はじめに
近年、住宅の屋根材としてガルバリウム鋼板などの金属屋根が注目を集めています。その軽量性や耐久性、そしてデザイン性の高さから、多くの方がガルバリウム鋼板屋根を選択しています。
しかし、その一方で「ガルバリウム鋼板屋根を選んで後悔した」という声が一部あるのも事実です。
住宅金融支援機構がR5年度の「フラット35住宅仕様実態調査報告」で発表したように、ガルバリウム鋼板などの金属屋根は、新築やリフォームにおいて50%以上の住宅で採用されています。
【フラット35】住宅仕様実態調査報告(R5年度)で金属屋根の使用率が半数以上!一番人気の理由とは?
これほどにまで普及が進むと、残念ながら比例して知識や技術のない施工業者が増えてしまう状況も生まれてしまっています。その結果、こうした業者に施工を依頼してしまった方々からは「後悔した」という声が増えているのが現状です。
本記事では、ガルバリウム屋根を選んだ後悔の主な理由と、後悔しないために気を付ける点について詳しく解説します。特に、施工不良による雨漏りや不具合について重点的に取り上げ、後悔しないための業者選びのポイントもご紹介します。
ガルバリウム屋根を選んで後悔した主な理由
施工不良による雨漏りや不具合
ガルバリウム屋根は、専門的な施工技術が求められるため、施工不良が発生すると雨漏りやさまざまな不具合の原因となります。特に、屋根の役物(やくもの)と呼ばれる雨水の侵入を防ぐ部材の取り付けが正しく行われていないケースが多く見受けられます。
役物(やくもの)の施工は、屋根と壁の接合部や谷部分、棟部分など、雨水が侵入しやすい箇所に使用される重要な部材です。これらの役物の取り付けは、板金工事の技術を持つ職人でなければ正しく施工できません。金属屋根の特性を理解し、適切な加工・取り付けを行う板金技術が必要とされます。
断熱性の不足による室内環境の悪化
金属屋根は断熱性が低いため、適切な断熱対策が必要ですが、断熱材一体型のガルバリウム鋼板などを選ぶことで断熱性能の問題は回避できます。断熱材が組み込まれた屋根材を使用することで、夏の暑さや冬の寒さを効果的に防ぐことが可能です。
また、断熱シートの提案や適切な断熱材の使用は、施工業者の知識と経験に大きく依存します。これらの対策がなされていなかった場合、業者の知識不足によるところが大きいと言えます。 断熱性の問題を解決するためには、経験と知識、技術のある業者に相談することが非常に重要となります。
雨音・風音などの騒音問題
金属製の屋根は、雨や風の音が直接室内に伝わりやすく、騒音問題が発生することがあります。しかし、この問題も断熱材一体型のガルバリウム鋼板や、遮音性の高い断熱シートを使用することで軽減できます。
騒音対策について適切な提案がなされていなかった場合、これもまた業者の知識不足が原因となります。金属屋根の特性を理解し、騒音対策を含めた施工プランを提案できる業者を選ぶことが重要です。
サビや腐食の発生
金属屋根は傷がつきやすく、その傷からサビが発生しやすいため、施工中に雑な扱いをしたり、できた傷を放置すると、そこからサビが進行してしまいます。もし傷がついてしまった場合でも、適切な処置を施すことでサビの発生を防ぐことができますが、施工時に処置をせずに傷を放置してしまっていた場合、早い段階でサビが発生してしまいます。金属屋根の特性を正しく理解し、丁寧な施工を行わない業者に依頼した結果、このような残念な事態になる例は少なくありません。
業者による施工不良の主な原因
金属屋根に対する専門知識の不足
ガルバリウム鋼板などの金属屋根は、一般的なスレート屋根や瓦屋根とは異なる特性があります。特に役物(やくもの)と呼ばれる金属部分は、屋根と壁の取り合いや谷部分、棟部分など、雨水が侵入しやすい箇所に正しく取り付けることで、屋根全体の防水性能を支えています。熟練した板金職人による手作業での板金加工が必要となる重要な施工となります。
専門的な板金技術を持たない業者は、金属屋根特有の構造を理解しておらず、どういった位置や角度で役物を設置すべきか、どのような加工が必要かを知らないことが多いです。その結果、雨や風の侵入を防ぐ為の板金工事が不十分になり、雨漏りやサビ、腐食などの不具合を引き起こします。
手抜き工事による施工不良
コスト削減や工期短縮を最優先する一部の業者は、必要な工程や部材を省略する手抜き工事を行っている業者がいることも事例としてあります。役物を本来の規定通りに取り付けるには、時間と手間、そして丁寧な加工が不可欠です。
しかし、手抜き工事を行う業者は、役物を省略したり、簡易的な接合で済ませたりすることがあります。このような場合、屋根に隙間や段差が生じ、水が内部に浸透しやすくなり、屋根内部の野地板や断熱材、下地材などがダメージを受け、耐久性が著しく低下します。
メーカー規定の施工マニュアルの無視
ガルバリウム鋼板メーカーは、製品本来の性能を発揮させるために、細かな施工規定や推奨手順を定めています。各メーカーによる製品ごとに、役物の取り付け方法、釘やビスの種類・打ち方、屋根材の重ね代や勾配など、様々な細則が決められています。
しかし、専門知識や経験が不足している業者は、これらの規定を軽視したり、独自の省略的な方法で作業を進めたりします。規定を無視することで、短期的にはコストを抑えたり工期を短縮したりできるかもしれませんが、結果的には屋根の防水性能が不十分になり、雨漏りや素材の劣化を加速させる要因となります。
屋根施工に求められる板金技術
近年は、屋根の隙間やつなぎ目の部分など雨風の侵入を防ぐ役物(やくもの)の部材が、既製品として工場出荷時に完成された状態で流通するようになってきました。昔ほど現場で一から加工する必要が減り、工期短縮やコスト削減ができるようになってきています。
しかし、どれほど既製品が普及したとはいえ、屋根形状や現場条件は一邸一様であり、実際には加工済みの役物をそのまま取り付けられるケースばかりではありません。
例えば、以下のような状況では、最終的に現場での微調整が避けられないことが多く、板金職人による施工が必要となります。これはガルバリウム鋼板屋根に限らず、瓦屋根やスレート屋根など、あらゆる屋根の現場で起こり得ます。
板金職人による施工が必要となるケース
- 複雑な屋根形状
切妻や片流れなどシンプルな形状なら既製品をそのまま使える可能性が高いですが、入隅・出隅が多い寄棟屋根、段違い屋根、屋根に突起物(トップライトや換気口)が多い場合などは、どうしても想定外の角度や勾配が発生します。また、狭小地に建つ住宅や、周囲の建物との位置関係によって微妙な寸法の違いが生じることもあります。 - 現場特有の条件
地域や立地環境によっては、風雨や積雪、塩害などが考慮事項となり、標準的な既製品の寸法・形状だけでは十分な防水性能を確保できないケースがあります。そうした場合、屋根職人は現場で役物を切ったり曲げたりしながら、強風対策のために少し大きめの立ち上がりを作ったり、塩害地域向けに特定の材質を組み合わせたりする工夫が必要になります。 - 微妙な寸法誤差や勾配の違い
設計図面上は寸分違わぬ角度や寸法であっても、実際の施工現場では微妙な誤差が出ることは珍しくありません。わずかな狂いでも、雨水の流れ方や溜まりやすい箇所が変わってしまうため、役物をそのまま取り付けると隙間が生じたり、接合部が不均一になってしまうことがあります。こうした場合、板金職人は現場の実測値に合わせて、役物の端部を微調整したり、最適な勾配を確保するために部分的に切り込みや折り曲げ加工を加えます。
板金加工技術の重要性
こうした現場での微調整が求められる時、鍵となるのが板金加工の技術です。既製品をただ取り付けるだけであれば、基本的な施工手順を踏めば一定の品質が確保できますが、現場対応の加工は、材料の特性や曲げ方・切り方、定尺物から任意寸法への加工ノウハウなど、豊富な経験と技術を求められます。熟練した板金職人による施工が不可欠となります。
ガルバリウム鋼板は加工しやすいとはいえ、強引な曲げや雑な切り込みによって表面処理層を傷めれば、後々サビや腐食の原因となってしまいます。熟練した職人は適切な工具の使い方や曲げ半径、切断方法を熟知しているため、素材を傷めることなく高精度な加工が可能です。
さらに、屋根は雨漏りを防ぐだけでなく、建物全体の外観にも大きな影響を及ぼします。熟練の職人は役物を美しく加工し、つなぎ目を目立たせないよう丁寧に処理することで、既製品を単に取り付けるだけでは難しい美観と性能の両立を実現します。
また、図面には記載されていない微細な干渉や、施工中に突発的に生じる問題に対して、最適な判断を下し、加工や取り付けを臨機応変に対応できるのも経験豊富な職人の強みです。
板金技術に加え、こうした材質への理解、見た目の美しさと性能への配慮、そして現場での判断力が組み合わさることで、初めて質の高い屋根施工が可能となります。
板金技術に加え、こうした材質への理解、見た目の美しさと性能への配慮、そして現場での判断力が組み合わさることで、初めて質の高い屋根施工が可能となります。
後悔しないための業者選びを
専門業者以外に工事を依頼しない
ガルバリウム鋼板は、金属屋根職人の専門工事です。特に、役物の正しい施工や断熱・遮音対策は、専門的な知識と技術が必要です。しかし、金属屋根の構造や施工方法を十分に理解していない業者や、他の屋根材を専門とする業者が多数参入しています。
多くの業者が「屋根専門」「実績多数」と宣伝していますが、実際には金属屋根の専門知識や技術を持たない場合があります。さらに、専門業者であっても手抜き工事を行う業者も存在するため、本当に注意が必要です。
費用の安さで業者を選ばない
費用の安さだけで業者を選ぶことは非常に危険です。専門的な技術を持つ職人による適切な施工には、それ相応の費用がかかります。一部の業者は他社よりも安い価格を提示するために、役物の設置を省略したり、断熱・遮音対策を行わないことでコストを削減しています。 その結果、施工不良による雨漏りや室内環境の悪化、騒音問題などが発生し、後々の修繕費用が高額になるケースが多く報告されています。安価な工事には安いなりの理由があることを理解し、費用だけで業者を選ばないようにしましょう。
また、実際の工事内容の違いを十分に理解しないまま、提示された見積額のみを比較して業者を選んでしまい後悔するケースも多くあります。屋根修理や交換の費用は、単に「安い・高い」で決まるものではなく、具体的な工事内容や手順、使用する材料の質、そして屋根材ごとに異なる正しい施工方法が取り入れられているかどうかによって大きく左右されます。見積金額だけを基準に業者を選ぶと、安易な施工や規定無視によって不具合や雨漏りが繰り返されるなど、結果的に高額な再修理費用や建物内部へのダメージといった残念な結果を招く恐れがあります。
地元工務店やインターネット情報への過信にも注意
長年の付き合いがある地元の工務店や、インターネットで見つけた業者に安易に依頼するのもリスクがあります。特に高齢者の中には、「付き合いが長いから」といった理由で地元工務店に依頼し、適当な工事や過剰な費用請求の被害に遭うケースも見られます。地元工務店であっても、ガルバリウム鋼板屋根の施工知識がない場合もあります。
また、インターネット上で「専門業者」「実績多数」と宣伝していても、実際には技術が伴わない業者が存在します。ガルバリウム鋼板屋根の施工実績や信頼性を慎重に確認することが重要です。
屋根修理業者の選び方に関してはこちらのコラム記事も参考にしてみてください。
まとめ
ガルバリウム屋根を選んで後悔しないためには、施工不良による雨漏りや不具合を防ぐこと、そして断熱・遮音対策を適切に行うことが最も重要です。そのためには、役物の正しい施工や断熱材一体型の屋根材の提案など、専門的な知識と技術を持つ信頼できる専門業者に依頼することが不可欠です。
ガルバリウム鋼板屋根で後悔しないためにも、以下のポイントに気を付けて工事を検討するようにしてください。
- 専門業者に依頼する:金属屋根の専門知識と技術を持ち、役物の正しい施工や断熱・遮音対策ができる業者を選びましょう。
- 費用だけで選ばない:安さの裏にはリスクが潜んでいます。適正な価格で高品質な工事を提供する業者を選びましょう。
- 複数の業者を比較検討する:見積もりや工事内容を比較し、信頼できる業者を選びましょう。
当社は金属屋根専門の板金職人であるがゆえに、ガルバリウム鋼板などの金属屋根で失敗や後悔をしてほしくありません。技術や知識のない業者に施工を依頼した結果、金属屋根に対する評価が下がってしまうことは非常に残念です。
特に、断熱・遮音対策や役物の施工不良によるトラブルは、本来のガルバリウム屋根の良さを損ないます。そうした残念な結果を避けるためにも、本物の職人が施工するガルバリウム鋼板などの金属屋根の良さを、ぜひ皆さんに知っていただきたいと思います。
ガルバリウム鋼板屋根を検討されている方は、ぜひ「屋根修理の匠ひおき」までご相談ください。
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