屋根修理を検討する際、屋根材を調べても、それ以外はあまり分からないと専門店に任せることも多いでしょう。
中でも、「ルーフィングシート(屋根用防水シート)」は、屋根本体の下に敷かれるものなので、普段外から目にすることはありません。
今回は、屋根材の下に敷く大切な役割のルーフィングシート(屋根用防水シート)に着目し、種類や特徴・選び方について紹介していきましょう。
屋根構造でルーフィングシートの役割
ルーフィングシートは目に見えないので、まずは家屋の屋根構造について紹介しましょう。
ルーフィングシートは一般的に屋根の防水シートのことで、「下葺き材(したぶきざい)」と呼ぶこともあります。
普段目にする屋根と呼ばれる部分は「屋根材」と呼ばれるもので、屋根材だけでは完全な防水ができません。取り付ける際、隙間が生まれて雨水が侵入してしまうからです。
隙間から入ってきた雨水を屋内に入れないためには、屋根材と野地板(屋根の下地材)の間にルーフィングシートを取り付けて雨水を外に流す必要があります。
カバー工法(※)の場合は、既存の屋根材の上に重ねたりすることにより雨水の侵入を防ぎます。
※カバー工法
傷んだ古い屋根材を取り除かず、上から新しい屋根材をかぶせる工法
野地板に雨水が侵食すると、建物自体の腐食を引き起こす原因になります。ルーフィングシートは、防水シートとして大切な役割を持っています。
屋根材でも、スレートやガルバリウム鋼板などを一次防水、ルーフィングシートを二次防水と呼ぶこともあります。それだけ、ルーフィングシートの役割は屋根の構造上、大切なものといえます。
雨漏りは屋根材よりルーフィングシートに多い
どれだけ丈夫な屋根材を使っていても雨漏りがある場合、ルーフィングシートの劣化を疑いましょう。多くのリフォーム工事や屋根修理では、屋根をみて問題がない場合、次にルーフィングシートを疑います。
屋根の修理をする際には、一緒にルーフィングシートを新調を考えてもいいでしょう。
ルーフィングシートの劣化が原因で雨漏りする主な原因としては、以下が挙げられます。
- 素材の伸縮があって亀裂ができる
- ルーフィングシートを留めた部分の劣化による浸水
一般的に、ルーフィングシートの寿命は約10〜20年といわれています。目安として、屋根材よりも交換時期が長いものを選ぶと、ルーフィングシートによる雨漏りの可能性も少なくなるでしょう。
ルーフィングシートの主な種類と特徴・耐用年数
ルーフィングシートには、用途に合わせた特徴や耐用年数など種類もさまざまです。
ここでは、ルーフィングシートの種類や特徴・耐用年数を紹介していきます。
アスファルトルーフィング
防水シートといえば、アスファルトルーフィングと言われるほどよく使われる材料です。
アスファルトルーフィングは、厚みのあるダンボールにアスファルトを染み込ませて作られるルーフィングシートです。
価格が他のルーフィングシートに比べて比較的安価なので、住宅での普及率は随一といってもいいでしょう。多くのリフォーム工事など屋根修理業者も扱う材料です。
一方、耐久性が低い点がデメリットです。
アスファルトは気温によって伸縮が変化しやすい特性があるため、柔らかくなったり硬くなったりすることでひび割れが出てしまうことが原因です。安価である反面耐用年数が短いことも考慮するようにしましょう。
メリット
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デメリット
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耐用年数
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約10~20年
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改質アスファルトルーフィング
改質アスファルトルーフィングシートは、アスファルトルーフィングと同じ原料で作られていますが、改良されている耐久性の高いルーフィングシートです。アスファルトルーフィングシートの約2倍の耐用年数があります。
アスファルトだけではなく、合成樹脂など温度に柔軟な素材を使うことで、気温の変化でのヒビ割れなどを抑え、耐久性を上げることができた材料です。リフォーム工事や屋根修理でも、ポピュラーになっています。
逆にデメリットを挙げると、安価であったアスファルトルーフィングシートとは違い、若干高価になることです。経年劣化の心配が少なくなります。
耐久性が低く安価なアスファルトルーフィングシートか、耐久性が高く、価格も少し高価な改質アスファルトルーフィングシートか、施工業者のアドバイスも受けてみましょう。
メリット
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デメリット
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耐用年数
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約20~30年
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高分子系ルーフィング
高分子系ルーフィングは、主に塩化ビニールを原料とする、アスファルト以外のルーフィングシートの総称です。
アスファルトを使用していないので、軽く伸縮性が高い特徴があり、耐久性も高くなります。価格も比較的安いため、屋根リフォーム工事でも採用しやすい素材のひとつです。
高分子系ルーフィングを使用する際気をつけたいことは、紫外線の影響を受けやすいことと、下地の形状が平面下地でしか使用できないことです。また、安価ではありますが、その分耐用年数も比較的短いのでこまめなメンテナンスも必要になります。
紫外線の影響が大きい直射日光を受けやすい場所などでは、他のルーフィングシートを採用するケースも多いです。
メリット
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デメリット
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耐用年数
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約15~20年
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透湿防水ルーフィング
透湿防水ルーフィングは、湿気を逃す性能を持ったルーフィングシートです。湿気を逃すことで、住宅を乾きやすく、湿気による傷みを進行しにくくする効果があります。
デュポン社製の高機能防水シートが有名で、室内からの湿気は外に逃し、外からの水分は通さないという、防水シートでは大変優秀な素材です。
濡れても乾燥しやすいので、高気密高断熱住宅に最適です。
透湿防水ルーフィングシートは初期コストが高いですが、耐久性が非常に高いため、結果的にランニングコストは安くなります。
ただし、リフォーム工事など施工業者の腕が必要になるので、業者を検討する際は慎重に選ぶようにしましょう。
屋根修理やリフォーム工事の際、業者選びをしっかり吟味しないといけないことと同じように、透湿防水ルーフィングは施工の難易度が高いので、費用だけではなく時間もかかります。
メリット
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デメリット
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耐用年数
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約50年
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不織布ルーフィング
アスファルトルーフィングシートのような厚紙ではなく、布を使用したものが不織布ルーフィングです。その名の通り原料のベースが不織布のルーフィングシートで、「基材不織布ルーフィング」とも呼びます。
耐久性が高く、長期間水分の侵入を防ぐ特性があります。近年、人気のあるルーフィングシートでもあります。田島ルーフィングから「ニューライナールーフ」という有名なものがあります。
コストが高くなりやすいところはありますが、耐久性や防水性の点から見ても、メンテナンス面でみてもランニングコストが安い素材でしょう。
メリット
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デメリット
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耐用年数
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約30年
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粘着式ルーフィング
粘着式ルーフィングは、貼付け面が粘着シートになっているタイプのルーフィングシートの総称です。ルーフィングシートは基本タッカーで留めますが、粘着シートになっているので、小さな穴もできないので防水性と耐久性に優れている特長があります。
経年劣化で、タッカーの穴が原因になることがありますが、そういった原因を根本解決してくれる材質でもあります。粘着シートという特性から、密着性があり雨漏りなどに強いです。
反面、湿気を逃しにくいというデメリットも持っています。
屋内の湿気を逃がす方法などをリフォーム工事業者さんとよく検討する必要もあります。屋根修理の面だけでみるのではなく、総合的に相談できる施工業者を選びましょう。
メリット
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デメリット
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耐用年数
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約30年
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遮熱ルーフィング
遮熱ルーフィングは、建物内の温度の上昇を抑えることができるルーフィングシートです。
夏は屋外(外装材)からの輻射熱(赤外線)を反射し室内温度を低く、冬は屋外への熱の放射を抑え室内を温かく保つことができます。室温を2~3℃下げる効果があるとされています。
ただし、遮熱効果を十分に発揮させるためには、屋根とルーフィングの間に通気層を作る必要があります。そういった専門的な知識・技術のある業者にリフォーム工事を依頼しなければいけません。屋根材も絞られるので選択肢が狭くなることはデメリットとしてあるでしょう。
メリット
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デメリット
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耐用年数
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約20~50年
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ルーフィングシートには、耐用年数や特徴が異なる様々な種類があり、用途や目的に応じて選ぶことが重要です。それぞれの特徴を知っておくことで、施工業者との打ち合わせもしやすくなります。施工業者にどのルーフィングシートがおすすめなのか、またその理由を聞くことで、納得して工事を依頼することができるでしょう。
ルーフィングシートの施工方法
ルーフィングシートは、種類ごとに施工方法が違ってきます。
ここでは、ルーフィングシートの施工方法を紹介していきます。屋根のリフォーム工事で知っておくとためになるのでぜひ、参考にしてください。
タッカーで留める
粘着式ルーフィングシート以外のルーフィングシートは、タッカーというホッチキスのような留め具を使って固定していきます。
- ルーフィングシートを野地板の角にしっかり合わせます。
- たわみがないようにルーフィングシートを広げます。
- 10~30㎜間隔(素材や業者によって違います)をタッカーで留めていきます。
- ルーフィングシートは100㎜程度重ねて留めます。
- 屋根の角まで行くと、100㎜以上重ねて折り目を付けて4~5箇所タッカーで留めて、カッターでカットします。
傾斜がある屋根に対して、直角にタッカーを打ち込むには技術も必要で、タッカーが浮いても打ち込みが強すぎてもルーフィングシートが劣化する可能性もあります。正確に打たれたタッカーの穴は、太陽の熱で溶けたシートが塞いでくれます。
ルーフィングシートを貼る
粘着式ルーフィングシートの場合、直接野地板に貼り付けていきます。
軒先から棟先(屋根の下側から屋根の上側)に向けて、ルーフィングシートを貼り付けていきます。重ね張りをするので、ルーフィングシートの間に隙間があってはいけません。20㎝程度重ね張りをして補強します。
屋根の棟や谷部は雨が溜まりやすく、浸水することがあり傷みやすい箇所でもあるので、ルーフィングシートを二重三重と重ねる必要があります。
ルーフィングシート選びの注意点
ルーフィングシートは、種類もさまざまで特徴も豊富です。屋根のリフォーム工事をお考えの方は、施工者やリフォーム工事業者に依頼する際、いくつか注意しておくようにしましょう。
ここでは、そんなルーフィングシート選びの注意点を紹介します。
ルーフィングシートの耐用年数の確認
ルーフィングシートは、屋根材に比べると素人からみてあまり知識が少ない素材です。工事価格を安く抑えて契約を取ろうとする業者は、お客様が知識のない、あまり気にしない部分に安いものを使用したいと思います。
そのため、安価なルーフィングシートが使用される可能性もあります。後悔しないためにも、使用するルーフィングシートは見積もりの段階で確認をしましょう。
ルーフィングシートの主な役割は、屋根の雨漏りを防ぐことです。ご自身で勉強をして、防水性や耐用年数をリフォーム工事業者や施工者に提案してみるのもいいでしょう。
屋根より寿命が長いルーフィングシートを選ぶ
ルーフィングシートを交換するためには、屋根材の撤去が必須になります。撤去した屋根材は再利用できません。
また、いくら耐用年数の高い屋根材を選んでも、ルーフィングシートの耐用年数が10年程度なら、雨漏りの可能性が高くなってしまいます。
屋根修理をお願いするのであれば、リフォーム工事業者の方に、屋根材の寿命は短く、ルーフィングシートの寿命が長い組み合わせを提案してみるといいでしょう。
加えて、屋根材によって使用できないルーフィングもあります。たとえ良い素材を見つけたとしても、自分の家に採用できなかったら別のものを探す必要があります。屋根を専門とする施工業者としっかり話し合いましょう。
相見積もりを必ず取る
ルーフィングシートを張り替える際、リフォーム工事業者や施工者ははじめから1社に絞らず、何社を比較するために相見積もりを取りましょう。
1社だけの見積もりでは、費用が相場どおりか手抜き工事なのか見分けも付きません。悪徳業者かと疑うのではなく、「他のリフォーム工事業者からも見積もりを取っている」というだけでも悪徳業者の抑止力になります。
何社かから相見積もりを取るだけで、屋根修理・ルーフィングシート・屋根材などがどんなものを使われるのかが明確に分かります。よって、安心して任せることができるリフォーム工事業者を選ぶことができます。
ルーフィングシートを選ぶ際は、耐用年数を確認し、屋根材との寿命のバランスを考え、複数の業者から相見積もりを取ることが重要です。
使用する材料や施工方法について、見積もりの段階でしっかり確認するようにしましょう。
一般的に使われるルーフィングシート比較
主流と言われる「アスファルトルーフィング」で、どの程度違いがあるのか比較してみました。
種類 | アスファルトルーフィング | 改質アスファルトルーフィング | 粘着式アスファルトルーフィング |
耐用年数 | 約10年 | 約20年〜 | 約20年〜 |
メリット |
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デメリット |
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価格 | 600円〜/㎡ | 800円〜/㎡ | 1000円/㎡ |
ルーフィングシート選びは知識も大切
今回はルーフィングシートの特徴や選び方などを紹介してきました。
ご自身で調べることで、知識も多くなり選ぶ範囲も広がるでしょう。 ルーフィングシートの施工工事や、耐用年数、費用なども考えて、屋根施工業者選びをしてみてください。
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