹ章「通気下地屋根構法の設計施工要領(案)」
- 国土交通省・経済産業省「石綿(アスベスト)含有建材データベース」(セキスイかわらU)
- 積水化学工業「当社グループのアスベスト(石綿)関連の状況について」(2005年9月16日)
- 神奈川県「建築物等の解体、改造、補修を行う場合の事前調査」
- JIS A 5402「プレスセメントがわら」/JIS A 5423「住宅屋根用化粧スレート」/JIS A 5208「粘土がわら」(適用範囲など)
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モニエル瓦の屋根のこと、まずは職人にご相談ください
「モニエル瓦の塗装をすすめられた」「瓦の色あせが気になる」「モニエル瓦か分からない」といった段階のご相談でも構いません。
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- 写真をLINEで送るだけで相談できます:LINEで相談する
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1954年創業、親子三代の板金・屋根工事店として、奈良・三重を中心に大阪・京都・和歌山・滋賀・兵庫まで、点検・雨漏り修理・葺き替えのご相談を承ります。現地調査・お見積もりは無料です。
※遠方の場合は出張費をいただく場合がございます。詳しくはお問い合わせください。



