折板屋根(せっぱん屋根)とは?種類・勾配・メンテナンス方法を板金職人がわかりやすく解説

はじめに

工場や倉庫、体育館、あるいはご自宅のカーポートやガレージの屋根を見上げると、まっすぐな山と谷が交互に連なった、銀色や濃いグレーの金属屋根を見かけることがあります。これが「折板屋根(せっぱんやね)」です。読み方から「折半屋根」と書かれることもありますが、正しくは「折板屋根」と書きます。

折板屋根は、住宅の瓦やスレートとはまったく違う考え方でつくられた屋根です。下地となる野地板を必要とせず、梁(はり)の上に直接、長い金属の板を葺いていきます。広い面積を一気に、しかも丈夫に覆えるため、大きな建物の屋根として全国で広く使われています。一方で、金属である以上はさびや雨漏りといった悩みもあり、「どこをどう点検すればいいのかわからない」というご相談も少なくありません。

この記事では、創業70年・親子三代にわたって金属屋根や板金工事を手がけてきた職人の視点から、折板屋根とは何か、3つの種類(工法)の違い、勾配や規格といった基礎知識、そしてさび・雨漏りのサインとメンテナンスの方法まで、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。地域を問わず参考にしていただける、知識としての内容です。

既存の屋根の上に新しい白い折板屋根材を葺いている施工写真。山と谷が連なった折板の形がわかる
写真:既存の屋根の上に、新しい折板屋根材を葺いている様子。山と谷が連なった折板の形がよくわかります。

折板屋根(せっぱん屋根)とは?どんな場所で使われるのか

折板屋根とは、その名のとおり、金属の板を「折り曲げて(折って)」山と谷の形に成型した屋根のことです。平らな鉄板も、波の形や山の形に折り曲げると、薄くても格段に強くなります。段ボールの断面が波形になっているのと同じ理屈で、断面の形そのもので強度を生み出しているのが折板屋根の最大の特徴です。

日本金属屋根協会の資料では、折板は「断面の構造に重点を置いて開発されたもので、大型・長尺屋根に調和する意匠性、強度、経済性を備える金属屋根の代表的な屋根工法」と位置づけられています。板厚はおよそ0.6〜1.2ミリの鋼板を用い、山を大きく成型します。3メートルから7メートルほどの間隔で渡した梁(母屋)の上に「タイトフレーム」という受け金具を取り付け、その上に金属屋根材を直接固定していきます。

主な使われ方は、工場・倉庫・体育館・店舗・駐車場やカーポート・ガレージなど、広い面積を経済的に覆いたい建物です。住宅の母屋(建物本体)の屋根に使われることは多くありませんが、近年はデザイン性の高い住宅の屋根や、住宅のカーポート屋根として目にする機会も増えています。

野地板がいらず、緩い勾配でも葺けるのが折板の強み

一般的な瓦やスレート、住宅の金属屋根は、垂木(たるき)→野地板(のじいた)→ルーフィング(防水シート)→屋根材、という何層もの下地の上に葺かれます。これに対して折板屋根は、梁の上に取り付けたタイトフレームへ屋根材を直接固定するため、野地板やルーフィングといった下地が基本的に不要です。下地の構成については、住宅屋根の例を「屋根下地材の重要性と基本用語」の記事でも解説していますので、あわせて読むと違いがよくわかります。

野地板がいらないぶん、工期が短く、材料費も抑えられ、軽くて建物への負担も小さい――これが折板屋根が大きな建物で選ばれてきた理由です。さらに、山が高く水はけがよいため、住宅屋根よりも緩やかな勾配で葺けるのも大きな利点です。ただし「緩くても葺ける」ことは「水平でもよい」という意味ではありません。後述するように、折板屋根にも守るべき最低勾配があります。

折板屋根の3つの種類(工法)

折板屋根は、隣り合う屋根材どうしをどうやってつなぐか(ジョイント方式)によって、大きく3つのタイプに分けられます。見た目が似ていても、防水性や強さ、メンテナンスのしやすさが異なります。

重ね型(重ねタイプ)

タイトフレームの上に立てたボルトに、2枚の屋根材の山どうしを重ねてかぶせ、ナットで締め付けて固定する方式です。断面の強度に優れ、強風地帯でも強さを発揮します。構造がシンプルで経済的なため、工場や倉庫でもっとも多く見られるタイプです。

一方で、屋根の表面にボルトの頭が露出するのが弱点です。ボルトには「ボルトキャップ」というカバーをかぶせて保護しますが、ここが紫外線で劣化したりさびたりすると、雨水の入口になりやすくなります。重ね型はメンテナンスの際に、このボルトまわりの状態を必ず確認すべきタイプといえます。

はぜ締め型(馳締めタイプ)

タイトフレームの上に取り付けた緊定金具を、2枚の屋根材の端部ではさみ込み、電動シーマー(締め機)で巻き込むように締めていく方式です。屋根の表面にボルトが出ないため雨漏りに強く、防水性に優れます。ボルトが不要になったぶんコストも抑えられ、屋根の上からだけで施工できるのも利点です。

継ぎ目をしっかり巻き締めるため水密性が高く、緩い勾配の大型屋根にも向いています。なお、屋根材に穴を開けないため、太陽光パネルなどを後付けする際にも、専用金具で挟んで固定しやすいという特徴があります。

嵌合型(かんごうタイプ)

2枚の屋根材を「吊子(つりこ)」という固定金具でタイトフレームに止め、その継ぎ目の上からキャップをパチンとはめ込んでいく方式です。屋根面にボルトがまったく出ず、見た目がすっきりと美しいのが特徴で、デザイン性が求められる店舗や公共施設などにも使われます。はぜ締め型と同様、ボルトが露出しないため防水性にも優れます。

そのほか:二重葺きタイプ・わん曲加工

この3種類に加えて、金属屋根材を二重にしてその間にグラスウールなどの断熱材をはさんだ「二重葺きタイプ」もあります。室内の温度変化や外部の騒音をやわらげる目的で、体育館や工場などに採用されます。また、軒先を曲げる「わん曲(湾曲)加工」によって、雨の吹き込みを防いだり、屋根全体を流れ方向にアーチ状に仕上げたりすることもできます。

折板屋根の規格と勾配の基礎知識

折板屋根には、メーカーごとにさまざまな規格があります。代表的なのが「山の高さ(山高)」による分類で、たとえば山高88ミリの「88型」、山高150ミリの「150型」などが広く使われています。一例として、あるメーカーの重ね型「88型」製品では、働き幅(1枚で覆える有効幅)が600ミリ、板厚は0.6ミリと0.8ミリ、素材はさびに強いガルバリウム鋼板、といった仕様になっています。山が高い150型ほど、大スパン・重荷重に強くなります。

ここで知っておきたいのが「勾配」です。折板屋根は緩い勾配で葺けるのが利点ですが、最低勾配の目安は3/100(10メートル進んで30センチ下がる程度)とされています。これより緩いと、屋根面に雨水がたまりやすくなり、継ぎ目や端部から建物内部へ漏れるおそれが出てきます。「ほとんど水平に見える折板屋根」でも、実際にはわずかな勾配がつけられているのはこのためです。

折板屋根のメリットとデメリット

ここまでの内容を、いったん整理しておきましょう。折板屋根のメリットは、第一に「広い面積を経済的に、丈夫に覆える」ことです。野地板がいらず工期が短いこと、軽量で建物への負担が小さいこと、緩い勾配でも葺けること、長尺の一枚物で葺けるため継ぎ目が少なく雨漏りに強いことなどが挙げられます。

一方のデメリットは、金属である以上「さび」と無縁ではいられない点です。とくに重ね型のようにボルトが露出するタイプは、その部分が劣化の起点になりやすくなります。また、下地(野地板)がないため、いったん金属に穴が開くと雨が直接室内へ入ってしまうこと、夏の日射で表面が高温になりやすいこと、雨音が室内に響きやすいこと(二重葺きや断熱材で軽減できます)なども、知っておきたい弱点です。さびに強い素材としては、ガルバリウム鋼板が広く選ばれています。

屋根工事の現場写真
写真:ガルバリウム鋼板で仕上げた金属屋根の施工例。折板屋根も同じく、さびに強い素材を選ぶことが長持ちのポイントです。

折板屋根に多い劣化と雨漏りの原因

折板屋根の不具合は、起きやすい場所がある程度決まっています。代表的なものを見ていきましょう。

まず多いのが「さびと穴あき」です。塗膜が傷んで地金がむき出しになると、そこからさびが進み、放っておくと最終的に穴が開きます。折板屋根には野地板やルーフィングがないため、金属に開いた穴は、そのまま雨漏りの穴になります。住宅屋根のように下地で受け止めてくれる層がないぶん、さびの放置は雨漏りに直結しやすいのです。

次に多いのが「ボルトキャップやシーリング(コーキング)の劣化」です。重ね型ではボルト部分のキャップが、各タイプでは端部や雨押え部分のシーリングが、紫外線で硬くなりひび割れていきます。ボルトキャップの設置漏れや脱落も、雨水の入口になります。

そのほか、けらば(屋根の端)や水上(屋根の高い側)・水下(低い側)の納まり部分、屋根材どうしの重ね部分、緩勾配ゆえの水たまりなども、雨漏りの起点になりやすい箇所です。また、金属屋根全般にいえることですが、夏冬の温度差で屋根裏に結露が生じ、それがさびや雨染みの原因になることもあります。

折板屋根のメンテナンス方法

折板屋根は、適切に手入れをすれば長く使える屋根です。状態に応じた代表的なメンテナンスを紹介します。

点検と塗り替えの目安

折板屋根は、おおむね3〜5年ごとを点検の目安とし、状態を見ながら10年前後で塗り替えを検討するのが一般的な考え方です。ただし、これはあくまで一般的な目安で、海に近い地域や工場の煙、日当たりなど環境によって劣化の速さは大きく変わります。年数だけで判断せず、「塗装の色あせ・チョーキング(白い粉)・部分的なさび・ボルトキャップの劣化」といったサインが出ていないかを基準にすることが大切です。

塗装による再生

さびがまだ表面的な段階であれば、さびを落として下塗り(さび止め)を行い、上塗り塗装で再生するのが基本です。塗装の前には、ボルトキャップの設置漏れや欠けがないかを確認し、傷んでいれば交換します。露出ボルトのまわりは塗り残しやすいため、ていねいな下地処理がもちこたえる年数を左右します。

重度のさび・穴あきにはカバー工法

塗装ではもたない段階――広い範囲でさびが進み、穴が開いているような場合――は、既存の折板屋根の上に新しい金属屋根をかぶせる「カバー工法」が有効です。折板屋根は形状の相性がよく、既存屋根を撤去せずに葺き重ねられるため、廃材が少なく工期も短く済むことが多いのが利点です。重ねるのが難しいほど傷んでいる場合は、葺き替えを検討します。カバー工法と葺き替えの考え方は、当社の「屋根カバー工法」のページでも紹介しています。素材としてはさびに強いガルバリウム鋼板が選ばれることが多く、費用感は「ガルバリウム鋼板屋根リフォーム費用」の記事もあわせてご覧ください。

折板屋根のカバー工法で、既存屋根の上に新しい屋根を重ねる前に下地を設置した様子
写真:既存の折板屋根にカバー工法で新しい屋根を重ねる前の様子。形状の相性がよく、撤去せずに葺き重ねられます。

まとめ

折板屋根は、板を折り曲げた断面の強さで、広い面積を経済的に・丈夫に覆える金属屋根です。野地板がいらず緩い勾配でも葺ける一方、ジョイント方式によって重ね型・はぜ締め型・嵌合型の3タイプに分かれ、防水性やボルトの露出の有無に違いがあります。

弱点はやはり「さび」です。野地板がないため、金属に開いた穴はそのまま雨漏りにつながります。だからこそ、3〜5年ごとの点検と、状態に応じた塗り替えやボルトキャップの手入れが効いてきます。さびが進んで穴あきが出てきたら、カバー工法という選択肢もあります。

私たち「屋根修理の匠ひおき」は、創業70年・親子三代の板金職人として、ガルバリウム鋼板をはじめとする金属屋根を専門に手がけてきました。折板屋根の点検やメンテナンス、カバー工法についてご不明な点があれば、屋根の状態に合わせてわかりやすくご説明します。お住まいの屋根を長持ちさせる一助になれば幸いです。

日置 卓弥

屋根修理の匠ひおきの代表です。哲学で学んだ独特な視点を屋根修理の仕事に活かし、お客様の期待を超えるサービスを実現するために日々努力しています。

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