三重県伊賀市の山あいに建つ、入母屋造りの和風住宅で行った屋根改修工事をご紹介します。
このお住まいの屋根は、下屋のいぶし瓦、母屋上部の波板トタン、頂部の瓦棒屋根という、3種類の屋根材を組み合わせた造りです。今回の工事の中心は、色あせが進んだ母屋の波板トタン屋根(約103㎡)を、SGL鋼板(エスジーエル鋼板)の波板で重ね葺きするカバー工法です。あわせて、瓦棒屋根や板金部分の塗装、軒先下の瓦屋根の葺き替え、谷板金の交換、はなれの屋根修理まで、屋根まわりを約1か月かけてまとめて手入れしました。
古い和風住宅の屋根は、場所ごとに傷み方も、適した直し方も違います。どこを「重ね」、どこを「塗り」、どこを「葺き替えた」のか。その判断の理由と、職人が実際にどんな手順で工事を進めたのかを、工程ごとの写真で詳しく解説します。
工事概要
- 施工エリア:三重県伊賀市
- 建物:木造の和風住宅(入母屋造り)+はなれ
- 工事種別:波板トタン屋根のカバー工法/金属屋根・板金部の塗装/瓦屋根の一部葺き替え/はなれの屋根修理
- 既存屋根:波板トタン屋根(母屋上部)、瓦棒屋根(頂部)、いぶし瓦(下屋・はなれ)
- 使用材料:SGL鋼板 波板(板厚0.35mm)、いぶし和瓦、構造用合板 t12mm、田島ルーフィング ニューライナールーフィング(改質アスファルトルーフィング)、錆止め塗料(ハイポンファインプライマーⅡ)、2液型シリコン塗料、無機系クリヤー
- 施工面積:波板カバー工法 約103㎡/瓦棒屋根塗装 約19㎡/塀トタン塗装 約24㎡/瓦葺き替え 約42㎡
- 主な施工内容:波板トタンへの下地桟取り付け・SGL鋼板波板の重ね張り・棟包み交換(貫板新設)・ケラバと壁際の板金納め/瓦棒屋根・門屋・軒先・破風板金の塗装(洗浄・ケレン・コーキング補修・錆止め・上塗り2回・無機系クリヤー)/妻飾り・懸魚の木部塗装/軒先下の瓦屋根の葺き替え/谷板金交換/母屋の降り棟(くだりむね)積み替え/はなれの隅棟積み替え・割れ瓦の差し替え・苔清掃・漆喰壁補修/ポリカ波板屋根の交換/雨どい交換
- 工期:2026年9月12日〜10月12日(約1か月)
ご相談のきっかけ
「家の屋根をまとめて見てほしい」というご相談から始まりました。お住まいは築年数のたった大きな和風住宅で、屋根の面積も広く、屋根材も3種類が組み合わさっています。
現地調査では、母屋上部の波板トタンと頂部の瓦棒屋根の色あせ、継ぎ目や端部の傷み、金属屋根の軒先下にある瓦屋根のズレや壁際板金の浮き、谷板金の劣化、はなれの屋根の割れ瓦や苔などを確認しました。
ここで考えたのが、屋根全体を同じ方法で直さないことです。いちばん面積が大きい波板トタンは、まだ下地が大きく傷んでいなかったため、撤去せずに上から新しい波板を重ねるカバー工法に。板金がしっかりしている瓦棒屋根は塗装で保護。雨水が集まり、傷みも大きかった軒先下の瓦屋根だけを下地から葺き替える。傷みの程度に合わせて工法を分けることで、必要な所はしっかり直しつつ、費用と工期を抑える計画です。
施工前の状態
金属屋根は塗膜が色あせてサビが出始め、瓦屋根にはズレや割れがありました。



工事の流れ
足場を組んだあと、9月中旬に軒先下の瓦屋根の葺き替えから着手し、10月に入ってから波板トタンのカバー工法、金属部の塗装、はなれの修理を順に進めました。ここでは、工事の中心となった波板トタンのカバー工法から順にご紹介します。
1. 軒先下の瓦屋根の葺き替え




金属屋根の軒先下にある瓦屋根(約42㎡)は、傷みが大きかったため葺き替えました。既存の瓦をめくると、下には瓦を固定するための葺き土が敷かれていました。この葺き土を撤去すると、屋根が軽くなるうえ、下地の状態も確認できます。
下地には厚さ12mmの構造用合板を増し張りし、改質アスファルトルーフィングで防水層をつくってから、瓦桟を打っていぶし和瓦を葺きました。上の金属屋根の軒先下にある壁板金も、あわせて新しく張り替えています。
2. 下地桟(桟木)の取り付け

カバー工法では、まず既存の波板トタンの上に、新しい波板を留めるための桟木を取り付けます。波板はこの桟木にビスで固定するため、桟木の間隔や通りが仕上がりを左右します。
古い屋根と新しい屋根の間には桟木の厚み分のすき間ができます。屋根が二重になるため、雨音や夏場の暑さをやわらげる効果も期待できます。
3. ビスの事前塗装

波板を留めるビスは、取り付ける前に1本ずつ屋根の色に合わせて塗装しておきました。銀色のビスの頭が点々と並ぶと、遠目にも意外と目立つものです。事前に塗っておくことで仕上がりがすっきりし、ビスの頭のサビ対策にもなります。
4. SGL鋼板波板の張り付け

桟木の上に、SGL鋼板の波板を軒先側から重ねながら張っていきます。波板は山の部分をビスで留め、先ほどの桟木にしっかり固定していきます。
既存の波板トタンは撤去しないため、作業中に屋根の中が雨にさらされることがありません。撤去・処分の手間も少なく、大きな屋根面でも短い工期で施工できるのがカバー工法の強みです。
5. ケラバ・妻側・取り合いの板金納め


屋根の端部(ケラバ)や妻側、瓦屋根との取り合いは、雨水が入りやすい場所です。ケラバには下地材を取り付けて板金で包み、波板の切り口が見えないように納めました。隅棟には新しい貫板を入れて棟包みを交換し、瓦屋根との取り合いには水切りを入れて、雨水が下の瓦屋根へスムーズに流れるようにしています。
6. 瓦棒屋根・板金部の塗装
頂部の瓦棒屋根や、門屋・軒先・立ち上がり・破風の板金は、まだ板金自体がしっかりしていたため、塗装で保護しました。塗装は10月5日から10日までの6日間。塗料の性能を十分に引き出すには、塗る前の下地づくりがいちばん大切です。
高圧洗浄とケレン(10月5日)


高圧洗浄で長年の汚れや浮いた古い塗膜を洗い流し、乾燥後にケレン(目荒らし)を行います。表面に細かな傷をつけることで、新しい塗料がしっかり食いつく下地になります。
コーキングの打ち替えと穴あき補修(10月6日)


瓦棒の継ぎ目にある古いコーキングは、劣化したまま上から塗るとすぐに割れてしまいます。いったん撤去して打ち替え、小さな穴があいていた部分はコーキング処理のうえ、上から塗装できるアルミテープで補修しました。
錆止めの下塗り(10月6日)


瓦棒屋根、門屋・軒先・立ち上がりの板金、塀トタンに、錆止め塗料(ハイポンファインプライマーⅡ)を下塗りします。サビの進行を止め、上塗りの密着をよくする、塗装の土台となる工程です。
板金部の上塗り(10月7日)


門屋・立ち上がり・軒先の板金は、瓦屋根の色になじむ落ち着いた茶系で上塗りしました。上塗りは2回重ね、塗膜の厚みをしっかり確保しています。
妻飾り・懸魚の木部塗装と破風の錆止め(10月8日)


入母屋の妻にある格子の妻飾りと懸魚(げぎょ)は、和風住宅の顔ともいえる部分です。ケレンのあと、防虫・防カビ・防腐効果のある木材保護塗料で2回塗りし、木目を生かしながら色を整えました。破風の板金は、継ぎ目のコーキングを処理してから錆止めを下塗りしています。
瓦棒屋根・破風・塀トタンの上塗り(10月9日)


瓦棒屋根は2液型シリコン塗料で2回上塗りし、深い緑系に仕上げました。破風は明るいクリーム系で塗り、入母屋の輪郭がくっきり見えるようにしています。裏手の塀トタン屋根も同じく錆止めのうえ、緑系で2回上塗りしました。
無機系クリヤーで仕上げ(10月10日)

最後に、瓦棒屋根や板金部の上塗りの上から無機系クリヤーを重ねました。透明な塗膜で上塗りを覆い、紫外線や雨による劣化から守る仕上げです。つやも出て、塗りたての美しさが長持ちします。
7. 谷板金の交換

屋根面と屋根面がぶつかる「谷」は、雨水が集中して流れる場所です。谷の両側の瓦を1〜2列めくって仮置きし、既存の谷板金を撤去。下地を清掃して傷んだ部分を補修したうえで、SGL鋼板の新しい谷板金を入れ、瓦を元に戻しました。
8. はなれの屋根修理

はなれの屋根は、葺き替えではなく補修で対応しました。傷んでいた入母屋の隅棟はいったん解体し、古い土を取り除いてから積み直しています。棟は新しい瓦を使い、のし瓦の端を斜めに加工する「そぎのし」仕様で積み直しました。鬼瓦は既存のものを据え直し、棟のラインをまっすぐに整えています。
あわせて、割れた瓦を母屋の瓦の再利用品で差し替え、ズレた瓦を直し、高圧洗浄で苔や汚れを落としました。中2階の漆喰壁のめくれも補修しています。
9. ポリカ波板屋根の交換



裏手のポリカ波板屋根は、波板だけでなく支える柱や桁も傷んでいました。ヒノキ材で柱と桁を入れ替えて骨組みを新しくしてから、ポリカ波板を張り替えています。このほか、雨どいも新しいものに交換しました。
施工後







色あせていた母屋の波板トタン屋根は、SGL鋼板の波板で新しく生まれ変わりました。波板の形はそのままなので、和風住宅の外観の雰囲気は変わりません。頂部の瓦棒屋根や板金部はつやのある塗膜でよみがえり、破風のクリーム系、板金の茶系、屋根の緑系と、色の切り替えもはっきりしました。
はなれの屋根も隅棟の積み直しと瓦の補修で整い、敷地内の屋根を一度の足場でまとめて手入れすることができました。
工法・材料のメリットと注意点
SGL鋼板の波板によるカバー工法
- 撤去・処分が少ない:既存の屋根をはがさないので、廃材が少なく、工期も短く済みます。
- 工事中も雨に強い:古い屋根が残ったまま作業するため、工事中の雨漏りの心配が少なくなります。
- サビに強い:SGL鋼板は、ガルバリウム鋼板のめっきにマグネシウムを加えた鋼板で、サビに強いのが特長です。
- 外観が変わらない:同じ波板の形で仕上げるので、建物の雰囲気をそのまま残せます。
一方で、カバー工法は既存屋根の下地を直接確認・補修できません。下地の腐朽が進んでいる場合や、すでに雨漏りが起きている場合は、葺き替えのほうが安心なこともあります。調査で下地の状態を見極めてから工法を選ぶことが大切です。
金属屋根の塗装
板金に穴やひどいサビがなければ、塗装で十分に屋根を守れます。カバー工法や葺き替えより費用を抑えられるのが利点です。ただし塗装は、時間とともに少しずつ劣化していきます。今回は無機系クリヤーで保護しましたが、色あせやサビが出てきたら早めの塗り替えをおすすめします。
よくあるご質問
Q. 波板トタン屋根は、塗装とカバー工法のどちらがよいですか?
A. 板金がしっかりしていて、サビや傷みが部分的なら塗装で十分なことが多いです。色あせや傷みが屋根全体に広がっている場合や、何度も塗り替えてきた場合は、カバー工法をおすすめします。今回も、波板トタンはカバー工法、瓦棒屋根は塗装と使い分けました。
Q. カバー工法で屋根が重くなりませんか?
A. 波板は軽い金属の屋根材なので、重ねても建物への負担は小さく済みます。重い瓦屋根を金属屋根に替えるのとは逆に、大きな重量増にはなりません。下地の状態は事前の調査で確認します。
Q. 一つの家で、屋根ごとに工法を分けることはできますか?
A. できます。瓦・波板・瓦棒など複数の屋根材が組み合わさったお住まいでは、場所ごとに傷み方が違います。傷みの程度に合わせて葺き替え・カバー工法・塗装・補修を組み合わせることで、費用を抑えながら必要な所はしっかり直せます。
Q. はなれや塀の屋根も一緒に直してもらえますか?
A. はい。足場を組むタイミングに合わせてまとめて工事すると、足場代や工期を抑えられます。母屋だけでなく、はなれ・門屋・塀の屋根なども、現地調査の際にあわせてご相談ください。
三重県伊賀市の屋根修理は「屋根修理の匠ひおき」へ
屋根修理の匠ひおきは、創業72年、親子三代続く板金・屋根工事の専門店です。現場を知る職人が調査・お見積り・施工まで責任を持って行います。
「トタン屋根の色あせが気になる」「塗装とカバー工法のどちらがよいか知りたい」「古い和風住宅の屋根をまとめて見てほしい」など、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。三重県(伊賀市・名張市・津市ほか)をはじめ、奈良・大阪・京都・和歌山・滋賀・兵庫まで対応しております。屋根の無料点検も承っております。


