「瓦は割れていないのに、雨漏りがする」「屋根の一部が垂れ下がってきた」。古い瓦屋根で、よくいただくご相談です。
結論から言うと、瓦がまだ使えるなら、瓦はそのまま使い、傷んだ下地だけを新しくする「葺き直し(ふきなおし)」という方法があります。瓦を買い替えないので、新しい屋根材の費用と、古い瓦の処分を抑えられます。
この記事でわかること
- 葺き直しの仕組みと、葺き替え・カバー工法との違い
- 葺き直しができる屋根・できない屋根
- 実際の工事の流れ(奈良県御杖村の現場写真)
- メリット・注意点と、見積もりで確かめたいこと
1954年創業の板金・屋根工事店「屋根修理の匠ひおき」の板金職人が、現場の写真を使って解説します。
葺き直しとは?瓦を再利用して下地だけを新しくする工事
葺き直しは、今の瓦をいったん外して選り分け、その下の下地(野地板や防水紙)を新しくしてから、同じ瓦を葺き戻す工事です。瓦は買い替えません。

雨漏りを止めているのは、瓦の下の下地
瓦は雨の大部分を受け流しますが、瓦のすき間から入った水を最後に止めているのは、その下の防水紙(ルーフィング)です。瓦は焼き物なので長持ちしますが、防水紙や野地板、古い屋根の葺き土は、瓦より先に傷みます。「瓦はまだ使える、下地は傷んでいる」という屋根に向いているのが葺き直しです。
葺き替え・カバー工法との違い
違いは、屋根材をどうするかです。下地まで新しくするのは、葺き直しと葺き替えの2つです。
| 工事 | 屋根材 | 下地(野地板・防水紙) | 向いている屋根 | 当社の雨漏り保証 |
|---|---|---|---|---|
| 葺き直し | 今の瓦を選り分けて再利用 | 新しくする | 瓦はまだ使えて、下地が傷んでいる瓦屋根 | 2年 |
| 葺き替え | 新しい屋根材に替える | 新しくする | 瓦そのものが傷んでいる屋根、軽い屋根材に替えたい屋根 | 10年 |
| カバー工法 | 今の屋根の上に重ねる | 今のまま(上に新しい防水紙を張る) | 主にスレート屋根(瓦屋根には向かない) | 10年 |
保証期間の違い|葺き直しは2年、新しい屋根材は10年
当社では、新しい屋根材を使う葺き替えやカバー工法の雨漏り保証を10年、既存の瓦を再利用する葺き直しを2年としています。葺き直しで戻す瓦は、すでに長い年月を経ていて、瓦そのものの傷みまでは保証しきれないためです。
どちらの保証も、工事が原因で施工した箇所に不具合が出た場合が対象で、地震などの天災や経年劣化は対象外です(詳しくは施工の流れのページをご覧ください)。保証の長さも含めて、葺き直しと葺き替えのどちらが合うかをご説明します。
葺き直しができる屋根・できない屋根
葺き直しの前提は、外した屋根材をもう一度使えることです。これに当てはまるのは、原則として粘土を焼いた日本瓦(釉薬瓦・いぶし瓦)です。
| 屋根材 | 葺き直しの可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 日本瓦(釉薬瓦・いぶし瓦) | ◎ 基本的に可能 | 焼き物で耐久性が高く、割れていなければ再利用できる |
| セメント瓦・モニエル瓦 | △ おすすめしない | 塗膜が寿命を迎えていることが多く、再利用しても屋根材自体の劣化が進む |
| 化粧スレート(コロニアル等) | × 不可 | 釘で固定されており、はがす際に割れてしまう |
| 金属屋根(ガルバリウム等) | × 不可 | はがすと変形しやすく、再利用に耐えない |
セメント瓦やモニエル瓦は、見た目は丈夫でも表面の塗膜が傷んでいることが多く、葺き直しても屋根材の劣化は止まりません。当社では葺き替えをおすすめしています。
葺き直しを考えたいサイン|下地の傷みは瓦の下で進む
次のような症状は、瓦ではなく下地が傷んでいるサインかもしれません。
- 瓦は割れていないのに、天井や壁に雨染みが出てきた
- 瓦が波打つ・ずれる場所が増えてきた
- 屋根の一部が垂れ下がってきた
- これまで一度も下地を新しくしていない

下地の傷みは瓦の下で進むため、外からはほとんど分かりません。御杖村の現場でも、瓦をめくると葺き土が崩れていて、屋根を支える垂木も補強して高さをそろえる必要がありました。
葺き直し工事の流れ|御杖村の現場写真で見る
奈良県宇陀郡御杖村で、主屋に接する下屋(約17㎡)の瓦屋根を葺き直した工事を例に、流れを見てみましょう。

- 瓦をめくり、葺き土を撤去する:瓦は割れや欠けを確かめながら選り分け、使えるものを保管します。
- 傷んだ野地板を撤去し、垂木を補強する:骨組みの垂木に添え木をして強度を補い、高さをそろえます。
- 構造用合板を張る:厚さ12mmの構造用合板を全面に張り、新しい下地をつくります。
- 下葺き材(防水紙)を敷く:この現場ではタイベック ルーフライナーを使いました。壁際は壁に沿って立ち上げ、谷には新しい谷板金(ガルバリウム鋼板)を入れます。
- 瓦桟を打ち、瓦を葺き直す:瓦桟に瓦を掛け、一枚ずつ釘で留めながら葺き戻します(引っ掛け桟葺き)。
- 棟と壁際を積み直す:棟は南蛮漆喰で積み直し、鬼瓦や冠瓦も既存のものを使いました。壁際ののし瓦も積み直します。
工事の詳しい様子は、施工事例「【奈良県宇陀郡御杖村】瓦屋根の葺き直し工事」でご覧いただけます。壁際の雨仕舞いは、雨押え板金の記事でも解説しています。
葺き戻すときは「ガイドライン工法」で固定する
2019年の房総半島台風で瓦の飛散被害が多かったことを受けて、瓦の固定方法の基準が見直され、2022年1月から、新築などの瓦屋根ではすべての瓦を固定することが求められるようになりました(瓦屋根標準設計・施工ガイドラインに沿った「ガイドライン工法」)。既存住宅の葺き直しに義務はありませんが、瓦をすべて外す葺き直しは、今の基準に合わせて固定し直せる機会です。
葺き直しのメリットと注意点
メリット
- 新しい屋根材の費用と、古い瓦の処分を抑えられる
- 同じ瓦を使うので、主屋やまわりの屋根と見た目がそろう
- 土葺きから引っ掛け桟葺きに変えると、葺き土がなくなる分、屋根が軽くなる
- 瓦を一枚ずつ釘で留めるので、強風や地震でずれにくくなる
注意点
- 瓦そのものの重さは変わらない。屋根を大きく軽くしたいなら、金属屋根への葺き替えが向いている
- 再利用する瓦は年数がたっているため、当社の雨漏り保証は2年(新しい屋根材を使う工事は10年)
- 割れた瓦の差し替えに、同じ形・色の瓦が手に入らないことがある(近い瓦で補う)
- 瓦を割らずに外して選り分け、正しく葺き戻すには経験がいる
葺き直しの点検で職人が確かめること
- 瓦の割れ・欠け・反りと、再利用できそうな枚数
- 差し替え用に、同じ形の瓦が手に入るか
- 室内の雨染みの位置と、屋根裏や軒裏から見える野地板・垂木の傷み
- 棟・壁際・谷の納まりと、谷板金のサビ・穴あき
葺き直しか葺き替えかは、瓦と下地の両方を見て判断します。下地の傷みは瓦をめくって初めて分かることもあるため、めくった後に追加の補修が必要になった場合の扱いも、見積もりの段階で確かめておくと安心です。
葺き直しの費用が変わる要素と見積もりの確認点
費用は、屋根の広さ、下地の傷み具合と補修の範囲、差し替える瓦の枚数、棟や谷の工事の有無、足場の有無などで大きく変わります。金額だけで比べず、次の内容が書かれているかを見比べてください。
- 野地板の補修方法と範囲(増し張りか張り替えか、垂木の補強を含むか)
- 下葺き材(防水紙)の種類
- 再利用できない瓦の差し替え枚数と、使う瓦
- 瓦の固定方法(すべての瓦を留めるか)
- 棟の積み直し・谷板金・壁際の工事、足場、撤去した葺き土や野地板の処分が含まれているか
葺き直しについてよくあるご質問
Q. 葺き直しは、どんな瓦屋根でもできますか?
日本瓦(釉薬瓦・いぶし瓦)なら、基本的にできます。セメント瓦やモニエル瓦は屋根材の劣化が進んでいることが多く、おすすめしません。スレートや金属屋根は再利用に向かないため、葺き直しはできません。
Q. 葺き直しと葺き替え、どちらを選べばよいですか?
瓦がまだ使えて、下地だけが傷んでいるなら葺き直しが向いています。瓦そのものが傷んでいる、屋根を大きく軽くしたい、という場合は葺き替えが候補です。瓦の状態やご予算、これから何年住まわれるかで変わるため、両方のメリット・デメリットをご説明したうえでご提案します。
Q. 屋根が垂れ下がってきたら、建て替えが必要ですか?
垂れ下がりの原因が野地板や葺き土など下地の傷みなら、御杖村の現場のように、骨組みを補強して下地をやり替えることで直せる場合が多くあります。柱や梁まで傷んでいるかは、瓦をめくって初めて分かることもあるため、まずは現地で確かめます。
Q. 工事中に雨が降ったらどうなりますか?
その日の作業の終わりに、まだ瓦を葺いていない部分をシートで覆い、雨が入らないように養生します。
Q. 葺き直しの保証は何年ですか?
当社では2年です。新しい屋根材を使う葺き替えやカバー工法の雨漏り保証は10年ですが、葺き直しは長い年月を経た瓦を再利用するため、期間を分けています。工事が原因で施工した箇所に不具合が出た場合は、保証期間内であれば無償で直します。
Q. 葺き直しの単価や相場はどのくらいですか?
当社では、一律の単価や相場の金額は掲載していません。葺き直しの費用は、下地の傷み具合と補修範囲、差し替える瓦の枚数、屋根の形や勾配、足場の有無などで大きく変わるためです。無料点検で屋根の状態を確かめたうえで、内訳のわかる見積もりで比べることをおすすめします。
まとめ
- 葺き直しは、瓦を再利用して、傷んだ下地(野地板・防水紙)だけを新しくする工事
- 対象は原則として日本瓦。スレートや金属屋根はできない
- 土葺きから引っ掛け桟葺きにすると、屋根は軽く、瓦はずれにくくなる
- 保証は、瓦を再利用する葺き直しが2年、新しい屋根材の葺き替えが10年(当社の場合)
- 見積もりは、下地の補修範囲・防水紙の種類・瓦の固定方法まで書かれているかを確かめる
葺き直しと葺き替えのどちらが合うかは、瓦と下地を実際に見なければ判断できません。屋根修理の匠ひおきでは、1954年創業の板金職人が、現地で状態を確かめたうえでご説明します。
参考・出典
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瓦屋根の葺き直し・葺き替えのこと、まずは職人にご相談ください
「瓦は割れていないのに雨漏りする」「葺き直しと葺き替えで迷っている」「築30年以上で下地が心配」といった段階のご相談でも構いません。
屋根の写真をLINEで送っていただくだけでも、職人が直接お答えします。
- 写真をLINEで送るだけで相談できます:LINEで相談する
- お電話:0744-47-4265(10:00〜17:00)
- 無料点検:無料点検のお申し込み
1954年創業、親子三代の板金・屋根工事店として、奈良・三重を中心に大阪・京都・和歌山・滋賀・兵庫まで、点検・雨漏り修理・葺き替えのご相談を承ります。現地調査・お見積もりは無料です。
※遠方の場合は出張費をいただく場合がございます。詳しくはお問い合わせください。



